願う
この世の不条理
「紅葉…。」
優しく頭を撫でてくださる、その仕草が、その大きな手が…お父さんに慰めてもらったときにそっくりで。…抑えられなくなって。
醜い泣き声を上げて。
淀んだ涙をぐちゃぐちゃに流して。
いっぱい、いっぱい、彼の広くて温かい胸の中で泣いた。
***
「紅葉…。俺は正確には胸中を察することができない。まだ、失ったことがないから…だ。ただ…。出来る限り分かりたいと思う。理解したいと思っている。それから…紅葉が紅葉自身を責めることを御両親は望んでいないと思う。だから。責めないでくれ。一応、御兄弟は今、城に待機してもらっている。大丈夫だ。村から紅葉が出たのは皆を守るためだ。長老殿がそう、仰っていた。だから、大丈夫だ。」
そこで彼は言葉を区切った。
私は幼子に戻ったかと錯覚するほど、狂ったように泣き続けた。
心遣いが嬉しくて。でもどうしても自分が許せなくて。どこかほっとしている私に嫌気がさす。二人はどう思っているのだろう。また話したい。話せない。会いたい。会えない。
涙は止まらない。
でも、このままでは、いや時すでに遅しだけど。
「くじゃくまるさま…かぜ…ひきっ…まふっ…っ…。」
彼は明るく笑った。
「なんのこれしき。それに、俺はまだ風呂に入っていないから湯冷めの心配はない。気に病まないでくれ。好きでやっているのだから…。」
鼓動が速くなった気がして。でも、こうしていると彼の心臓の音も聞こえてきて。生きているのだと実感する。
「紅葉、俺のことを幼名ではなく、『殿』と呼んではくれないか?…いやなら、別にそのままでも良いが…。」
努めて、明るく。
「はい………殿…。」
***
彼は私が泣き止むまで…すなわち眠るまで抱きしめたまま、頭を優しく撫で続けてくださった。




