第三話:ジュリア
え? これは一体どういうことだ……
突然、魔法の玉のようなものが俺に向かって飛んできた。反射的に、俺は間一髪で避けることができた。
あぁ! 危ないな、いったい誰がこんなことをしたんだ?
俺が疑問に思っていると、地面から突然、アンデッドが次々と現れた。
非常に多い。何体いるか正確には分からないが、これはかなりまずい状況だ。
こんなものが自然に現れるわけがない。絶対に誰かが背後で召喚しているはずだし、さっき俺に魔法を撃った奴もその一人かもしれない。
しかし、誰がこいつらを召喚したんだ? まさか、プリシアの魔法使いたちか?
すぐにその考えを否定した。知っている連中の中には、こんな大軍を召喚できる奴はいないからだ。
しかも、こんなことを一人でやるのは難しすぎる。
もしそれが奴らじゃないのなら、可能性があるのは……
「グル!」
くそっ。なんで俺の体がこんなに震えてるんだ?普段、こんな状況になったことはなかったのに、今日は
どうしてこんな風に……
心臓はバクバクと激しく打ち、額からは汗が流れ落ちるほどで、自分の恐怖を感じることさえできる。もしかして、これが人間の体にいる影響なのか?
そう、そうかもしれない。結局、俺は前世の魔王の力を覚醒させたばかりの人間に過ぎないから、こんなことも不思議ではない。
すぐに心臓の鼓動と呼吸を整えた。落ち着け、落ち着け。どうせ俺は魔王だったんだ、こんな些細なことに怯むわけにはいかない。もしサオリがこの震えている俺を見たら、きっとがっかりするだろうから、しっかりと自分を保たなければ。
自信を装いながら、一歩前に出て、右手を前に差し出した。
「もう一度現れろ、ウリエル」
俺の呼びかけに応じて、希望に満ちた輝く光が再び現れた。
しかし、何も起こらなかった。
光は消え去り、ただ風が吹き抜けるだけだった。
「なぜだ?」
叫んでしまった。
なぜ? 聖剣が現れない。前は確かに召喚できたはずなのに……
あ、そうか。俺が使いすぎた魔力のせいで、もう魔力が尽きてしまったから、聖剣ウリエルを召喚できないんだ。
「グル!」
アンデッドたちは我慢の限界を迎えたのか、一斉に俺の方に襲いかかってきた。まるで蜂の巣を突っ込まれた蜂のように。
まずい、これで俺は終わりだ。
いや、俺は魔王だ。こんな廃品の集まりに敗れるわけがない。効果があるかどうかは分からないけど、試してみる価値はあるだろう。
「消えろ、《ターンアンデッド》」
瞬く間に、俺の右手のひらから魔法の光が現れ、目の前の狂ったように突進してくるアンデッドたちに向かって放たれた。
攻撃を受けたアンデッドたちは、その場に魔法の円を浮かび上がらせ、一瞬で消え去った。残されたのは、霧のようなもので、消えそうな白い炎が空に昇っているだけだった。
どうやら効果があったみたいだ。ほんとにラッキーだな。
一息ついた。
周りに誰もいなくて良かった。そうでなければ、厄介なことになっていただろう。
俺が思った通りだ。聖剣の精霊と契約している以上、魔力だけでなく、自分の体の一部にある精霊力も使えるわけだ。
最初は、その能力が俺に反発するかもしれないと思っていた。しかし、実際には、《ターンアンデッド》 を使ったときに、期待通りの効果を発揮した。これはアンデッドを浄化する魔法だ。
「さすがは私の魔王様、相変わらずかっこいいわね。でも、今は『ササキ・ゼルト』って呼ぶべきかしら」
黒い霧の中から、寒気を感じさせる恐怖が漂ってきた。突然、非常に傲慢な声と、耳に入るとぞっとするような笑い声が発せられた。
この声の音を聞いて、俺はどこかで聞き覚えのある音だと感じた。
そうだ、今でも忘れられない。
霧が晴れる中に現れたのは、とても美しい少女で、まるで十八歳くらいのようだった。
