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第二話:聖剣との契約

その瞬間、血の匂いを吹き飛ばすほどの魔力が解き放たれる。床が軋み、壁がうねる。


「クソ野郎……さっきの一撃、確かに痛かったぞ」


俺は口元を歪め、冷酷に笑った。


「だが――お前の剣が刻んだ痛みは、我が返す怒りに比べれば、ほんの十分の一にも満たぬ!」

「な、何だと……!? どうして君が立ち上がれる!? いや、それだけじゃない……その魔力……まさか、記憶が……!」

「そうだ」


俺は堂々と告げる。


「我はすべてを思い出した。忘却の彼方に追いやられていたものすべてを――そして、本当の自分自身をな!」


* * *


数年前──異世界、プリシア王国にて。


「そんなことはおやめください、魔王様……!」


魔王軍将の一人、ジュリアが慟哭に近い声で懇願する。顔には深い憂慮が刻まれている。


「既に決めたことだ」


魔王は静かに、しかし揺るがぬ声で告げた。


「もしお亡くなりになったら、私たちはどうすれば……。お姿が消えれば、聖騎士や天使たちの手から逃れられません」


ジュリアの声は震えている。彼女の眼差しは、かつて無数の戦場を共にした主君に向けられていた。


「オリビア」

「は、はいっ!」


名を呼ばれ、オリビアがすっと身を翻す。


「よく聞け。今から、我が有する全ての魔力をお前に授ける。以後、魔王軍将たちの指揮権はお前にある」


魔王の言葉には悲壮と覚悟が滲む。


「そ、それでは……あなたは?」


オリビアの声に詰まりが生じる。問いの裏には、主への愛惜と恐れが混じっていた。


「確かに言う通りだ。今や我には、もはや魔王として在る資格はない。ゆえに、全てをお前に託す、オリビア」


魔王は震える指で静かに手を差し出す。その瞳はどこか遠くを見ていた。


「だめです。私は――この世界で、あなたこそが私のもっとも敬愛する存在です。たった一人の主ですから。だから、その重責を私が担うことなどできませぬ」


オリビアの拒絶は真剣そのものだ。だが、その瞳の奥には責務を受け入れようとする決意も宿っている。


「これは命だ。従え、オリビア」


魔王の声は命令としてひびいた。


「……はい。御意のままに」


オリビアは俯き、やがて静かに頷いた。


「よかろう。受け取れ」


魔王は言い、手の中に澄んだ暗色の輝きを集めた。光は冷たく、しかし圧倒的な重みを帯びていた。


その後、魔王は自らの全ての魔力をオリビアへと託した。力の移譲は炎のように鮮烈で、空が鳴り、地が震えた。与えられた者の胸中に、新たな意思と責務が宿る。


そして魔王は、エレスの山へと向かった。彼の行き先はただ一つ――自らの終焉。己の命を断つことで、何かを終わらせようとしているように見えた。


その時、魔王は確かに、死ぬと思っていた。だが――


ここは……一体どこだ?


天国なのか、それとも地獄なのか。それとも我は既にこの世界から消え去ってしまったのか?


目を開けても、広がるのは無限の暗闇。光すら存在せず、上下も左右も判別できぬ虚無の空間だった。


ここがどこなのか……なぜ我がここにいるのか……答えは一つも見つからない。


だが、それも悪くはない。


もし本当に我があの世界から消えたのなら、せめて自らの過ちを、この身で償うことができるのだから。


「……魔王様、魔王様」


不意に、声が響いた。


「誰だ?」


我を呼ぶその声は、どこか少女のように澄んでいる。


まさか……レイなのか?


「レイ、君なのか、レイ?」


しかし、耳を澄ませるほどに違和感が募る。


――これはレイではない。


彼女が我を「魔王」と呼ぶはずがないのだから。


ならば、いったい誰が……?


誰が我を呼んでいるのだ?


「あっ……!」


突如、闇を裂くように奇妙な光が現れた。


それは我の全身を絡め取るように包み込み、抗う間もなく引き寄せ、吸い込んでいく。


一体……何が起こっているのだ……?


