vol.27(3)
すっと吹き込む風
みなさんの心のカーテン
揺らせますように...
スマホでラジオ局をザッピング
そこからは時代を感じさせる洋楽ロック
今の無機質なモノとは違い、時代を超え、燃やすと炭が残るような尖りしゃがれた肉声に
ペンが止まる。
アナログな食い込むドラム、揺らし沈むベース、響き渡るリードギター、
そして妙に生々しい声が鳴きに泣き、狭すぎる空間に耐えきれず、
逃げ場を求めているようでいて、堪らず窓を開け放ってやった。
声は突き刺さるところを求めて、闇に消えていく。
夜空には星は見えない。
代わりに満月にはまだ数日満たない月が、墨汁色の雲の向こうで嘶いていた。
晴れれば暑い、雨だとうっとうしいと悪態をつく輩でも、なぜかこんな月でも趣を求める。
箸にも掛からず、でもそのどこかで一目置かれる月をうらやましく恨めしく思った。
空き地を挟んだ木工所に隣接する材木置き場では外灯がひとり立ち、
切れかけた明りを不規則に点滅させていた。
その周りを蛾とも蝶ともどちらにも属せない羽虫が一匹
何かに憑りつかれたように、体をぶつけ傷つけながら闇雲に飛び回っていた。
その体に黄色いライトが瞬き、糸のような細い雨が優しく包み照らし出す。
誰もいないひとり舞台で乱舞する夜光虫
本能に従い自分に従い、一心不乱の姿が、コマ送りにリピートされる。
わかっているのに誰にも譲れない不器用な様になぜか自分を重なる
唯一の観客の僕がそこにいた。
闇にうちもがき
救われない期待感
それでも手を伸ばし
握りしめ抱きしめようと
天を仰ぐ
あてもなく
信じきれない何かに
すがりつく
他に術があるなら
誰か教えてくれ
小さすぎ何者でもない僕をあざ笑い、捨て置かない月のことを
それでもやはり憎めない自分がそこにいた。




