第十二話 お礼参り
蜂、栗、臼を連れ、浦島は猿組事務所に向かっていた。狙う相手は、亡き組長の仇。出所後三日目でここに来た。やがて事務所の前に立ち、咥え煙草で呟いた。
「親父、ケジメつけるぜ」
◇
狸が襲撃を知ったのは、事務所内の寝室だった。大きな衝撃音が鳴り響いたからだ。
強引な勢力拡大を続けていた猿組の事務所は、報復を想定して堅固な設計で建築されている。襲撃に対し即応する部屋住みの組員も多数常駐し、狸組長も自宅を離れここで寝泊まりしていた。だがそんな組事務所を、真っ向から攻めるバカが来た。
とはいえ正面入り口は、特注の鉄筋コンクリートと防弾仕様の鉄板扉。トラックやショベルカーが突入したところでビクともしない。
それが今、米軍仕様の4連装携行式ロケットランチャー M202 から放たれた成形炸薬弾の一撃で粉砕された。その威力は700mmの鋼鉄を余裕で貫通し、コンクリートや鉄板の防壁など意味を成さない。続けて発射した焼夷ロケット弾で火の海と化した正面入り口を、まずは栗が突入する。
続いて、短機関銃 American-180 を手にした蜂が突入、内部にいた猿組組員を射殺しながら前進。けたたましい射撃音は「Swarm of angry bees」(怒る蜂の群れ)と呼ばれるにふさわしいものであり、過剰とも言える弾丸が撒き散らされていく。
立ち込める粉塵と、炎と火薬と、血の煙。
圧倒的な火力。それを前にして正義も悪もない。無慈悲な死と、絶望だけが真実だ。ここに物語があるからこそ、復讐劇であり、悲劇であり、喜劇なのだ。そうでなければ、単なる災害だ。
狸組長は、寝室から繋がる隠し通路で逃げようとした。しかし、襲撃の侵攻が早すぎて間に合わない。別動として屋上から突入した臼に取り押さえられ、その顔は浦島の靴底で踏みにじられている。
「……ねんねん、ころりよ、おころりよ」
浦島は鼻歌を歌いながら、銃のスライドを引く。コルト・ガバメント、古くありきたりな自動拳銃だ。カシュ、ヂャキ。小気味よい音がしたから初弾装填。足元の狸は早口で弁明し、懇願する。
「まって、やめて、殺さないで、何でもするから、しますから」
命乞いを聞くほどヒマじゃない。悲鳴を聞くのも趣味じゃない。とっとと終わらせよう、コイツと、俺と、有象無象の悪党どもの、社会にとって価値なき『にんきょう昔ばなし』を。
「……坊やは良い子だ、ねんねしな」
バン。




