11.決着ですわ
巨大エビは焦りを感じていた。
穴に隠れて獲物を待っていたところ、すぐ目の前にやって来た小さなカニのような生き物。ハサミを伸ばして捕まえてみたら、それはカニではなく、イカが擬態した姿だった。
まあ、カニでもイカでも、どちらでも構わない。どうせこんな小さな生き物だ。ペロッと食べてしまえばそれで終わり。
そう思っていたのだけれど、現実は違っていた。
まさか反撃してくるとは。
そして気づいてしまった。この小さな生き物がその内側に秘めている悪魔のような凶悪さに。あまりの恐怖に魂が凍り付きそうになるのを必死で我慢する。
自分はとんでもない相手に手を出してしまったんじゃないだろうか?
巨大エビの焦りは、さらに大きく、そして深くなっていく。
もしも転がり回ることができれば、背中に乗った異物を振り落とすことができただろう。しかし巨大エビにはそんなことはできない。
前からくる敵相手ならば、その強いハサミで戦えるけれど、後ろに回られたらもうなすすべがなにもないのだ。
出来ることはと言えば、暴れ回る事だけ。
暴れ回って振り落とす。巨大エビはその可能性にかけるしかない。
「どうやら私の勝ちですわね!」
ガリガリ齧りつづけていた背中の甲羅に、ついに大穴が開いたのだ。こうなったらもう、巨大エビにはどうすることもできない。
暴れても暴れても振り落とすことができなかった。その時点でもう勝負はついていたと言ってもいい。
強烈な痛みでさらにひどく暴れ回ったけれど、そのぐらいで振り落とせるぐらいなら、もうとうの昔に振り落とせていただろう。
マジョリーカの手足の吸盤には、実は硬く鋭い爪が大量に生えているのだ。それは一度食い込むと、そう簡単には外れない。
しかもマジョリーカには自動戦闘モードまである。長期戦になったからと言って気を抜くようなことはないし、本人が眠っていても勝手に自動的に戦い続けてくれる。
つまり一度ハマれば絶対に逃げ切れない、必殺の攻撃だったということだ。
「お、美味しいですわ~!」
ついに殻の中身に口が届いた。超高級イセエビをはるかに超える美味しさ! あり得ないほどジューシーで、ぷりっぷり。強い甘みが頭の中を駆け巡る。まるで旨味とコクのかたまり、それなのにまったくしつこさもなければ臭みもない。
マジョリーカは胴体の背中側からどんどん巨大エビを食べていく。巨大エビも頑張ったけれど、食べられてしまっては生き残ることはできない。
――レベルが5に上がったダワ。
――レベルが6に上がったダワ。
――レベルが7に上がったダワ。
――レベルが8に上がったダワ。称号『大物食い』を手に入れたモンデ、追加攻撃力が向上したダワ。
どうやら、どこか急所を食い破ったみたい。巨大エビの体から一気に力が抜けておとなしくなった。それと同時にレベルが四つも上がり、レベル八まで成長した。その上、『大物食い』なんて称号も増えた模様。
巨大エビに食べられて無くなってしまった腕も、レベルが上がったことで問題なく生えてきている。暴れた時にそこら中でこすられてボロボロになっていた体も完全に元通りだ。
あとはこの巨大エビを美味しくいただくだけですわね!