「……魔王様、魔王様。どうか、目をお覚ましください」

「っ……誰だ、お前は?」


薄れる闇の中、目を開いた瞬間、そこに立っていたのは一人の少女だった。


彼女の頭上からは柔らかな光が零れ落ち、その姿を神々しく照らし出している。


――まさか……女神、なのか?


つい先ほどまで虚無でしかなかった世界は、今や天上にも似た輝きに満ちていた。


「魔王ゼルド様、お待ちしておりました!」


少女は胸に手を当て、微笑みながら深々と頭を下げる。


「自己紹介させていただきます。私は……聖剣の精霊、ウリエルと申します!」


「聖剣……だと?」


その名を耳にした瞬間、過去に聞きかじった伝説が脳裏に蘇る。


――聖剣は神の力を宿し、神々と肩を並べるほどの力を誇る武器。悪魔を葬り去るために造られた、究極の刃。


だが、その聖剣は長らく行方不明とされ、今やただの作り話だと笑う者すら多い。


それが今、目の前に……しかも「精霊を宿した姿」で現れるとは。


「……信じられん。本当に、聖剣の精霊だというのか」


「はい。そして、あなたをずっと待っていました」


ウリエルの眼差しは、揺るぎない決意に満ちていた。


「先ほど言った『待っていた』とは、どういう意味だ?」


「――お願いがあるのです」


彼女は一歩近づき、真剣な声音で告げる。


「魔王様。どうか……私の使命を、共に果たしていただきたいのです!」

「何の用だ?」

「私と契約を結んでほしいのです」

「はっ? ……契約だと?」


思わず眉をひそめ、首をかしげる。


「つまり――私はあなたの従者となり、あなたが私の主になるんです。私の力のすべてを、あなたに捧げる。それだけの話ですよ」

「待て待て待て! よく聞け。我は魔王だぞ。魔王が聖剣と契約するなど、聞いたこともない!」


そうだ。今まで魔王が聖剣を使ったなんて前例は一度もない。むしろ、聖剣は魔王を討つためにあるはずだ。

――にもかかわらず、なぜ我がこいつと契約せねばならん? 理不尽にも程がある。


「じゃあ……もし私が転生を手伝って、新しい人生を与えると言ったら、どうします?」

「……っ!」


その言葉に、我は思わず体を震わせた。


「な、なんだと? 本当にそんなことができるのか?」

「もちろんです。ただし、私と契約を結んでいただければ、の話ですが」

「なぜ……なぜ我を選んだ?」


問いかけに、彼女はしばし沈黙し、そしてゆっくりと微笑んだ。


「……退屈だからです。精霊として、この剣に縛られたまま、ただ永遠を過ごすなんて……つまらなすぎます。だから、まだ出会えていない"主"を探し続けていました。けれど――あなたが戦う姿を見て……」


彼女は言葉を切り、目を伏せる。


「あなたが……あなたが、とても……」

「……?」

「――面白い方だと思ったんです」

「はぁ!?」

「ふふっ、冗談ですよ」


本当に、どうすべきか──。こいつと契約を結ぶべきか。まだ信用していい相手かどうか、判断がつかない。


「それで、彼女に会いたくないのか?」

「彼女──?」

「そう、あなたの恋人よ。確か『レイ・アリス』だったわね。プリシア王国の姫。だが、聖騎士たちに――殺されたの」


その名前を聞いた途端、胸の奥に鋭い痛みがよみがえる。あいつらがやったことを、俺は決して忘れられない。あの連中は、ただの人間だったレイを奪い、最後の瞬間まで彼女を守ることすら許さなかった。くそっ、思い出すだけで腹が煮えくり返る。約束を守れなかった自分を、誰が赦してくれるというんだ。

かつての俺は、人間の価値など量ることもできず、部下に無差別な殺戮を命じ、世界征服を夢見ていた。だが、レイと出会った時、世界は変わった。彼女は、ほぼ一人で俺の人生を救ってくれた。人間の命の尊さを教え、殺しをやめ、共存の道を示すよう説いてくれたのだ。


その教えによって、俺は変わろうとした。攻撃をやめ、和解に向けた和平を提案した。だが──奴らは信じなかった。聖騎士たちは疑念に囚われ、レイを“魔王と通じている”と決めつけ、彼女を斬った。

