追いかけて
かけまひた
慌てたように追いかけてくる人の気配が迫りくる。
…長いような短いような静かなようで騒がしい時間。
襖の前で足音が止まった。私は急いで冷たい布団に潜った。
「紅葉、少し話がしたいのだが…。寝てしまったか?」
ごめんなさい。起きています。ですが、今はあなたと話せるほど落ち着いていません。寝ているということにしてください。
見つからないようにと、必死に嗚咽を抑える。ちょっと、噛みすぎたのかもしれない。口の中がしょっぱくて、淡い、鉄の味で満ちていく。
「泣いて…いるのか…?」
「泣いて…ませっ…んっ…。」
自分に向かって喉の奥で呟いた。『嘘つき。』
声が震えていた。これじゃあ慰めてくださいって言っているようで情けない。
私は家族を守れなかった。犠牲にしてしまった。
こんなことになってしまうと知っていたなら、もっとちゃんと家の中で大人しくしていた。無理に外の世界を見ようとなんてしなかった。もっとちゃんと家族との時間を大切にしていた。なのに、なのに!なんで…なんでよ!
嗚呼。今頃弟たちはどうしているのだろう。家の隅で肩を寄せ合って泣いているのかもしれない。もしかしたら村の人たちに何か辛いことを言われているかもしれない。されているかもしれない。
でも私には何もしてあげられない。何もできない。ここから出ることができないから。
そう。
私のせいだ。私が掟を守らなかったからこうなってしまったんだ。私は家族の幸せをみんな奪ってしまった。
…だから私は幸せになってはいけない。だって、私は…
すっと襖が開いた。薄く、温かな光がそっと部屋に忍び込んでくる。
「紅葉…。」
布団のすぐ横で彼が座った気配がした。
「ケン坊から、全部…聞いた。紅葉…」
ダメ。私を、罪深い私に救いの手など…。私は私をきちんと罰します。だから…助けようとシナイデ…。
バッと起き上がる。
「孔雀丸様、お引き取り願います。私っ…はっ…私は………。」
言葉は涙に呑まれて消えていく。声が…出せない。
…っ⁈何が…起きて…
あたたかい…。じんわりと心の傷が癒えてゆく気がする。なんだか、何かがほぐれて…ほっとする。
気付けば私は孔雀丸様にぎゅっと抱きしめられていた。
次回をお楽しみに〜って言えるほど明るい内容ではないのが悲し




