7 学会についていきました その2
競技場みたいなところにやってきた。
「ふむふむ、今日の学会はランク外か~。案外ランク外の方が意外性のある発想したりするんだよね~」
ランク外?どういうことだろう。研究者に序列でもあるのだろうか。
師匠は入場料を支払って…。学会で入場料?
そして競技場みたいなところの石の席に座る。師匠に固めの電車の席みたいなクッションを渡された。地味にクッションも好きだよね。
「ちょっと待ってて、何か食べ物買ってくる」
野球観戦みたいな印象だなぁ。まぁそれよりは小さくてこじんまりとしているから見やすそうだけど。
「はい、爆裂とうもろこしと、ソーセージパン。飲み物は梅ジュースとぶどうジュースどちらがいいかな?」
「は、はい」
と言って渡されたのはいわゆる見覚えのあるポップコーンの一粒がやたらでかいやつと、ジュース…梅は苦手なのでぶどうを選ぼうとしたらなんかぶどうを飲みたそうにしている…。仕方ない。
梅…口に含むと意外といけた。
というかツッコミどころはそこじゃない。これじゃあエンターテイメントじゃないか!
まぁ周りの雰囲気を見ると活気とかまさにそういう感じなんだけれど…。
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競技場の中央に青髪のローブを纏ったような人物と赤髪の簡単な(皮かな?)鎧にマントを羽織った人物が出てきた。
開始の声が鳴り響く
音の振動を大きくする魔法だよと師匠が教えてくれた。
最初に動いたのは赤髪の方だった。剣、ヨーロッパの直剣みたいなやつを握り、青髪に走り寄る。
「アイスシールド!」
そう言うと青髪の方は氷の盾を生み出した。
「お、いいねいいね。七太郎。氷の盾は固いし水を集められればそこまで難しくない上に、魔力を追加することで密度や面積を増やすこともできるから運用するコストはそこまで高くないよ」
「炎の剣!」
赤髪の持つ剣に火が灯る。そしてアイスシールドに切りかかる。
すかさず青髪の体が光り、魔力が氷に注がれる。
ガキーン!!
完全にアイスシールドが炎の剣を防ぎ、溶ける様子も無い。
「そう、密度が高い氷って案外熱でも中々溶けないんだよね。ただ…」
「ソードダンス!」
赤髪が複数の剣をマントから取り出し、多方向に投げ、操る。
「ああやって、正面以外から攻められるとちょっと弱いかな。同じ体積の水よりは軽いだろうけど、氷の塊は流石に重いからねぇ。
移動にもエネルギー消費が必要になってきちゃうし。完全にオブジェクトとして扱うか、拠点防衛の策が無いとかな。それか…」
剣がアイスシールドの後ろに回り込み、青髪に突き刺さる。
同時に氷も解除される。が、
「フッそれは幻影だ」
青髪は違う場所に姿を現し、「アイスストーン!」
氷の塊を頭から落下させた。
「ぐわーーーっ」
赤髪は倒れる。
会場もなかなかの盛り上がりだ。
「今の分かった!?」
うんうんと頷く。
「何が良かったって最初氷の盾を作った時の、水から奪った熱を利用することで、蜃気楼を発生させる運用の仕方がなかなかねー。また氷の盾の弱点をあえて見せることで隙をつくるのもなかなか良い」
「ソードダンスは決まったと思いました。そのタイミングで氷の盾も解除されたし」
「そうだね、あれが赤髪の油断を誘ったね。そして解除させて水の粒子を分からないように頭の上に移動して再び氷にしてから頭に落とす」
「ほうほうそこまでは見えなかったですね。そしたら逆に赤髪はどうすればよかったですかね」
「そうだね~、物体操作がメインの魔法使いっぽかったから、そもそも氷の盾をうまく使う相手と相性が悪かったんじゃないかな~剣で突破するのは難しいしね。
あの蜃気楼が罠だと見抜いて、距離感が変化しているだけと分かっていれば剣を飛ばす場所を変えるだけで効果があるんじゃないかな」
