26 筋肉男と戦いますね
マリはタオルを被り、カガミに持ってきてもらったお茶で暖まる。
「お二人とも、ありがとうございましたわ」
「大丈夫?」
「まだ寒いですけれど大丈夫ですわ」
顔が青白いままなので心配だな…。
「着替えてきた方が…」
「七太郎さんの二回戦が始まるので嫌です」
「これだもんなぁ」
そこへふらりと、同じクラスの外套を羽織ってフードを被った男が顔を出した。とは言ってもその通り顔は見えないけれど。
「ロウさんなにか?」
・・・ロウっていうんだ?
「失礼」
ロウはそう言うと、座ったマリの肩に手を当てる。
マリは最初ビックリしていたが、何か察した様でそのまま委ねた。
「これでいい。では」
「ロウさん!」
マリは立ち上がる
「お気遣いありがとうございましたわ」
ロウは後ろを向いたまま手を上げ去っていった。
マリの方へ向くと、顔に血色が戻ってきていた。
「アイツ入学試験三席のやつだよなー」
「そうですわ、ロウさんという方です。わたくしも初めて声を掛けられましたが、まさか体温を戻してくれるとは・・・」
「どうやってるんだ?」
「さぁ…」
「でもライバル心が強いこの学校でもああいう人もいるんだね」
「今までそんな人としか関わってないみたいなセリフですわね」
マリを見ると、わたくしのことを忘れてないですわよね?みたいな顔をしているけれど、ライバル心が一番強いのはどう考えてもマリだぞ?
「・・・と、さっきのロウだな、お手並み拝見だ」
ロウはバッと外套を脱いだ。
すごい頬がこけていて痩せている男だった。ちょっと心配になるレベル。ちゃんと食べてるのかな・・・。
「始め!」
ロウが目を細め集中すると胸のあたりから光が両手に集まる。
「無詠唱タイプだな」
「ですわね」
詠唱は確かエンターテイメント性と身体と言葉を繋げるショートカット的なやつだったはず!
それが無いということは学会とか興味ないってことかな?
「土弾!」
相手の土が連続して放たれる。
それをよけつつ近付く。
・・・そして先ほどマリにしたように相手に触ると。
「うああああああ」
相手がみるみる痩せていき、ロウの顔が膨れていった。
そして相手の動きが止まり
「勝者ロウ!」
・・・つまり。
「相手のエネルギーを奪う能力ということかしら」
「でもマリを温めていたということは、与えていた?」
「それらを合わせると、・・・エネルギーを移動させるということか!」
「おそろしい魔法ですわね…」
「確かに…」
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じゃあ行ってくる。
次の対戦相手はまたBクラスの人のようだ。
「始め!」
先ほどとは違い、生成した魔法をどんどん打ち込んでくる。
一回戦を見たせいか、数で押した方が有利と思ったのだろうか。
「ふっ!」
ゲートで魔法を後ろに送る。
「なっ、すり抜けた!ということは虚像か?」
相手が後ろを向く。
違うんだけどな。そのまま残りの魔法をゲートの出口を反転させ相手に返す。
「うわぁ!!」
「勝者七太郎!」
…待てよ?必ずしもゲートは手元で打ち返す必要ないんじゃ?
う~ん、ちょっとうまくできるか分からないけど、次のときに考えた事を出来たらやってみよう。
二人がいる席に戻る。
「また勝ちましたわね!それでこそわたくしのライバルですわ」
何目線なんだ!?
「でもラッキーだったよ、相手が勘違いしてくれたおかげでよかった」
「あまり謙遜しすぎるのも相手に失礼だとは思いますが、でも七太郎さんが言うと嫌な気持ちにならないのですわよね」
「マリは七太郎押しが過ぎると思うぞ」
「そんなことを言うと次の試合応援しませんわよ?」
「いや、応援してあげて?」
「次の対戦相手分かって言っているか?」
「分かってますわよ?だからどちらを応援するかと言われたら七太郎さんの方が付き合い長いですもの」
「両方応援すればどっちが勝っても得した気分にならない?」
「勝負の世界は厳しいのですわよ」
「俺は誰からも応援されないのか…」
「カガミ大丈夫、自分は応援するよ!」
「対戦相手を応援してどうするんだ!」
「いいじゃん!一緒に頑張ろう!」
「はぁ…でも手加減はしないからな」
「もちろんだよ」
「こういうところが七太郎さんの良いところなのですわ」
「まったくだ」
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三回戦 七太郎×カガミ
「七太郎!マリも言っていたが俺のライバルだとも思っているぜ!初めての勝負全力で来い!」
「うん、頑張ろう」
「始め!」
「行くぜぇ!『俺の岩ぁあ!』」
ボゴッと地中からアオちゃん先生の頭くらいありそうな岩を取り出す。
「ちゃんとかわせよおぉ!おりゃあああああ!」
体中を光らせそのまま投げてくる。
かわすのはそんなに難しくなさそうだが…
右腕を光らせ手元にゲートを展開!
