膨らむ想い
⚠︎ケン坊が書いている紙芝居です。つまり、町に出かけたことは知っているかもしれませんが、どこまで知っているのでしょうか…と考えながら読んでいただくと後々面白くなるかもです。(偉そうにすみません)
私は孔雀丸様のお母様に仕えることになった。
…こう言うと必死に働いているように聞こえてしまうと思う。けれど、私はただ彼女と一緒にお茶をさせていただいて、彼女を母上と呼ばさせていただいて、彼女のお話を聞いているだけ。
なんだか申し訳ないような気持ちでいっぱいだけど、ケン坊が
『紅葉がいるだけで良いみたいだからほっとくといい。俺に降りかかってくる負担も以前より減って楽に…ゲフンゲフン』
と言っていたから御言葉に甘えさせていただいている。でも、せめてお手伝いぐらいはしたいなぁ…なんて思ったり思わなかったり。
彼女とのいつもの時間を過ごした後は、孔雀丸様の御供をする。ケン坊が任務でいないから、らしい。
孔雀丸様はとっても民想いで、とっても優しくて、とってもカッコよくて、凄く良い人だ。
…そう。村の娘が隣で歩くのはおこがましいというか、場違いというか、許されないというか、
合わないな、って思うほど。
隣で城内を歩く度にそう、思う。
もしかしたら怒られちゃうかも、だけど、でも、できるだけ長い時間、
彼の隣にいたい。彼のために生きたい。
ここ数日でもう、そんな風に想うほどになっていた。
***
「紅葉、何かあったのか?」
彼に名前を呼ばれる度、ぽんっと明るい気持ちになる。
「いえ、なんでもありません。孔雀丸様、今日は何処へ?」
つい、と見上げた。彼は難しそうな顔をした。
「今日は、一緒に城下町の視察に出かけよう。」
「はい。御供いたします。」
彼は何かもごもごと呟いた。
そして苦虫を噛み潰したような顔で、
気をつけていないと聞き流しそうなほど小さな、穏やかな声で
「ありがとう。」
さっきまでの暗いことが薄れて、ぱっと心が不思議な色になった。
***
ふわふわと夢見心地に並んで歩く。
ここはきっと、月ちゃんと行こうとした場所だ。初めてでびっくりしたけど、みんな楽しげで、とっても華やかで、とっても明るい。どこか慌てているような感じもするけど。
視察だと仰られただけあって、彼が何やら商人さんたちに話をすると、急にピリリとした空気が走る。
でも。
いつも村の外には出ちゃいけなかったから、すごく新鮮で、嬉しかった。
それに。
時々こちらを気にしながら歩いてくださる彼に少し期待を抱いて、慌ててかき消す。
身分差をわきまえよう。
そう、己を律する。
彼の美点が見つかる度に膨らむ心と突き刺さる痛みに板挟みだ。
忘れてなんかいない。ケン坊に言われた、"大事な"ことを。
でも。
快晴の空を見上げた。
神様、私はきっとあなたのところへ向かう頃には彼への想いでいっぱいになっていることでしょう。きっとあなたを1番に、なんて想えない。
でも、みんなを責めないでください。みんなを、彼を、許してください。
悪いのはこの気持ちを知ってしまった私だから。
彼は恐らく私のことをなんとも思っていないでしょうし。
***
「紅葉、少し後ろを向いてくれるか?」
すっと彼の手が髪に触れた。そこがぽっと熱を帯びて、だんだんと広がっていく。ほっぺたなんて、火傷しそうなくらいに熱くなっている。
「できた。」
彼は優しく頭をぽんぽんしてくれた。
恐る恐る何かが揺れるところへ手を伸ばした。
しゃらりしゃらり
これは…
「簪だ。似合っているぞ。城に戻ったらお面をとってもう一度その姿を見せてくれないか?」
つい、頬が緩んだ。
「はい。勿論です。」
恥ずかしくて下を向いちゃったけど。
彼の顔もまた、赤く染まっていた。
はふぅー
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