絶望の淵で、俺は自ら幕を引く道を選んだ。自分の過ちを償うために、部下たちを置き去りにして、あの国の地へ向かったのだ。


今、思えば、あれは逃避だったのかもしれない。だが、あの時の俺にとっては、唯一残された贖罪の形であり、レイへのせめてもの償いだった。


「彼女は、まだ生きているのか?」

「いいえ。ですが、彼女は転生して別の世界で普通の生活を送っています」


その答えに、胸の奥がざわつく。


「どうしてそれを知っているんだ?」


ウリエルは静かに微笑んだ。


「忘れてしまわれたのですか? 私が聖剣の精霊であることを。あなたの知らぬことなど、ほとんどありません」

「では、なぜ我を助けるのだ?」

「言いましたでしょう。あなたは面白いと。私の退屈を紛らわせてくれる存在だからです」


レイ――もしもう一度人生を与えられるなら、俺は彼女を探し出し、果たせなかった願いを叶えたい。


その思いが、胸の奥で静かに燃える。


「よし。受けよう。俺はこの契約を受け入れる」


ウリエルは軽く一礼し、言葉を告げる。


「それがあなたの選択なのですね。よろしい。これより、あなたは私と契約を結びます。以後、遠く離れた別世界で人間として生きていただきますが――」


その先を、ウリエルは柔らかく続けた。


「この場所に関する記憶と、あなたの魔力は、しばらくの間封印されます」

「では、我は何も覚えていないことになるのか?」

「ご安心を。時が満ちれば、再び力は戻るでしょう」


重い沈黙のあと、俺は小さく頷いた。


「わかった」


そして、我とウリエルは契約を結んだ。


* * *


現在、午後九時三十分。煌びやかな灯りに照らされた遊園地の片隅で――。


「感謝するぞ、オリビア。おかげで全てを思い出せた」

「感謝なんて必要ないわ。私はただ、すべきことをしただけ。それであなたを救えたなら十分よ」

「ふむ……だが、お前はプリシアの聖騎士だろう?」

「その通り。そして、本来の任務は――あなたが記憶を取り戻す前に排除することだった」

「ほう、勇ましいな。命を懸けてまで、か」


オリビアの瞳が一瞬だけ揺れる。


《まずい……奴の魔力がどこまで回復しているのか分からない。今は撤退するのが最善――》


「考えていることが顔に出ているぞ。『逃げるべきだ』――そう思っているな」


《なっ……!? 読まれているだと!?》


「それだけじゃない。『なぜ我がお前の思考を読めるのか』――そこも気になっているはずだ」


「……馬鹿な! どうして……?」


魔王は冷ややかに笑った。


「忘れるな。我は魔王ゼルド。人の心を覗くなど、造作もないことよ」


一歩、二歩と踏み出す。夜の空気が張り詰める。


「だが……ここで騒ぎを起こすのは面倒だ。――場所を変えるとしよう」


次の瞬間、闇がうねり、二人の姿は遊園地から掻き消え、近くの荒れ地へと転送された。


「オリビア、カズコの世話を頼めるか? すぐに終わらせる」

「はい、任せてください」


空気が一瞬だけ和らぐ。俺はそいつを睨み据えたまま言葉を続ける。


「さて、どうやってお前を罰してやろうか」

「や、やめてください……そんなことは……」


声は震え、言葉が続かない。だがその目は必死で抗おうとしている。俺は冷たく返す。


「それなら、なぜ我のカズコを狙った? 答えろ」

「そ、それは……話せません!」


震える唇の奥に隠された何かを感じ取りながら、俺は追い打ちをかける。


「覚えておけ。彼女は隣の家の子だ。両親から面倒を見るよう頼まれている。もし今夜、彼女に何か起きれば――お前がその責を負うことになる」

「そ、そんな……!」


とどめの言葉を投げると、相手の顔が真っ青になった。さらに俺は付け加える。


「それに、今夜は新作アニメの放送日だ。見逃すつもりか?」


――たぶん、世界を救うより切実な脅しが効いたのだろう。相手が短く呻く。


「くそっ……食らえ!」


突如、空気が裂けるように稲妻の光が走った。そいつの魔力の矢が、俺へと一直線に伸びてくる。

