28 幽霊 前編
「あ~喉乾いた~。ジュース飲みたいな。いや、でも歯を磨いちゃったしな…」
そう思いつつ寮の部屋から廊下に出て食堂へ向かう。
フシュー!フシュー!
「・・・ん?」
カタカタカタ
「!!・・・なんの、音?」
廊下から食堂に出た。
その怪しげな音についつい慎重に壁を背にしてゆっくりと進む。
「・・・獣か何か?いざとなったらあたしの魔法で」
手のひらを見てぎゅっと手を握り締める。
大丈夫だ、魔法には自信がある。
この学院の生徒はもちろん皆そうだろうが…
食堂の入り口から自動販売機に近づく。音は少しづつ、少しづつ、大きくなる。
心臓の音が大きくなる。
向こうの怪しげな音を発している存在にこの心臓の音が聞こえやしないかと心配になるほど。
カタカタカタカタカタカタ!!
先ほどより音が大きくなっている!
まさか自分がいるのがばれた!?
夜目が利く方ではないが何もいないとは思うのだが…
しかし正直、もう自販機でジュースだけ持って戻りたい。
でも・・・もしかしたらとも思う、
なにか重要な事件の始まりだったらと。
だとすれば解決することができれば…成績などにも影響するかもしれない。その可能性があるなら、
・・・見逃す手は、無い。
それに…、この怪しげな音の犯人にジュースを入れる音で気付かれないとも限らない。
どちらにせよ様子を見に行くのは正しい…!
正義感や欲で心を満たし、
ひた、ひたと静かに近づく。
食堂の喫食スペースではない…。横目で見ても何もない。
カタン…
さらに奥から音が聞こえた。調理場の方か
ボッ
奥からわずかな光が灯ったのが見える。
ほんの少しだけホッとした。
あいかわらず正体はまだわからないが、調理場の火を使ったのだろう。
それなら得体のしれない恐ろし気なものではなく、相手は人である、と。
こんな時間に何の理由で、というのは未だに想像もつかないが、きっとお腹を空かせた生徒だろう。
だが勝手に魔道具のコンロを使うなとかは言われてはいないが、食料を勝手に使うのは流石に問題行為だと思う。ならばそれを諫めなくてはならない。
丸まった背筋を伸ばし、調理場の方へ。
カツカツカツ
その足音が聞こえたのか、フッ…と光が消える。
火を消したか。だけれどもう逃げられないし、悪いことをしていたらとっちめてやろう。
カツカツカツカツ
「誰だ!」
調理場の中に入って声を上げる。
が、返事はない。
それに…誰もおらずシーンと静まり返っている。
・・・おかしい。確かに、音もこっちの方から聞こえて、
コンロの火もついていたはずなのだが…。
そこまで考えて怖ろしい結論に達してしまう。
まさか…幽霊か?
いやいやいやそんな馬鹿な!?
考えたくもないし信じたくもない!
そうだ、証拠を探そう。何か食料をかじった跡なんかがあればネズミとかの音かもしれないだろうし。
調理場の隅の乾物が置かれている場所を見る
無い、無い、無い。おかしな様子は無い…。
いやいやいや何か変化を探せ、些細なことも見逃すな!
乾物の他に調味用瓶、油なども妙な減り方をしていないか見る。
・・・どうやら疲れていたようだ。
多分何も見ていないし、何も聞いていない。だけど疲労で幻覚幻聴が現れてしまったのかもしれない。ふう、飲み物を飲んで帰ろう。
ボッ
・・・後ろで火が付く音、そして光を発しているのがわかる。わかってしまう
つばを飲み込む。
心臓がドックンドックンと高鳴る。
呼吸も早まり息が苦しい。
それでも、
それでもなんとか、
目線だけそちらに向ける
そこにあったのは
手首から先だけで調理をする幽霊が…




