第十三話 煙草
瓦礫と化した猿組事務所の現場検証から戻った桃太郎は、警察本部庁舎の裏庭で煙草を咥えた。敷地内は禁煙だが周囲には誰もいない、そう思っていた。後頭部に銃口を突きつけられるまでは。
「……探しましたよ刑事さん、組対のフロアに居なくて困りました」
「誰だお前」
「……いけない刑事さんですね、公共機関は全面禁煙じゃなかったですか?」
「誰だと聞いている」
「……せっかくですから火をお点けしますよ、俺のライターでね」
「あいにくだが間に合っている」
「……そうそう、刑事さんにお土産があるんですよ」
バシャ。
ゴロン……
レジ袋に入った人体の頭部が、桃太郎の前に投げ捨てられた。
錆びたような血の臭いが鼻を突く。
「……まずは白狗、極左組織潜入のエス (捜査協力者、事実上のスパイ) 、つまり刑事さんの手駒だったんですね」
ドシャ。
さらに首が投げられる。
「……猿の組長です。狸ですけどね。コイツの弁明で、刑事さんの筋書きに気付きました」
ボロン。
グルグルグル……
最後に投げ入れられた首は、少し転がり袋から出た。
額に銃創、恨めしそうな表情でこっちを向いている。
「……新聞記者の情報屋までお仲間でしたか。キジ(記事)は『ケーン』と鳴くんですね、知りませんでした。まあ鳴かずとも撃ちますが」
「殺すのか、俺を」
「……もちろん。刑事さんを通じコイツらに、黍団子を流していた本部の連中もね。それでは、火をお点けします」
バン。




