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あけましておめでとうございます。
冬眠中でしたが、なんとか続き書けましたのであげます。
大変お待たせしました。すみません。m(_ _)m
聞きたいことを全て聞いて。俺は走った。
これで、これで彼女を忌々しい運命から助けることができる。
"もしも"のことも教わったから大丈夫だ。絶対に守ってみせる。
他人が起こしたことの責任を取るために、なんて。悲しい道は歩ませない。
でも。耳を、良心をあの深く沈んだ声が犯す。俺に与えられた使命は待つことと、守ること。彼女に与えられた使命は…黙れッ!
終わらない悲劇など、悪夢など、俺がここで断ち切ってやる!そんなの、そんなの続いてたまるもんか!
例え、俺が代わりに想像もできないようなことになったって構わない。
守る方の使命なら、はたしてみせる。紅葉が幸せでいられるなら。俺の生命などいくらでも差し出そう。
そして兄上と幸せに暮らせばいい…。兄上なら、兄上なら絶対に紅葉を幸せにしてくれる。
…そう…だよな…。
途端に胸のあたりがきゅうと締め付けられる感覚に襲われる。
一度で良いからこっちを向いて欲しかった、なんて贅沢だろうか。いや、過ぎた欲だ。
あんなにもそばで笑ってくれてただけ、それを独り占めできただけ、良いだろう?何が不満なんだ。ぶんぶんと首を振って邪念を追い払う。
今はとにかく、急いで伝えないと。
―邪魔な蜘蛛の巣を手で突き破った。
***
「お父さん…お母さん…いや…イヤダッ⁉︎………はっ!」
整然と並ぶ木目。
…ああそうか。夢、だったんだね。
お母さん、お父さん…。
ごめんなさい。
すっすっという衣擦れの音。
ぱたぱたと複数の足音。
誰か訪ねてきたのだろうか。
少し幼いような気もするけれど。
まあ、私にはきっと関係のないことだ。
緩く髪を結ぶ。
普段着に袖を通す。
「紅葉、開けて…」
「お姉ちゃん!」
…なんで…?
バタンッと乱雑に障子が開け放たれた。
そこにいた、2人の小さな姿を見、思考はぐるぐると軌道を逆方向に回る。
なんで、なんで?
「お姉ちゃん⁈お姉ちゃんだぁっーーー!」
飛び込んできた2人はすりすりと頬を滑らせる。
「会いたい、と昨日泣いておったから…。」
ぷくぅっと2人とも頬を膨らませた。
「「泣いてません!領主様、言っちゃダメですよ!」」
「はは。すまぬ。」
嗚呼。私は人々の幸せを守るために生まれてきたんだ。私の使命はみんなを幸せにするための…
「お姉ちゃんが無事で良かったぁー」
「悪いことされてないかなぁ〜って心配してたよ。僕はそーでもないけど、梅雨黄がさぁ〜泣いて泣いて面倒なことったら」
「違わい!樫の方が『お姉ちゃん〜お姉ちゃん〜』って寝ながら喋ってて不気味だった!」
「まあまあ。」
「ふふ。紅葉とその2人は仲が良いのだな。羨ましい限りだ。」
「領主様のお兄様は?稽古一緒になさってたって噂を拝聴いたしておりましたが」
「こらっ!樫、敬語がなってない。」
「別に構わんぞ。まあ、家来の前では控えて欲しいが…。堅苦しいのはあまり好きではない。こういう時くらい、身分の差など気にせず接してくれるとありがたい。」
「領主様!有難き御言葉!されど僕、領主様みたいに剣術の達人になりたいと思っております所以、何卒…いだっ!」
「だから!無理に敬語にするから文章がおかしくなってるんだって!」
「見ていて飽きないな。」
3人の楽しげな笑い声が部屋に満ちていく。
そうだ。私はこの人たちを守らなくちゃいけない。心配させちゃいけない。虚勢を張ってでも。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ。」
私もまた、この子たちを残して逝くのだから。でも、きっと、この子たちの未来は明るくなるはず。
だから。
私は運命に逆らわずに生きていこう。
そして正しく
…散るんだ。
春先までお待ちください。いや、それ以上にかかるかもしれません。




