第12話 リザードドラゴン
ケンタ君は、軽快に獣車を引く。長い時間、引いているのだが、まったく疲れた様子はない。さすが、運び屋をやっていただけのことはある。あとで何か褒美でも上げないと悪い気がしてきた。
日が暮れ始め、辺りは暗闇に包まれる。山のふもとまではもうすぐだが、途中に林があり、
そこに踏み込むのはなんだか気が引ける。
「これ以上は無理かな」
夜山は危険だ。それは異世界でも共通だろう。
「そうですね、休みましょうタカシ様」メイデンも同意見だ。
俺たちは進むのをやめ、獣車の中で野営することにした。見張りは他の3人が交代で見てくれるようなので、俺は安心して眠ることができる。俺ばかり楽をしているような気がするが、今は、素直に甘えておくことにした。安心して深い眠りにつく。
…………。
何事もなく朝を迎える。朝の冷たい空気が肌を撫でるようにまとわりつく。皆をおこし、朝食を取る。昨日の晩、食事を取るのを忘れたせいか、ひどく腹が減っていた。ミツユスキーが用意してくれたパンをちぎってわけ、腹ごしらえをする。
その後、獣車で出発し、林を超えて山のふもとにたどり着いた。山は、切り立った崖のようになっており、足場があまり良くない感じだった。獣車で上るのは、少し危険のようだ。
「ケンタ君、ありがとう。一度ミツユスキーの家に戻って待機してくれないか」
「獣車じゃ通れないですもんね……。昼間はなるべくここで待機するようにします。それじゃあ頑張ってください」
ケンタ君は、俺の話を涙目で聞き入れてくれた。ケンタ君には悪いが、大事な足だ。無理をさせるわけにはいかない。
山のふもとでケンタ君と別れ、俺たちは3人で、ゆっくりと山道を登る。山の中腹に近づくにつれ、崖下を見るのが怖くなってきた。
しばらく、崖沿いの道を上り続けると、広い道に出た。そこから先は、岩場になっており、そのまた先は、森林になっていた。
ふと、山肌にある大きな岩陰に、何か動くものを見つけた。それは、大蛇のように動く尻尾だった。
「あそこの尻尾はなんだ!」俺は、それを指差し確認を取った。
「大将、あれがリザードドラゴンっス」
「もう見つけるなんてさすがです! タカシ様!」
リザードドラゴンを見つけた俺たちは、即座に戦闘態勢に入った。
「さあ、狩りの始まりだ!」
俺は、勢いよく霊剣ファントムを抜いた。すると、俺の刀から衝撃波が、岩に向かって放たれ、次の瞬間、リザードマンの隠れていた岩が木っ端みじんに砕け散った。
「な、なんだこれ!? 勝手に衝撃波が出たぞ……こういう武器なのか?」
「今の技は『クイックスマッシュ』……あっしがよく使う敵を木っ端みじんにする技っス。霊剣ファントムは、鞘に収めて攻撃をイメージすると、それを具現化するっス。今の攻撃は、あっしが持っていた時のイメージの……多分残りっス」
「へー、すごいなこれ」
「でも、リザードドラゴン……木っ端みじんにしちゃったらシッポが……」
メイデンが困った顔で呟く。
岩の砕け散った辺りを見てみると、その奥で、リザードドラゴンがミンチになっていた。
「たしかに……これじゃシッポがどこだかわからないな」
威力がありすぎるのも困り物だ。
「斬撃をイメージするといいっスよ、さらに技名を付けると尚いいっス」
「斬撃……技名……」
俺は剣を鞘に収め、目を閉じ、イメージした。そして、叫んだ。
「【旋風斬】!」
剣を、鞘から振りぬく。すると複数の斬撃が飛び、目標の岩が微塵切りになった。
「ちょっと違うっスね」
「もう一度だ」
俺は、刀を鞘に収め、イメージを練り直した。
「【疾風斬】!」
掛け声と共に飛ばした一筋の斬撃は、大きな岩を真っ二つに切り裂いた。
「これだ!」
「お見事っス、大将!」
俺は、斬撃の技を習得したようだ。
「タカシ様! もう一匹リザードドラゴンが!」突然メイデンが声を上げた。
山肌の崖の上に、リザードドラゴンが姿を現した。さっきは岩陰で、よくわからなかったが、今ならよくわかる。体長5m程でドラゴンの翼を持つワニだ。
「よし、あれを倒せば……」
俺はイメージを刀に注ぎ込んだ。だが、それより先にリザードドラゴンは金属音のような雄たけびを上げた。
「耳が……!」声が頭に響く。俺は耳を手でふさいだ。
「しまった、仲間を呼ばれたっス」ファリスは真剣な表情を見せた。
地響きのような音がこちらに近づいてくる。危険を感じた俺は、広場の中央で2人に背中を預けた。
そして、俺達は……。
「かなりいますぜ、大将……」
「タカシ様は必ず守ります……」
……リザードドラゴンの群れに囲まれていた。