彼女は高身長で、魅力的な体つきをしており、背中には赤い縁取りのある鋭い大鎌を背負っていた。黒に白い縁取りのある少し怖いけれど可愛らしいドレスを着ており、袖が彼女に対して大きすぎるように見える。長い髪は白と黒の混ざった色合いで、目は二色に輝いていて、どこか見覚えのある感じを与え、彼女からは恐ろしい気配が漂っていた。
そう、あいつは……
「相変わらず危険そうだな。出てこい、ジュリア」
「おやおや、そんな恐ろしい口調で話さないでよ。普通に話してくれればいいのに」
あいつは愛らしい仕草をしながら、ほんのりとした笑みを浮かべた。しかし、それは久しぶりに会った人への微笑みではなく、これから自分に殺される運命にある人への笑顔だと知っている。
実に恐ろしいことだ。
あいつは本物のネクロマンサーで、かつての強大な軍勢の中で、第三軍団の魔王軍将の一人だった。
なぜ彼女がこんな場所に現れたのか、理由が分からない。
「自分の危険さを隠す必要はない。我はお前の性格をよく知っているからな」
「ひどいわね、わざわざ遠くから会いに来たのに、そんな口調で話すなんて」
ジュリアは不満そうに言いながら、ふくれっ面をしていた。
やはり、長い間会っていなかったにもかかわらず、あいつは全く変わっていなかった。以前のように、今も奇妙な遊びが好きなのだろうか?
「なぜお前は我を見つけて会いに来たんだ?」
「私の能力を甘く見ないでください。どんなにお前がどこにいても、私なら必ず見つけ出せるわ。それに、私のあなたへの情熱的な愛が、私をこうして再び引き合わせたのかもしれません」
彼女は一体何を言っているんだ? 本気なのか冗談なのか、全く分からない。
「それで、なぜ我を攻撃することができたのか説明してくれる?」
ジュリアは薄い笑みながら、しばらくしてから答えた。
「ええ、それはただあなたの能力を試したかっただけなの。あなたがこんな弱い体の中にいるときに、どれだけのことができるか確認したかったの。でも、やっぱり正しかったわ。あなたは昔と変わらず素晴らしい」
「敬意を表しているふりをしないでくれ。さっきのお前が我を殺すつもりだったのは、ちゃんと分かってる」
確かに、ただ試すだけなら、わざわざ五級の魔法玉を使う必要はなかった。
あれは一発で命を奪う力を持っている。
最初から俺を殺すつもりだったのは明らかだ。それに、我が魔力を全く持っていないことを事前に知っていたからこそ、こんなことをしたんだろう。さらに、アンデッドを召喚するなんて、もし精霊力がなかったら、我はもう死んでいただろう。
やはり、彼女は昔と同じように策略を使っている。おそらく、これで終わりではないだろう。
ジュリアが何か計画を立てている可能性があるが、今のところはそれが何かを予測することはできない。
「どうしてそんなことを言うの?私の心がとても痛いわ」
こいつ、本当に……
「もう回りくどいことはやめろ。最後にもう一度聞く。なぜ我を殺したいんだ?」
「わあ、あなたの顔がすごく怖いわね。そんな偉大な魔王を殺そうなんて、どうして思えるわけないじゃない」
あぁ、負けた。
「まあ、もういい。言いたくないなら、それで構わないから、気を使わずにそのままにしてくれ。今、忙しいんだ」
「じゃあ、またね、ダーリン」
彼女はそう言うと、背を向けて空気の中に消えていった。
一体、彼女は何を企んでいるんだ? それに、なぜ我がこの世界で『ササキ・ゼルト』として生きていることを知っているんだろう? 全く理解できない。
今、我の頭に浮かぶ唯一の可能性は、彼女が我に対抗するための計画を準備しているということだ。おそらく、その通りだろう。
ジュリア、一体何を考えているんだ?
最後までお読みいただきありがとうございます!
もし気になった点や「ここを直した方がいい」という箇所がございましたら、ぜひご意見をいただけますと嬉しいです。皆様のフィードバックをお待ちしております。