「なるほど。でも中々戦略がうまかったような気がするんですが、これでも彼はランキング外なんですね?」
「ああ、実は今のトップランカーの一人に同じような魔法の運用の仕方をする人がいるんだよ。熱の移動を利用する感じの。
でも魔法の構築速度や精度、状況判断、応用範囲が何段か上だからどうしても見劣りするかな~。そこまで有名だと、ランカーには対応されちゃってるしね。それが青髪の彼にはそのまま刺さっちゃう」
師匠滅茶苦茶はしゃいでるなぁ。またオタク風女子の風貌だからその饒舌さがなおさら似合うというか。
「まぁ私だったら、地割れを発生させたり、氷の盾を上書きして相手を閉じ込めちゃうとか?それか盾そのものを破壊して戦意喪失させるとか、巨大質量の岩を落とすとか、いくらでもやりようはあるねぇ」
「・・・ハラ師匠、そんなに好きなら出たらいいのに」
「ランカーになると色々しがらみあるんだよ…。順位戦とか組まれるし、公開指導とか上手い人は解説とか。たまに好きなタイミングでやる分にはいいけどそうじゃないのはいやだなぁ」
なんか聞いてると囲碁とか将棋の棋士のイメージ…。
「そういえば技名を叫んでいましたけど、詠唱って必ず必要なんですか?詠唱破棄が技術だとか」
「なにそれ(笑)技名は言った方が盛り上がるでしょ?彼らは魔法使いや科学者であると同時にエンターテイナーだからさ。楽しませることが大事なんだよ」
そう言いつつも、
「でも、そうだな、一つ意味があるとすれば集中や暗示の一種かな」
「それはどういう…?」
「魔法とかとは関係なく考え方の技術なんだけど、決まった言葉を唱える→記憶と直結させておく→毎回魔法の組み立てをしなくても魔法を出せるようになるって感じかな」
「それって結構便利じゃないですか?」
そう言うとハラ師匠は、苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「いやぁ応用が利かなくなるんだよ、コンマ何秒の世界だけれど相手に対応がしにくくね。逆に同じ単語を唱えて違う魔法を出せるならかく乱としては有効かもしれないけど。まぁ学会に出るなら考えてもいい戦法かもねぇ。実践じゃあんまり意味ないし…」
「まだそういう実感わかないですね」
「そうだね、まずは猪くらい狩れるようにしなきゃね」
「確かに…確かに?狩るんですか?」
「魔法使わない相手くらいは、それくらいやってもらわないと」
「そういう基準が…あ、結局学会っていうのはなんだったんですか?」
「えーとね、本来は七太郎の世界の学術の研究会とかと同じなんだけどね、
イメージできるかなぁ。魔法があるからこそってことなのかな?
まず理論を考えて、それが正しいなら、それを現実に表現できるわけね?」
「お、おお、そういうことですか!?自分の元の世界だと、論文発表して、それを精査したりなんかして、正しいと判断。それを実践するには色んな機関と連携が必要なはずなんだけれど、自分一人で結果まで出せてしまうってことですね!?」
いや、正しいかわからないけどそんな感じだと思う!
「そうそう。でも目に見える結果だからこそ、こちらの方がローコストだとか、早く構築できるとか喧嘩が絶えなくてねぇ。それで争いにまで発展するんだけど、でも最先端の研究結果じゃん?」
「確かに」
「こう、分かっている人は見ていて楽しいわけよ。で、お客さんを入れていっそ見世物にしちゃえっていうもので。まぁ第三者の目もあるから研究のどちらが優れているかの証人にもなるわけで」
「でも勝った方が正しいというわけではないですよね?」
「その通り。でもそれが案外人気出ちゃって、スポンサーなんかも付いたからこうして名前だけが残って魔法競技会になったってわけだよ」
「なんか面白いですね」




