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芽花の眼  作者: 彩︎華じゅん


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3/12

第3話

 数日後。包装したブロッコリーを職場の産直『ほのぼの亭』に納品したハナエは、パート仲間の田村との雑談に花を咲かせていた。

「昨日のあまちゃん、懐かしくて良かったわぁ。昔のベストテンみたいなテレビやってたじゃない。清水ミチコがまた司会役にハマっててね〜」

 揃いの濃い緑色のエプロンを付けた田村は、商品棚の飲料の補充をしながら話を聞いている。

「そうなの? 昨日は寝坊しちゃって見れなかったのよね」

 紙パックの牛乳や野菜ジュースが手際よく次々陳列されていく様は、いつ見ても気持ちがいい。

「録画してあるから、仕事終わったら見に来る?」

 クリップボードの書類に商品数を記録した田村は、驚いたように顔を上げた。

「いいわよ〜! お嫁さんに申し訳ないし。再放送やるだろうからそれまで待つわ」

 大げさに両手を振る田村。

 彼女のこういう慎ましさがハナエには好ましかった。

「大丈夫よ梓ちゃんはそういうの気にしない人だし。ゆっくりお茶でもしながらさ。美味しいお菓子もあるし」

「何の話?」

 話に入ってきた他のパート仲間にも、声をかける。

「あまちゃんの録画見にうちに来ないかって。森本さんもどう? あ、河合さんも誘おうかしら! 藤澤さんも! みんなで鑑賞会しましょ!」

「え……ちょっと大丈夫なの……」

 戸惑ったような田村に、にっこりと微笑み返す。

 全く、家主がいいと言っているのに。本当にこの人は水臭い。

「ちょっとちょっと! おしゃべりもいいけど、ちゃんと仕事してね!」

 店長が水を差してきて、集まっていた面々は持ち場へ戻った。

 もう少し話していたかったが、仕方ない。

 途中にしていた掃除に取り掛かったハナエの首筋に――。

「店長、うるさくてやんなっちゃうわね」

 田村だと思った。しかし、振り向いた先には誰もいない。

 売り場に陳列した、ビニールに包まれた自家製ブロッコリーがただあるだけだ。

 ごつごつとした濃い緑色に、滑らかな黄緑色。

 肥料や土づくりにこだわり、夫と協力して作り上げてきた畑で育ったブロッコリーは、とても美味しいと評判だ。

 野菜嫌いの孫娘ですら、もりもりと食べてくれるほどに。

 これはずっと農業と主婦業ばかりやってきたハナエにとって、唯一の自慢ともいえるものだった。

 もっとも、ハナエ自身はこのブロッコリーたちの味を知らないのだが――

「やだ。一人で喋って。恥ずかしい」

 首をかきながら、ひとりごちる。

 そんなことはどうでもいい。

 仕事の後の楽しみを、ハナエは密かに噛み締めていた。


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