13.スキルが判明しましたわ
巨大タコによって、どうやらエビ穴からは完全に追い払われてしまった。
美味しそうではあったけど、もちろんあんな化け物とは戦っていられない。おとなしく引き下がるのが吉だ。
「仕方ありませんわ。擬態しながら進みましょう」
擬態は岩などに化けることができるスキルだ。それ以外のスキルとして、発光というスキルがあるのが分かっている。どちらも便利で強力なスキルだけれど、必殺技とは言い切れない。
他に何か、強いスキルは無いんだろうか? それこそ巨大タコとでも戦えるぐらいの。こっちはイカ初心者なのだから、もう少し優しく教えて欲しいと思う。
「せめて持っているスキルの一覧みたいなものがあれば嬉しいのですけれど……」
そんなことを考えていたら、心の奥から声が聞こえてきた。
――名前:マジョリーカ
種族:ダイマオウイカ
レベル:8
スキル:擬態、発光、煙幕、ジェット移動、自動戦闘、会話
能力:追加攻撃力(弱)、精神攻撃耐性(弱)、毒耐性(微)
称号:共食い王、大物食い
残りスキルポイント: 80
「な、な、な、なんですの? 今のはっ!」
驚きのあまり、擬態が解けてしまった。もう一度ちゃんと擬態しなおす。
今更、声が聞こえたぐらいでは驚いたりしない。今までだって戦いが終わった後で、レベルが上がったとか、スキルがどうとか、色々と声は聞こえていたのだ。
問題は声が聞こえた事じゃなくて、その内容の方だ。
「種族が『ダイマオウイカ』ですって? 冗談じゃありませんわ!」
女の子なのだから女の子らしく、大魔王じゃなくて大魔女王とか、大魔王妃とか、そういう種族名にして欲しかった。
さて、それはさておき、擬態と発光以外にも、ちゃんとスキルがあったようだ。
ただ、新しいスキルと言われるとちょっと微妙な気がする。スキルだとは知らなかったけれど、自動戦闘はすでに使いまくっているし、ジェット移動って水を吸ってビュって噴き出して進むやつ?
まだ使ったことがないのは煙幕ぐらい。これって多分だけどイカ墨の事だと思う。
あとは毒耐性(微)。微妙の『微』。これはもう放置でいいですわね。
それに会話も。それぐらいは当たり前……あれ? 当たり前、ですの?
会話するには声が出ないとダメ。そして今は水の中。
「声なんて出せないと思うのですけれど……」
思わず独り言が漏れた。そしてそれは、声としてマジョリーカにもちゃんと聞こえていた。
「私、喋れましたのぉ~~~っ?」
どこから声が出てるのか、と思ったら、体がプルプル震えて音になっていた。
「さすが軟体動物ですわね、どこからでも声が出せますわ」
せっかく会話能力があっても、海の底には話し相手がいなかった。というか、イカに生まれ変わってからずっと独り言をつぶやいていたっぽい。ただの危ない奴だ。
「でも、そんなこと気にしませんわ!」
どうせ誰も聞いてない。
そんなことよりも分からないのはこれ。残りスキルポイント八十。
この数字はなんだろう? なんだかとっても大切な意味がある気がするのだけれど。
スキルポイントっていうぐらいだから、スキルを使う時に必要なポイントじゃなかろうか。もしかして、スキルを使ったら減るとか?
周囲に何もいないことを確認してから擬態を解いて、すぐにもう一度、擬態を使ってみる。
これでスキルポイントは減ったかしら?
もう一度スキル一覧を教えてもらえるように、心の声にお願いしてみる。
――名前:マジョリーカ
種族:ダイマジョイカ
レベル:8
スキル:擬態、発光、煙幕、ジェット移動、自動戦闘、会話
能力:追加攻撃力(弱)、精神攻撃耐性(弱)、毒耐性(微)
称号:共食い王、大物食い
残りスキルポイント: 80
うん、スキルポイントは変わってない。スキルを使っても減ることはないみたい。
それはいいけど、なんで種族が変わってますの!
新しい種族名は大魔王じゃなくて大魔女。もしかしたら魔法が使えるようになるのかしら? それはないわね。
~~~~~
ここは異界、神々の世界へとつながる場所。
そこにいるのは異界の神、イカ神。彼女はやきもきさせられながら、自分が転生させたマジョリーカを見守っていた。
「スキルをちょこちょこ教える作戦、上手くいったダワ。でもまさか種族に文句言われるとは思わなかったダワ。困った娘ダワ。速攻書き換えたけど、周りにバレたら危ないダワ、知らないふりするダワ、胃が痛いダワ。それにスキルポイントの使い方……そうじゃないダワ~っ!」
神々のルールで、下界に直接助言することはできないのだ。メッセージを工夫して、なんとか本人に気づいてもらうしかない。
人知を超えた存在、イカ神は今、まじめに胃薬を探し始めた。




