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翡翠の王冠  作者: 電動
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第2話 -旧友-



 夢を見た。

 巨大な竜と悲鳴…血と炎…

 そう…15年前の夢だ、ヒスイはまだ4つで両親は騎士だった

 故に二人は生存者のほとんどが避難している巨城『キャメロット』を守るべく仲間の騎士と共に戦った。

 ヒスイはアリスとその両親と共にキャメロットに避難し、戦いが終わるのを待った。

 …10日におよぶ戦いがおわり、彼は両親を探したが見つからなかった、二人の仲間の話によると竜の一撃は山をも引き裂くほど強力で、まともに食らった者はまず見つからないだろうとの事だった…

 そんな事は知っている、この夢は何度も見たから

 これは夢だなんて事は知っている、この夢は何度も見たから

 しかし彼は両親を探して走り回る…見つからないと知っていても…


 「またあの夢か…ん?」


 テレビがついていた、つけたまま寝てしまったのだろうか?いや、そんなはずはない

 昨日は眠すぎて飯も食わず、シャワーも浴びず寝たからテレビなんて見てる余裕なんてなかった

 では何故?答えは簡単だ、自分ではない他の誰かがつけたのだ…朦朧とする意識の中そこまで考えられるのは彼の強みと言ってもいいだろう。


 ガバッ!

 やっと事態の深刻さに気付き一気に覚醒した。


 ベッドの脇に少女が1人座ってお菓子を食べながら、朝のニュース番組を見ている


 「しかしテレビとは便利なものだね、座っているだけで次々と情報が入ってくる」


 「おい」


 「おはようヒスイ、見たところシャワーも浴びてないようだけど仕事に行く前に浴びてきた方がいいのではないかい?」


 当たり前のように人の部屋に侵入し、当たり前のように人の菓子を食べ、当たり前のように人のテレビを見ている

 そんな状況で腹が立たないやつは聖人と言っていいだろう…しかしヒスイはそれに該当しない。


 バシン!


 彼は彼女の頭をひっぱたいた


 「いたいじゃないか!ボクがいったい何をしたって言うんだ!?…ん?いたい…いったい…ふふふ」


 「ふふふじゃねえよ、この犯罪者め!お前一体どうやって入った!?」


 ボクということは彼女らの設定?上今話しているのはマーリンという事だろうか。


 「ドアから入ってきたのさ、当たり前だろう?鍵はかかってたけどあいたんだ」


 「あけたんだろ!!それをどうやったのかって聞いてんだ!」


 ガチャガチャ!ピンポーン

 インターホンを押す前にドアを開けようとするやつなんて他にいない

 …そういえばこいつもインターホン押さずに入ってきたっけか


 「お~い、マリンそこにいる?朝起きたら居なくなってたんだけど」


 アリスだ、とういことは…

 時計を見ると時刻は7:30、今日は8:00から見回りだからもう出なくてはマズい


 「ちょ、ちょっと待ってろ!」


 ドタドタの洗面所に走って行き、シワのついた制服に着替えて玄関の鍵を開けた。


 「シャワーは浴びないのかい?」


 「うるせぇ!」


 ドアを開けると制服姿のアリスがひょっこり顔を出した

 男気のある性格はともかくとしてスタイル抜群の彼女が

これを着るとまるでそういうファッションかのように錯覚してしまう。


 「あ!やっぱりいた!なんで勝手に出てくのよ」


 「キミの部屋にはテレビがないからね」


 そういえば昨日も勝手に見ようとしてたな…

 何故かリモコンも使いこなしていたけど


 「はいはい、もういいからさっさと行くわよ」



 ・・・寮を出て数分歩いたところで既に署が見えてきた、ヒスイ達が配属されているのはログレス第12地区第1騎士支署である寮から歩いて10分と言ったところだろうか。


 「あんた髪ボッサボサね…もしかして昨日シャワー浴びてないとか?」


 「大正解」


 「なんでお前が答えるんだよ、てかちゃんと浴びたし」


 嘘だ


 「ふぅ~ん…」


 そんな何でもない会話をしているうちに署についた。


 「お、やぁアリス、ヒスイおはよう」


 「おはようございますガウェイン団長」


 ガウェインは円卓12騎士の1人で第12地区騎士団の団長を任されている。


 「ガウェイン?おぉ!久しぶりじゃないか友よ」


 「ん?キミは…」

 

