第一話 泣きながら筋トレをする悲しき怪物のオネェ様
「ん゙ん゙、落ち着きましょう。アタシは、龍ヶ崎。あの龍ヶ崎 紅よ。
仕込み番傘一本担いでたった一晩で敵組織を壊滅させたオネェ…」
じっと鏡を見る。
なよなよしている。こんなのでは家族を守れないではないか。
腕立て伏せをする。反射的にである。なよなよ体が許せなかった。
「ふんっ…ふんっ…!」
結構クルわね。
そーゆーときは、気持ちが大事である。
(神のあんぽんたん!!生き返らせろこの野郎!!!あんなにあっさり死ぬなんてボスに顔向けできないわ!!!!)
「うっ…」
なにこれ、ボスを思い浮かべただけで泣きそうなんだけど、この体どうなってるの???
「うわぁぁぁん!!」
腕立て伏せは続行。
泣きながら腕立て伏せをする悲しき怪物の爆誕である。
「うわぁぁぁん…!!ヒック、けっこう、ヒック、できるわね、この体…!みためにはんして、ヒック、筋肉はあるじゃないの…!」
しゃくりあげるのが止まらない。
涙も止まらない。
なにこれ???
「リーン様!?どうしたんですか!?みっともないのでカーペットの上での奇行もおやめください!!」
ボブの茶髪に茶色の瞳の漫画などで出てくるメイド服を着た侍女が入ってきた。
_入るのが遅くなった理由については、第二話で説明しよう。
(リーン様…?今、リーン様と言った!!?)
だが、龍ヶ崎は聞いちゃいない。
リーンという言葉だけは拾ったが。
「待ちなさい!リーンって、リーン・アスペラスのこと!?アタシ、リーン・アスペラスに転生したの!?どーゆーことよ!説明なさい!!」
しゃくりあげるのも涙も止まるほどの衝撃だった。
_リーン・アスペラス。
これは前世でプレイした、あの乙女ゲーム。
「愛を貴方に〜4人の王子と異世界結婚〜」
の、攻略対象、主人公よりなよなよしていて守ってあげたくなる。一部のニッチなファンからは天使と呼ばれていたあの男では?
ちなみに、超絶いらない情報だが、龍ヶ崎はボスが呆れるほど彼のグッズを買っていた。
「神様!どーゆーことよ!説明なさい!しなければ、仕込み番傘で一刀両断よぉ〜!!!」
だんだんと足を踏み鳴らしながら手元にない番傘を構えるフリをする。
「り、リーン様が…、て、天使様が狂われてしまった!?だ、旦那様ー!!!!!」
走り出そうとする侍女を捕まえる。
ふしゅーという擬音が聞こえるのは気のせい、ということにしたい。
「…待ちなさぁい」
重低音と言っても、子供のだからそんなに低くはないが。
「ひぃ…!!」
それでも侍女はさっと顔を青くした。あのリーンがこんな声を出すのは初めてである。
まるで、鬼に捕まった哀れな生贄である。
「どーゆーことよ…説明なさい。全てよ、す、べ、て」
般若のような顔とはこのことだろう。
「ひゃ、ひゃい…」




