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『太陽が消えるので地球ごと引っ越したら、銀河の惑星戦争に巻き込まれました』  作者:


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エピローグ 新しい故郷

 セカンドサン歴五十二年。


 かつて人類を乗せて銀河を旅した宇宙船地球号は、今も変わらず第二の太陽の周りを回り続けている。


 空は青かった。


 太陽が変わっても、空の青さは変わらない。


 それが少しだけ不思議で、少しだけ嬉しい。


「おじいちゃん!」


 遠くから元気な声が聞こえた。


 モリト・アークはベンチに座ったまま顔を上げる。


 草原を駆けてくるのは二人の孫だった。


 一人は地球生まれ。


 一人は火星生まれ。


 今の時代では、それは特別なことではない。


 学校も同じ。


 言葉も同じ。


 友達も同じ。


 彼らにとって、地球人と火星人の違いは昔話の中にしか存在しない。


「おじいちゃん、本当に地球って宇宙を飛んだの?」


 少年が目を輝かせながら聞いた。


「またその話か」


 モリトは苦笑した。


「だって先生が言ってたよ! 昔、人類は星ごと引っ越したんだって!」


「信じられないよね!」


 少女も頷く。


 モリトは空を見上げた。


 青い空の向こう。


 見えないはずの宇宙の彼方を。


「飛んだとも」


 静かに言う。


「それはもう、大変だったぞ」


「火星と戦ったの?」


「戦った」


「怖かった?」


 その質問に、モリトは少しだけ考えた。


 巨大な重力波。


 崩れそうになる軌道。


 迫り来る火星。


 そして最後の決断。


 数え切れない記憶が頭をよぎる。


「怖かったな」


 モリトは素直に答えた。


「でも、それ以上に」


 笑う。


「みんな生きてほしかった」


 二人の孫はよく分からないという顔をした。


 それでいい。


 戦争を知らなくていい。


 滅亡の恐怖を知らなくていい。


 それこそが、自分たちが命懸けで守った未来なのだから。


 その時だった。


 遠くの空に赤い光が見えた。


 火星だ。


 現在の火星はセカンドサン第二軌道に安定し、多くの人々が暮らしている。


 地球と火星を結ぶ定期航路も今では当たり前になった。


 昔のように憎み合う者は、もうほとんどいない。


「綺麗だね」


 少女が言った。


「ああ」


 モリトは頷いた。


 本当に綺麗だった。


 赤い火星。


 青い地球。


 黄金色のセカンドサン。


 どれも人類の故郷だった。


「おじいちゃん?」


「なんだ?」


「頑張ってくれてありがとう!」


 突然の言葉に、モリトは目を丸くした。


 そして、ゆっくりと笑った。


「どういたしまして」


 風が吹いた。


 草原が揺れる。


 第二の太陽の光が大地を照らしている。


 その光景を眺めながら、モリトは静かに目を閉じた。


 人類は故郷を失った。


 太陽を失った。


 争いもあった。


 別れもあった。


 それでも――。


 人類は滅びなかった。


 人類は分裂した。


 そして再び、一つになった。


 宇宙船地球号の旅は終わった。


 だが、人類の旅は続いていく。


 第二の太陽の下で。


 新しい故郷と共に。


                      ― 完 ―

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