 「なんだあんたら知り合いだったのか?ちょうどよかった、引き取ってくれ」


 ヒスイは基本的に敬語を使わない、3年前に騎士学校に入校した際にアーサー王に話しかけられた事があったがそこでも敬語を使わなかったため、ヤバい奴が入って来たと校内では早々に有名人になった、もちろん悪い意味でだが…


 「…わかった、キミ、着いてきなさい」


 いつも明るい団長が急に暗くなった

 間違いなく過去に二人の間に何かあったと思われるが、正直この女とはもうあまり関わりたくない。


 「ふむ、じゃあ二人ともまた明日」


 「じゃあな、もう二度と会うことはないだろうけどな」


 ニヤリとイタズラ小僧の様な笑みを浮かべるとスタスタとガウェインの後を追って行った。


 「う~ん…悪い娘じゃないんだけどねぇ」


 「いや、最後のあの顔見ただろ?あれは悪人の顔だ」


 「それよりあんた、少しくらい敬語使うこと覚えなさいよ!ラウンドナイトにタメ口聞くロウナイトなんてありえないでしょ!」


 騎士には階級がある

 騎士学校を卒業して、最初に与えられる階級が『ロウナイト』

 各騎士団長の判断で一人前と認められた『ハイナイト』

 円卓12騎士3人以上の立ち会いの下行われる試験に合格して、騎士学校教官になれる(ならなくてもいい)資格を有する『マスターナイト』

 円卓に空席が生じた場合、新たに円卓に座る者としてアーサー王によって選出される『ラウンドナイト』

 そして国内外の信用できる情報を元に、主に危険な神代遺物を回収、又は破壊する事を専門とする、騎士の頂点『グランドナイト』

 ただし厳密には『グランドナイト』というクラスは存せず、誰かに任命されるのではなく、ただ皆が何となくそう認めたというフワフワした存在だ…ちなみに現在はアーサーを含めて3人がそう呼ばれている。



 ・・・巨城キャメロット、王の執務室にて


 「あーかったるいな」


 「そんなこと言ってるとまたペリ爺に怒られるよ?」


 無精髭の男、アーサーがダルそうにギルドや騎士団関係の書類に目を通してサインをしている

 それを円卓騎士の1人『ペリノア』から言われて、ちゃんとやっているか監視している『レム』…彼はマーリンが去った後残された『レムナント』だ。

 

 あの後、生まれたての赤子のように泣き叫ぶマーリンの脱け殻をアーサーが育て、新たに自我を獲得した”物”だ、彼がマーリンだった頃言っていたのだが

 「この体は特殊な魔法で魔力を結晶化して極限まで人に近づけた、人ならざる人だ 」

 それが理由なのか、彼は歳を取らない。


 コツコツと二つ足音が聞こえてくる

 ペリノアから逃げる為に獲得した研ぎ澄まされた気配感知能力で、この気配はガウェインだと確信した。


 「ガウェインか、入れ」


 ガウェインはノックしようとしていた手を下げ、「失礼します…」と、彼らしからぬ深刻そうな面持ちで入室してきた。


 「ん?二つ足音が聞こえたと思ったんだが」


 「はい、実は今朝我が団員のヒスイ騎士とアリス騎士がある少女…いえ、ある人物を連れてきたのですが」


 「マスターの息子か、変わりないか?」


 「ええ、今のところは」



 「そうか、でその人物とやらを連れてきたわけか」


 「はい、それが…その」


 「なに勿体ぶってんだよ、さっさ…と…」


 王は目を疑った、あり得ない人物がドアの向こうからこちらを覗いていたからだ。


 「…そんなバカな、誰だお前は!」


 その人物はビクリと体をこわばらせるとゆっくり申し訳なさそうに部屋に入ってきた


 「くっ!冗談にしては質が悪いんじゃないかガウェイン?」



 「ご、ごめんなさい!ガウェインは悪くないの!ワタシが急に現れたから」


 !?

 ガウェインはまた驚いた顔をした、彼女の口調がさっきとはまるで異なっていたからだ。


 「いったい何が目的だ?マリンの姿なんてしやがって」


 マリンがゆっくり目を閉じ、目を開けたとき顔つきが鋭くなっていた。


 「それはボクから説明しよう」


 !?

