涙の誓い
暗くなってきました。
ふわふわとした気持ちをお土産に、町から戻ってきた。でも。
私はあの日、夜空へ誓った。
私の全てを犠牲にしてでもみんなを守る
と。
だから、
今日一日、楽しくて嬉しくて、
…苦しかった。
***
部屋に戻って、お借りしていた着物を脱ぎ、普段着に着替えた。
***
『別れ、というものは突然来るもの。』それを私は身をもって知ることとなった。
「紅葉!」
まるで地獄で閻魔様とご挨拶してきたかのような、羅刹と夜叉と鉢合わせしたかのような、なんとも言えない顔をして、息を切らせて、ケン坊は現れた。
「ケン坊⁈どうしたの?」
「落ち着いて、聞いて、くれ。」
「…うん。」
「紅葉、の、ご両親、なんだ、けど、…。」
すうっと息を吸った。
「人柱に…なった。」
「えっ…。」
「紅葉が村を出て、神殿の建て直しの時に狂った民が…きっと紅葉の親だからって理由つけられて…埋められた…んだ…。」
言葉を呑み込むのに時間がかかった。
次いで頭の中が真っ白になった。
そして、今まで過ごした思い出が走馬灯のようによぎっていった。
「お母さん…お父さん…⁈嫌だ!いやだいやだいやだぁぁぁあっ‼︎」
その日は喚いた。泣いた。
ご飯を食べる気も、お風呂に入る気力もなかった。
ただ、不思議ともう一人のお母さんにおやすみなさいを言いに行きたいと思った。
***
そろそろと母上の待つ部屋へと歩を進める。
あと数歩まで来た時。
母上が想い人と話す声が聞こえてきた。
とても会話が弾んでいるようだ。
これは出直した方が良いかもしれない。家族の折角の団欒を、予告なく消えてしまうかもしれない温かな時間を、部外者の私が壊してはいけない。
そう考えて踵を返そうとしたとき。
…聞こえてきたのは私についての話だった。
「紅葉ちゃんなら大丈夫よ。ちょうど私の弟のところ子供できてないから養子ってことにすれば身分差問題は一発解決よ!」
「ですが…。彼女がどう思うのか、が大事ではありませんか?」
「あらまあ。気付いていないのね。ま、あの子もあなたが好いていること気付いてないみたいだし。もどかしいわぁ〜。」
「母上っ!」
「あらぁ〜。真っ赤っ赤。全部お見通しなのよ。ふふふ。」
「この話はここらで終わりにしましょう。それは、俺だって望んでいることではありますが、俺は彼女の気持ちを大切にしたいのです。後できちんと聞いてみます。では。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。母上。」
足音が近づいてくる。
何を思ったか、気づけば私はお借りしている自分用の部屋に逃げ込んでいた。
ケン坊は仕事人。