だが、俺は片手を掲げて静かに言った。


「無駄だ」


光線が触れようとした瞬間、周囲の空間が歪み、光が消え失せる。そいつは咄嗟に後退して叫ぶ。


「お前を――魔王め、絶対に殺してやる!」

「お前がそこまで望むなら、望みを叶えてやろう。見よ、これが我の手にした力だ」


俺はゆっくりと右手を前に突き出した。掌の内で冷たい気配がうねり始める。唇が微かに動き、古の言葉

が空気を震わせた。


「《悪を砕き、悪魔を滅ぼす聖の一閃よ。神に並ぶ力を秘めし剣よ、今ここに封印を解かん――我が手に力を与えたまえ》」


一陣の光が俺の手から解き放たれ、天と地を叩くような轟音とともに叫び声が上がった。


「来い、聖剣ウリエル!」


――その聲は、夜空に鋭く刺さった。


周囲の空気が震え、光の粒が渦を巻く。白い光が一本の剣となり、ゆっくりと俺の掌の中に顕現した。

その剣全体は淡い光輪に包まれ、刃の縁からは静かな蒼い光が洩れている。


一瞬で、近くの木々の葉がざわめき、遠くの建物の窓ガラスが微かに震えるほどの存在感──これが、噂

に聞く聖剣の力か。


俺は剣をしっかりと握りしめ、前方に向けてその威厳を示した。掌に伝わる冷たさと力の重みが、全身を

貫く。


「よし、この契約を続けよう、ウリエル」


敵の男は目を見開き、喉から絞り出すように声を上げた。


「そ、それは……長らく失われていた伝説の剣だ。どうしてお前がそれを持っている、魔王よ?」


顔に浮かぶ恐怖を無視して、俺は淡々と答える。


「知らん。だがそれが今ここで判明したところで無意味だ。理由など問う暇はない。お前は今すぐ死ぬのだからな」


周囲の空気に、敵の内心の声が震えるように響いた――。


《終わりだ……噂通り、その力は尋常ではない。これに斬られたら、生きては帰れまい》


その恐怖が、男の体を硬直させる。だが、抜け出す術はない。俺の目の前に立つすべてが、刃の冷たさと光の前に飲み込まれようとしていた。


「ま、待ってください…わかりました、わかりました! 今すぐここを離れます。二度と邪魔はしません! 頼む、命だけは――まだ死にたくないんです、死にたくない!」

だが、その懇願は虚しく響いた。

「今さら我に懇願しても遅い。さあ、愚かな聖騎士よ。この剣の前に跪き、これまでの所業を悔い改めよ」


男は必死に抵抗を続ける。震える声、額ににじむ汗。足元からはかすかな音が聞こえ――どうやら、彼のズボンの内側に液が滲んでいるらしい。恐怖が、身体の機能を奪っているのだろう。


「やめろ!」


俺は聖剣を高く掲げ、一気に振り下ろした。


「神よ、助け給え――」


聖剣は一閃する。だが、刃は彼の肉体を貫くことなく、彼の顔の前で水平に止まった。男は動けず、ただ息を詰めて震えるだけだった。


しばしの沈黙のあと、俺は予想外の言葉を漏らす。


「冗談だ。お前を殺すつもりはない」

「はっ……!」


そのまま俺は掌をひらき、静かに魔力を巡らせる。空間に一つの扉が浮かび上がり、それはプリシアへと繋がるゲートだった。


「ここで起きたことは全て忘れるがよい。さあ、プリシアへ戻れ。これにて終わりだ、愚かな聖騎士」


俺は彼の記憶をそっと侵食するように消し去り、意識を薄れさせたままゲートの中へと放り込んだ。男は


ふらつきながらも、やがてゲートに飲み込まれて姿を消す。


任務完了の余韻も束の間、聖剣は掌からふっと消え失せた。光輪は玉となって弾け、辺りの空気は静かに戻る。


次に、俺はカズコの元へと向かった。魔力を注ぎ込み、彼女の傷を繕う。血は徐々に止まり、冷たく固まった痛みが和らいでいく。やがて、カズコは静かに息を整え、まるで眠っているかのように落ち着きを取り戻した。


もう一つの問題は、このあたりの家や木々もすっかり我が壊してしまったことだ。だから体内に残っていた魔力をすべて放出し、元通りに修復すると同時に、カズコの記憶も消してしまった。カズコが経験した恐ろしい出来事を忘れさせるために。


