6 魔法について学んだらぶっ壊されたんですが(物理)
「今日はビシバシ行くからね。覚悟していてね」
正直師匠のその発言はあまりプレッシャーを感じないなと思う。
なんだかんだで優しいんだろうなぁ。
まぁそう言いつつ8時間は走った後だけどね!やはり体力は大事ということらしい。
ところで、なんかハラ師匠のジャージ、昨日までのやつとデザイン変わってないかな?ジッパーからボタンに代わっている。
「昨日ね、多分これが気になって人に見られてたんだと思う」
「ジャージで?」
「うん、ボタンに変わったからといって…とは思うけど、人は知らないモノほど目線が行きやすいからね」
「そういうものですか」
「うん。じゃあいこっか」
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着いたところはいつもの荒野とは違う方向の山の中だった。
「まず、魔法を使うために必要なものは集中力。とにかくこれにつきる。危機が直前に迫っていても、家族が人質にとられていても、恋人が一秒後に斬首されるとしても。悪魔に魂を売り渡すほどの集中が必要。わかった?」
ごくりとつばを飲み込み頷く。
「これはただの反復練習では身につかない。だからちょっと制限を付けさせてもらうよ」
そう言うと師匠は木の実みたいなのを取り出し、その汁を自分の頭にかける。
「うわっベタベタする」
「お、さっそくお出ましだよ、頑張って」
師匠は身体全体を発光させ上空に舞い上がった。
何がお出ましなのか…?
!?やべぇやつが来た!
目の前に現れたのは顔に傷のある巨大な猪。人の二倍はあろうかという大きさだ。しかも何やら興奮気味で…。
「ちょ、こんなん聞いてな」
それがこちらへ向かってくる!
「集中集中」
上空から声が掛けられる。
「もうやぶれかぶれだ!」
獣なら火に弱いはず、火が出るイメージ、イメージ!
全然身体が光らない!?
あっ、そう言えばそもそも魔力ないんじゃ?
どのみち疑ってしまって集中が切れたから駄目だ!!
振り返ると全力で逃げる!
「ななたろうやーい!魔法はどうしたー!」
「自分魔法使えないんじゃ!?」
「大丈夫大丈夫」
ぜんっぜん説得力ないんですけど?
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「あっ!!」
逃げ回った先には、崖。崖下までも高さがある。とてもじゃないが飛び降りたりとかもできなそうだ。
仕方ないっ、集中!
猪がそのまま向かってくる。この勢いならその場で魔法が地面に落ちようが、火を出せればそれだけで嫌がらせになるだろう。
とにかくそれだけだ、目を瞑り意識する。・・・師匠のように、全身から魔力が胸、肩、腕、手首を通って手に。
そして、相手が到達する一秒前、火がコンロか、マッチかライターで着火をするイメージを持ち、
「出でよ、火!!!」
しかし、何も出なかった。
巨大猪も崖に気付いたようで急ブレーキをする、そして、
ぶつかった反動もあって何とか崖の手前で止まる。
ぶつかったって?自分にです、はい。
「うわぁああああああああ!」
猪に吹っ飛ばされ、地面に真っ逆さまに落ちて行く。
20mくらい落ちたところで地面に激突した。
意識が混濁する中で師匠の声が耳に入る。
「あーあーこれまた豪快だねぇ。ちょっと傷口から血が流れるのを止めてと、
あとは解析魔法、血液生成、ちょっとまずいかな?少し時間もゆったりとして、
あ、まだ意識残ってるね、辛いね、ちょっとお眠り。臓器正常化、骨折を戻して、切れた神経繋いでと…よし、魔力回路生成開始…」
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「おっ、起きた?」
「うん?えっと、夢?」
先ほどのことが嘘だったのかと思うほど体は自由に動くし意識ははっきりしている。
「残念ながら違うね、見る?」
そう言ってハラ師匠が取り出したのは、一枚の写真のようなものだった。
「うわっグロッ!!」
映っていたのは、原形が分からないほどに血まみれになった自分の姿であった。
足はよからぬ方法に曲がっているし、目は虚ろだし、あばら飛び出てない?どう軽く見積もっても重症、いや危篤患者である。
今、普通に動けることを考えるととても自分とは思えないな…。
「ここからどうやって…?というか写真はどこから?」
「見たものを映す道具があるんだよ。じゃないと医療はここまで発展できなかったと思うね」
「・・・師匠って医者なの?」
「最初に魔法使いって言ったじゃん(笑)」
「魔法で治す的な?」
「だから魔法はそんなに便利じゃないんだって。だから、外科手術だよ」
「それは医者では…」
「魔法でできることは限界があるから、それ以上が必要になったら知識を得るのは当たり前じゃん?ああ、もちろん魔法を使わないわけじゃないからね?自然治癒力の増加や麻酔とか外科でできない要因は魔法の方が得意だね。傷跡なんかももうないでしょ?」
全身まさぐっても、今までと変わったところは確かにない。
「医療は医学の学校があるけど、補助として医療魔法も大概学ぶようだねぇ。あと魔法学校でも応急手当的な意味での医療魔法は学んだりするかな」
「へぇ~」
「あ、そうだ手を出して」
「はい」
師匠はこちらの両の手を取る。
・・・今まで意識していなかったが、女子と手をつなぐなんてことは無かったのでなんか恥ずかしい。少し小さな手だ。
なにか、
なにか血管の中に暖かいものが流れてくる。師匠を見ると身体が光っている。
それがこちらの手にも移って、全身を巡って、師匠の手に還っていく。
どくんどくんと、脈が打つのが分かる。もちろん女子と手をつなぐ緊張感などではない。今までに感じたことのない感覚だった。
「ふぅ、うまくいったねぇ」
「今のは?」
「七太郎、魔力回路の移植に成功したから、訓練すれば魔法が使えるようになると思う、多分」
「おお!?た、たぶん…?」
「いやだって、今まで魔力が無い人なんていなかったんだもん仕方ないじゃん!」
確かに一理はあるが…。
「でもなんか、今の様子を見るとやっぱりすぐには馴染んでいかないかー。免疫機能でちょっと反発してるのかな?ちょっと何度か弱らせた方がいいかもしれないな」
なんか物騒なことをぶつぶつ言っている気が。
「っていうか、だったらどちらにしても集中しようがしまいがさっきは魔法使えなかったんじゃ!?」
「そこに気が付いちゃう?どっちみち手術は必要だったんだからさ、だとしたら訓練も兼ねたほうが便利じゃない?死ぬほどの緊張感の中集中する訓練なんてそうそうできないよ?」
そう言われたら何も言い返せないんですが?




