5 魔法について学ぼうとしたらぶっ壊されたのですが その1
「さぁ、今日はいよいよ魔法の実践だ」
気に入ったのか今日もジャージを着ている。
「いやだってなんか楽なんだもん」
そんな返事が返ってくる。というか服飾にはそんな詳しくないんだけど、なんかあの服縫い目が無くない?ユニクロで機械で立体縫製しているとかいう技術の話は聞いたことがあるけど…。
まぁ記憶から抜き取ったとかも言うし、魔法で作ったんだろうからこの世界ではそれが普通なのかな?
そんなゆるい感じで話しているが、こう見えてもマラソンし終わった後である。ただし、今日は半分くらいの距離だったよ。
なんか、超回復というんだっけ?昨日よりも全然走れているし、スピードも上がっている実感がある。
成果が出てきているのが分かると少し楽しくなってくるから不思議なもので、師匠バフがなくとも、ランニングは続けようかなって気にさえなってくる。
「ん~、とは言ったものの弟子を取るのは初めてだからどうちゃんと教えていいかわからないんだよね」
「そうなんですか?じゃあハラ師匠が初めて魔法を使った時とかは?」
「もう、何…ああいや、昔のことだから覚えてないなぁ。どんなのを覚えたいとかある?」
「えーと、う~ん。ファイヤーアロー的なのとか?」
「??」
「こう、魔力で炎の矢を出して、相手に向かって飛ばす感じの」
「え、それいきなり難易度高くない?」
「そうなんですか?」
「ちょっと工程が多いから一段階少なくして見せるからね」
そういうと師匠は人差し指を一本伸ばす。腕から光が発せられると共に、炎が発生し、そのまま真っすぐ延長線上にあった大岩にぶつかる。
当たった岩は黒い焦げ跡がついた。
「おお!」
「今のが結果ね?もう少し分かりやすくやるよ?」
同じように人差し指を伸ばす。薄く淡い光が全身、腕、手、指にゆっくりと収束し、指先にフワッと小さな火が灯る。それがだんだんと大きくなり、目の前の岩に弧を描いて飛んで行った。
「あれ?さっきは真っすぐ飛んでいきましたが、今度はこう、山なりで飛ばしましたね」
「うん、重力があるからね、スピードを落とせば当然山なりに飛ばさないと途中で落ちるよ?」
「・・・なるほど?」
「まず順番に行こう。身体の中に火を発生させるわけじゃないので、まず魔力を手とか指に集める」
やっぱりMPって言ってもいいような気がするんだけどなぁ。でも精神力ではないとなるとやっぱりエネルギー体的な?
「で、魔法の種類にもよるんだけど、火って現象じゃない?だから物質を燃える温度の発火点まで上げることで発生させられるのね」
・・・化学!?
「あと、それじゃあ火が一瞬発生して終わってしまうから、燃え続けられる要素。例えば空気中の酸素と燃料を随時投入、もしくは最初の時点で有機物の固まりかなんかを用意しておく。魔力でも実際の物でもいいよ」
「えっ!?」
「あ、手から発生させるなら、火に対する防御機構も必要だよ?」
・・・
「それを重力操作とか磁力とか方向性をもったエネルギーを射出したりなんかして飛ばす。この辺りは各々得意な方法でって感じかな」
「・・・複雑すぎる」
「だから難易度高いって言ったじゃない?あっ、普通に飛ばすのも矢の形にして飛ばすのもだけど、命中させるために投擲とか弓術とか何年もやらないとちゃんと命中しないからね?特に危険なものを飛ばす場合は注意だよ」
「えっ!?全然簡単じゃないし、物理的にそういう技術が必要って・・・」
「だから便利じゃないって言ってるじゃん?
ああ、裏道としては別の魔法や要素を追加して誘導弾として生成する方法もあるにはあるんだけど…さらに複雑化するからあまりお勧めしない。まー、炎を飛ばすなら火炎瓶を投げたほうがよっぽど簡単で楽かな。訓練する必要もないしさ」
レイアースの光ちゃんはいきなり炎の矢を飛ばしていたけど、アレはそんな高度なことをしていたのか…。そう言えば剣道とかやっていたから弓道にもそういうセンスが…!
「そういえば昔ちょっとした小競り合いがあってさ。大魔法をたくさんの人間で構築している最中に相手方の火炎瓶部隊が壊滅させちゃうっていう」
強い魔法を使うっていうのが必ずしも一番有効ってわけじゃないんだなぁ。
「ちなみにさっきの火を飛ばしたやつは余計な要素が目に入らないように、火の生成は元素の合成じゃなくて純粋に魔力で火を発生させたからね?」
「えっどういうことか分からない!」
「あ~、その辺は古代の体系に魔法と魔術という分類があるんだけど…ちょっと飛ばし過ぎかな」
師匠はやり過ぎたかなと薄く笑う。
「こういう形の無いものだと混在しちゃうね。んじゃちょっと場所変えようか」
そう言うと師匠はしゃがんで背中に七太郎を促す。
前回気絶したからその移動方法は嫌なんだけどなぁとか思っていると、
「あ、そうか年頃の男の子だから、こういうのは嫌かな。そしたら手を引いたりとかの方がいいかなぁ」
年頃とかそういうことではない。
手を引いてとか、途中で腕がちぎれる想像しかできなかった。
「それも恥ずかしいか。んーそしたらこれでいいか」
そう言うと師匠はパントマイムのように手を空中の壁に沿わせる感じにすると、全身から発光した。
次の瞬間、何もなかった空間の向こう側に、別の空間が現れた。
「はい!通って通って!全然大丈夫だけど燃費悪いから!」
「え、えええ、えっはい!」
その別空間に入り、出ると、どこかの裏路地に出た。
ハラ師匠もこちらに来るとその繋がりは閉じた。