ただ、彼女に楽しい思い出だけを残したかったんだ。


「もう一度ありがたい、オリビア」


「いいえ、別に大したことじゃありません」


我はカズコをお姫様抱っこして、オリビアと一緒に家へ向かった。


「それで、魔王様はまたプリシアに戻って、あの地を再び支配するつもりなんですか?」


帰り道、オリビアが突然我にそう問いかけてきた。


「 もちろん、もうあそこには戻らないさ」

「どうしてですか?」


オリビアは我を見上げて、眉をひそめた。


「それはここに住む方が好きだからだ。それに、まだ観てないアニメや読んでないマンガが山ほどあるんだ。もし戻ったら、どうやって観るんだ? その時こそ、本当に死んじゃうかもな」

「かしこまりました。もしそうなら、私も一緒にここに残ります」

「好きにしろ」


しばらく歩いた後、カズコが突然目を覚ました。


「えっ! ゼル、どうしたの? なんで私をお姫様抱っこしてるの? 私たち遊園地にいたんじゃなかったっけ?」

「本当に、お前はトイレの前で倒れてたんだよ。どれだけ心配したと思ってるんだ」

「倒れてたの?」

「うん、それでお前を抱っこして家まで運んできたんだよ」

「その間、私に何かしたの?」

「な、な、な、何もしてないよ! 絶対に何もしてない!」


こんなことまで冗談言ってるなんて、ほんとに驚きだ。


「そうだったんだ、そんなに心配してくれてたんだ」

「そうだよ」

「ゼル、大好きだ」


突然、カズコは明るい顔をして、俺をぎゅっと抱きしめた。


俺は彼女が恐ろしい出来事があったとは疑わないように、説得力のある理由を作るつもりだったのに、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。


「分かった、分かった。離せもう少しで息ができないよ」

「だめよ、だめよ」


どうすればいいんだ?  あ、そうだ。


「夕食に行きたくない?」

「えっ! 食事?」

「うん、さっき言った通り、償いとしてお前の好きな料理を食べに行こうと思って」

「そうだったね、忘れてた。じゃあ、行こう」

「はいはい」


ようやくカズコが俺を解放してくれた。そして、俺たちの遊園地の一日が無事に終わった。

カズコが目を覚ましたので、俺は彼女を下ろして、自分で歩けるようにした。


「ところで、この子は誰?」

「はっ! あいつは……」


なんでこんな時にそんな質問するんだよ。

どうやって説明すればいいんだろう? 俺は困って、頬を掻きながら考えていた。


「初めまして。私は彼の妻です」


オリビアがそう言うと、カズコはすぐに俺の襟を掴んできた。


「な、な、な、なに⁉  こんなことどういうことなのよ。ゼルト、説明しなさいよ!説明して!」

「落ち着けよ。く、くるしい……もうすぐ息ができなくなるぞ!」

「えっ! すまん」


びっくりした、死んだかと思った。


「何を言ってるんだ?」って、俺はオリビアの頭を軽く叩いた。

「痛い! そうじゃないの? もうキスしたじゃない」

「え、え、えええええええええええええええ!!!?」


カズコの機嫌はますます悪化して、戦う準備を整えている。まずいな。


「いや、そんなことじゃないんだ。俺、説明する」

「もう、黙れ!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


パシッ、パシッ


「この子は、あんたのクラスメートのイケダさんなのね」

「そうだ」

「それに、さっきのこともただの冗談だから」

「そうだ」


俺の説明を聞いたカズコはようやく理解した。マジで、オリビア、お前はどうして俺にこんな面倒をかけるんだ。


オリビアが急用で出かけなければならないと言ったので、俺とカズコだけが近くのファミリーレストランで夕食を共にした。


夕食が終わった後、俺たちはそれぞれ自分の家に帰った。


それよりも重要なのは、今夜新しいアニメのエピソードが放送されることだ。急いで帰らないと。


俺は猛ダッシュで家に帰った。


最後までお読みいただきありがとうございます!

もし気になった点や「ここを直した方がいい」という箇所がございましたら、ぜひご意見をいただけますと嬉しいです。皆様のフィードバックをお待ちしております。

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