原因 1
予想される最悪の事態は、俺には受け入れ難いものだった。
だが、もうどうすることもできない。
……その時俺は、引きこもる原因となった過去を思い出していた。
高校2年の春の終わり頃だ。
学校から帰る途中の川沿いの歩道で、倒れているバイクを発見したことから始まった。
倒れていたバイクは、新品の匂いの付いた黒の《ハヤマ PKJ R400》だった。そのスッキリしたネイキッドのフォルムは、力強さを感じさせた。
俺は、そのバイクを起こそうと近づいた。
「俺のバイクに何してんだタカシ!」
突然、怒鳴り声が聞こえた。
クラスメイトの『ツヨシ』だ。ツヨシは大柄で体付きもよく、俺のクラスでは人気のあるやつだ。
ツヨシは、俺に近付いてきた。
「いや、俺じゃないよ」
俺は、必至で否定した。だが……。
「てめえとぼけてんじゃねえぞ」
状況は最悪……俺以外に周りには誰もいない。完全にツヨシは俺がやったと思いこんでいる。
「せっかく夏休みにこの新品のバイクでツーリングいく予定だったのによお! キズ物にしやがってえ!」
「だから俺じゃないよ!」
ツヨシは、俺に殴りかかってきた。
俺は、反射的に体を丸めた。
するとツヨシは、俺の丸めた体につまづいて歩道を飛び出し、河川敷の斜面を転がり落ちた。
「絶対に許さなねえからなあ!」
ツヨシは体を起こし、俺を睨み付けて大声を上げた。




