わらべうた『紅目の子』
暗くなります
私がここにいる理由を説明した後、ケン坊は尋ねた。
「紅葉は村に伝わるわらべうたを知っているか?」
「知らない。」
「じゃあ、教えてやる。」
昔昔あるとこに
神様と
妖と
1人の男がおったとな
神様妖に恋をした
男と妖結ばれた
妖いずれめされたと
神様それに怒ったと
人幾許と呑み込んだ
1人の紅目の女の子
神様に乞うて
神殿造った
長い長い時が経ち
神様目覚めてしまったよ
紅目の子よ
舞えよ舞え
我等を守ってくれないか
「…と、まあ、こんな感じの歌だ。」
歌の途中に引っかかる歌詞があった。
確か長老様は私を生贄って言っていた。だから、もしかして…
「紅目の子って…。」
「ああ。紅葉のことだろうと言われてる。」
やっぱり。
「あのね、ケン坊。私、ほとんど外出ちゃいけなかったけど、その代わりに教えてもらえたことがあるの。」
すっと立ち上がり、着物の裾を緩くし、くるくると回して袖を腕に巻きつける。
「ひとつ、舞を踊らんと申し候。」
それは言い伝えを表現した舞だった。何度も練習させられたのだろう。動きが滑らかだ。俺の知らないところで着々と準備が進められていたようだった。
「ケン坊、もし、封印が解けちゃったら」
そろそろ妖が退治される場面だ。
「私はこの舞を踊るって教わったけど、その後ってどうなるの?」
嗚呼。無慈悲な刃が迫りくる。
俺はどうにかして口を開いた。
「本当かどうかは分からないけど、神域に連れていかれるらしい。それで民の平和は守られるらしいんだけど、紅葉は、それで良いのか?抗う方法だってある。俺と…」
彼女は首を横に振り、柔らかに微笑んだ。
「私は神様のところに行く。みんなが幸せになれるなら、あの人が無事でいられるなら、平気だよ。」
空には誰かと誰かを遮った、天の河が流れていた。




