10.奇襲は基本ですわ
やられた!
完全にやられたっ!
マジョリーカは突然何者かに捕まり、真っ暗な穴の中にいきなり引きずり込まれていた。
あまりに突然のことで、上も下も、右も左も、何も分からない。真っ暗すぎて敵の姿も見えやしない。
混乱する中で、口に近づいてきたもの全部に噛みつき攻撃をお見舞いする。この鋭いクチバシと鋭い爪、それがイカにとっては最大の武器なのだ。
噛みついた感じからすると、敵はかなり硬い。
もしかしたら貝? いや、そこまで硬くはないわね。
ガリッ!
相手の体の一部を齧り取った。もぐもぐ……この味は! カニかエビに違いない!
相手はこちらの腕をがっちり握って放そうとしない。
「痛いっ!」
しかも、どうやらそのままマジョリーカの腕を食べ始めた模様。
ええい、もう! 食べられてる場合じゃありませんわよ! 噛まれる前に噛め、食べられる前に食べろ、ですわ!
せめて相手の姿が見えれば、上手く相手の弱点を突いて有利に戦える可能性はある。
でも今は真っ暗な穴倉の中。全く相手の姿が見えないのだ。感覚としては、マジョリーカよりもかなり大きな敵なのがかろうじて分かる程度。どう考えても不利。
ああ、せめて明かりがあれば、相手の姿が見えれば……。
両眼に思いっきり気合を入れて目を凝らしてみる。すると、ぼんやりながら相手の姿が見えてきた。
――スキル『発光』を発動したダワ。
おお、どうやらイカの体が光っているっぽい! 発動ってことは、擬態スキルと同じように、最初っから持ってたってことですわね。
「さすがイカ。美味しいだけじゃないですわ」
姿が見えるようになったことで、相手の正体がはっきりした。
エビだ。それもマジョリーカの五倍から十倍くらいの長さがある。どう見ても巨大エビだ。
「エビなら! いくら巨大でも戦いようはありますわ!」
そう、エビはどうやっても自分の背中を攻撃できない。いくら背中がメチャクチャ痒くても、自分では自分の背中を掻けないのだ。
ならば話は簡単。マジョリーカはしっかり掴まれて食べられている腕は諦めて、八本の足で巨大エビの背中に思いっきりしがみつく。
ガリッ! ガリガリッ!
そしてその硬い背中の甲羅に思いっきり齧りついた。
背中はエビにとっては最も大切な場所であり、それを守る甲羅はエビのなかで一番硬い部分だ。そんな場所に穴をあけることが本当にできるのだろうか?
とてつもない力で暴れ回る巨大エビ。それに振り落とされることなく、必死でしがみつくマジョリーカ。
もしも振り落とされたら命はない。捕まったのが腕だったから助かっているけれど、もしも本体をそのハサミで掴まれたらもう終わりだ。逃げることも出来なくなるし、戦うことも出来なくなる。
どちらが先に力尽きるか。
それは最後まで分からない。




