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とりあえずの繋がりは魔法だけ

いやはや、返事を頂けるなんて思いもしなかった!


勝手に筆記用具を使って申し訳なかったね。

謝罪をしたい。


しかし、そうか。

僕らの魔法は繋がっている様です、か。


確かにその通りだろう。

君も察しているだろうが、私も君の魔法が使えるようになったんだよ。


だから水魔法を行使できる。


そうだとしたら、2人の魔力自体が共有されている可能性を考えるのが当然か。


不思議なものだね。

こんなこと、どうやったら起こり得るものか。


恐らく、まず間違いなく、私は君と思われる少年とは出会っていない。

なのにも関わらず、何故か2人が繋がってしまった。


どうしてだろうか。

何か、思い当たる節はあるだろうか。


また返事をくれると嬉しいよ。


もちろん、魔法に関する話し合いも大好きだが、折角だ。

他愛のない話でも良いさ。

仲良くしようじゃないか。

私は退屈な生活をしているからね、気軽に返事をくれたまえ。


あぁ、そうそう、他属性が扱える様になった事、人に言わないのをおすすめするよ。

例のない事だし珍しい属性だから、危険が伴う可能性がある。


物を取り出す時は独りの時にしたまえ。


P.S.

好奇心のお礼に、お菓子をあげよう。

ドーナツだよ。

かなり昔に入れたものだが、この中は腐食せず劣化もしないから、美味しく食べられるはずさ。


ドーナツを思い浮かべながら魔法を使えばそちらへ届くはずだ。


是非ご賞味あれ。



「……ドーナツ。」


そう呟くと、目の前にドーナツが現れた。

少し硬めに揚げられ、チョコでコーティングされたもの。

手に取りクルクルと見ても、なんの違和感もない、普通のドーナツ。


折角か。

うん、折角だね。


シロもそう思った。


一口ドーナツを齧ると、豊かでビター目なチョコの香りと、油、砂糖、小麦の香りが口に広がる。


ご賞味、なんて仰々しく言うだけのことはある。


「多分お高いやつだ、これ。」


父が酔って、大量に買ってきた思い出もあるドーナツ。

だけど、そこのドーナツとは比較にならないほど豊かな味がする、気がする。


「美味しい。」


ドーナツを食べながら、また取り出したポーチの中のノートを読む。

昨日は急な発見に焦って、途中で辞めてしまったノートを読み返すと、無視できない文言がいくつか書かれているのに気がついた。


「…足、しまっちゃってたんだ。」


あの日、足につまずいた夜。

確かに手で落ちている足を触った。


その時だろうか。

多分そうだ。


足かもしれないと認識して、それが本物かどうか触った記憶がある。

そして手の感触から、本物かもしれないと思い、恐怖で駆け出したんだ。


だから、その後の足の行方は分からない。


だけど、お父さんと駐在さんが現場へたどり着いた時、血はあっても足は無かったとか。

ならば自分がしまい込んだと考えるのが正しいと考えた。


「それにしては大業で奇妙じゃあないか、足なんて。

しかも、靴のメーカーは丈夫が売りのSAS。

あんまりそこらじゃあ、売っていないものなんだよ。

だけれど、一部の人達はみんなこの靴を履くんだ。

知っていたかな?」


知る由もないが、足だけでもその持ち主の手掛かりが存在するらしい。

そして、自分の文章から年齢も引き出している。

この手紙の相手は、そういう事情にも詳しく、そこから相手を想像する事に長けている人物。


「パールトンみたいだ。」


パールトン。

少年向け伝記小説で有名な、探偵パールトン。

女と子供に弱いが、頭が切れて腕も立つ。

その中にこんなエピソードがある。

パールトンをまだ認めていない刑事との食事時、彼はウェイターを一目見ると、そのウェイターの経歴をつらつらと語り始めた。


曰く、そのウェイターは、軍歴があり、生まれは下流階級。

妻はいない、と。


何故そう思うのか、と刑事が聞くと、パールトンはこう答えた。


ネクタイの結び方の基本が出来てなく、適当。

よって生まれが悪く、妻の指摘もない。

それにシャツの袖も清潔じゃなく、シワもよってる。

アイロンなんてかけていないんだろうね。


軍歴は、ピカピカの靴が物語っているよ。

ネクタイの結び方も知らないのに、靴だけ異様に手入れされているから、習慣になっているのだろうね。


軍人はネクタイをつけないが、革靴は履くからね。

それに。


言い淀むパールトンに刑事が問いかける。


それに、なんだ?


それにパールトンはこう答えるのだ。


「なんか、強そうじゃないか。」


シロはそのパールトンシリーズが好きで、よく読んでいた。

聡明で、どこか適当なパールトンの人柄が好きだったし、学校での推薦図書に入っていたので安く手に入る機会がいくらでもあった。


その雰囲気を手紙の主にも感じたのだ。


折角他愛のない話をしようと言ってくれているのだから、聞いてみたい。

足の持ち主はどういう人で、何故あそこに落ちていたのかが分かるのならば、聞いてみたい。


ペンを取り出し、ノートへ書き始める。


まずはドーナツのお礼。


それと、ポーチが何故入っているのが分かったのか。


これは使い方も分からない、使える事も理解していないままに魔法でしまったもの。

それでもこの人はそれを理解して取り出している。


なので、中に何が入っているか知る術があるのだろうと思ったからだ。


そして、足の持ち主はどんな人だったのか。


最後に、何故、魔法が繋がったのかをシロは自分なりに考えて書いてみようと思った。

これという心当たりはないけれど、問われたなら返す必要があると思うのだ。


こっちだけ質問するのは失礼じゃないか。


しかし何も浮かばない。

浮かばないなら、一緒に考えてみたらいい。


この名探偵パールトンの様な人と。


「生まれつき、魔法の波長が近いだとか、そういう事例はありますか?」


今、唯一浮かんだ可能性を記し、シロはノートをしまい込んだ。


そしてもう一つ。


「靴から足の持ち主が分かれば、父を見つけられるでしょうか。」

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