 また口調が変わった


 「今度はマーリンの真似か?」


 「真似じゃないさ、ボクはマーリンその人だよ」


 この懐かしい感じ…アーサーにはわかる、たしかにこの人物はマーリンであると


 「…だめだ、わけがわからん」


 「無理もない、ボクはそこのレムナントから抜けた後・・・」


 マーリンは3人の前であれからの事を話した

 レムは幸いにも全くなんの事かわかっていないようだったが、マーリンとマリンの二人をしるアーサーとガウェインにはつらい話だった。


 「ガウェイン、レム、少し外してくれ」


 「しかし…」


 「頼む…明日の円卓会議で皆に全てを話す」

 

 ガウェインは立ち上がるとレムを連れて部屋を出ていった…それからしばらく二人きり、ではなく三人きりで話した。


 「正直まだ混乱しているが、お前が本物であるということはわかった、しかし一つだけどうしても腑に落ちない事がある」


 「なんだい?」


 「マリンとマーリン、この二つの名前がほぼ一緒なのは本当に偶然か?」


 「偶然だよ?」


 「マリン、どうなんだ?」


 「本当に偶然よ」


 どうでもいい偶然だがたしかにアーサーにとっては度しがたい事なのかもしれない。


 「むむむ…マリンの姿にマーリンの髪色…なんか気持ち悪いんだよなぁ」


 「えぇ!?ひどい!」


 「いや、そういう意味ではないんだすまん」


 「…ふふ、冗談よ、それよりお願いがあるんだけど」


 ・・・1時間後、マリンを客室に案内して執務室に戻るとガウェインがいた


 「王よ」


 「よせよ、誰もいねぇんだから」


 ガウェインは「はぁ…」とため息をついて椅子にドカッと座った


 「それでどう思う?アルトリウス」


 急に態度が変わり、彼の元の名を呼び捨てにした

 実は円卓にはアーサーが王になる前からの友が数人いて、周りにそれを知らない者が居ないときはこうして昔のままに会話をしている。


 「心配いらん、あいつは本物のマーリンだ俺が保証する」


 そう言いながらグラス二つと強そうな酒を持ってガウェインの対面に腰かけ、アルトリウス自ら酒をついだ、二人は軽く乾杯する素振りを見せるととりあえず一口飲んだ。


 「これはなかなかの逸品だな」


 「だろ?俺が造ったんだぜ」


 「密造じゃないか!騎士の王が法に触れるとはなんという事だ…!」


 「堅いこと言うなよ、今まで酒の密造でしょっぴいた奴なんていないだろ?それにお前も飲んだんだから共犯だぜ?」


 「くっ…!卑怯者め、騎士道精神はどこれやら…」


 そう言いながらもう一口飲んだ。


 「バカな話は置いといてだな、マーリンが戻ったということは『卵』をどうにかできるかもしれないって事でだ」


 「やはりそうきたか、しかし仮に円卓を説得出来たとしても誰が行くかが問題だ、向こうの世界を知っているのはキミとマーリンとマスターの3人だけなんだぞ?加えて扉を維持しておくのであればマーリンは扉から動けない」


 「あぁ、俺が行くと言えば間違いなく円卓は承諾しないだろうな…だからマスターを呼び戻す」


 はぁ…またため息をつきながら酒を口に運び、いったんグラスをテーブルに置くと今度はガウェインが二つのグラスに酒をついだ。

 「簡単に言うけどね、あの人は扉を自力で探す為に旅に出てから行方不明なんだぞ?どうやって…」


 アーサーはポケットに手を突っ込むと通信魔法端末『ツマホ』を取り出し、どこかにダイヤルした。


 プルルルル、プルルルル、ガチャ


 「あ、マスター?今どこ?…あぁ~そこなら明日までにこっちに帰ってこれるっしょ、…いや大丈夫だって、マスターならできる」


 ガウェインはポカンと口を開けたまま通話するアーサーを見ていた。


 「聞いて驚くなよ、マーリンが戻ってきたんだ、これであんたが探してる扉もここから開く事が」


 ツー、ツー

 切られた


 「よし、これで明日までに戻ってくるだろう」


 「あぁ~なんか考えるのがアホらしくなってきたよ、今日は飲むぞ」


 この後二人は深夜まで飲んでいたらしい…

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