「ふっ、当然そうするよなぁ。だがそんなに大きいゲートを出っ…ぼっ!?」
「上手く行った!」
MMMMM
観客席マリ
「相手から見えない後方頭上にゲートの出口…アレは避けられませんわね…。
しかも七太郎さん、あんな大きいゲートまで開けるようになるなんて。
決勝までに対策を考えておかないと…」
NNNNN
「ななたろおぅ…しかし俺だぜ!こんな一撃でやられると思ってちゃあ困るぜ!」
そうは言うけど足には来ているなぁ。
「どのみちお前とはこういう戦いになると思っていたぜ!」
カガミは全身を光で満たし、拳を土で覆う。さながらグローブのようだ
「カガミ、手重くない?」
「心配ご無用、鍛えているからな!いくぜい!」
高速で近づいてくる。逃げる。
「おい待て」
「そもそも接近戦じゃどう考えても不利じゃん、てい」
地面から岩を飛び出させる。カガミが踏み壊す。
「利かないぞ!この全身強化は伊達じゃない」
空間収納の入り口開けてと、
「えい」
「ちまちました攻撃してんじゃねぇ!うっとうしい!」
「だって他の魔法全然使えないんだもん」
「だりゃ!」
七太郎が投げ続けてきた石をカガミが掴んで投げ返す。
「ありがとう」
それをゲート通過、カガミの背中に直撃
「がっ!?」
「流石筋力強化してるんだけあってすごい威力だね…」
「きん…にくは、負け…ないっ!」
投石!再び掴んで投げ返してくる!
「くっ!」
ゲート通過、カガミの背後に…避けた!
「うわっ!?」
そのまま自分に直撃しそうになったのを危なくかわす!
「あっぶな…うわっ!!!!」
カガミに服を掴まれた!
「同じ技、何度も食らうと思うかよ!…もらったぁ!」
「くっ」
カガミが土のグローブで殴り掛かってきて…とっさに右手を前に出す
カガミの腕がゲート先に消える。
「えっ?」
「えっ?」
ああ、そうか人体も貫通するんだ!あとこの距離なら!
「出ろ炎。そしてゲート広がれ!」
その場に燃えさかる炎が一気に広がる。
「そこでストップだ」
炎を出した瞬間に大量の水が掛けられる。
アオちゃん先生か…。
「ナナタロウの勝利で」
「くっ…」
カガミは悔しがっている。
でも不服なんて言わない。こういうところかっこいいよなぁ。
「…お疲れ、強かったな」
それでもこうやって握手を求めてくる。
「ありがとう」
「俺に勝ったんだ、次も勝てよ!」
「うん」
「七太郎さん色々新しい戦法使ってましたわね」
「うん、真剣勝負だと色々とっさに出てくるね。そもそも出てこないとバリエーション少ないからすぐ負けちゃうんだけども」
「いいえ、そのアドリブ力も貴方の力ですわ。制御できないことを厭わず至近距離で炎を出して、ゲートを壁代わりに自分の身を炎から守る。あの発想も良かったですわ」
「というかそれくらいしか勝ちの目思いつかなかったしな~。やっぱりスタンダードに強いと強いよね」
「そうですわね。基礎力大事ですわ。ああ…でも一つ気になることがあるのですが」
「なに??」
「ゲートでつないだ先、多分七太郎さんの部屋ですわよね?先生の消化した水って、もしかしてそっちに流れたんじゃ…」
「あ…」
部屋に戻って確認するとベッドと布団はびしょぬれであった。
「よーし、じゃあ今日は俺の部屋に来いよ一緒に寝るか!」
「やだよ体温高そうだし」




