20 ダンジョンに入りました その2
マリが倒してくれたカエル魔獣から魔石がコロンと落ちる。
「さっきと同じ魔石だなー。おっ、少し先からちょっとダンジョンの雰囲気変わるぞ?」
「二層だ」
「二層?地下二階とかそういうくくりじゃないんだ?」
「自然にできたダンジョンに階段は無いぞ?強いて言うのなら、人気のある所ならあえて設置することもあるだろうが」
ついつい現実世界にありそうな異世界モノを想像してしまった。
確かに階段なんて明らかに人工物だもんな~。
「はっきりと変わりましたわね」
「そうだなー水気が少なくなったというか」
「でもこれくらいならまだ大気から十分に集められそうですわね」
会話しているマリとカガミの二人を尻目に先生に話しかけられる。
「ナナタロー、これはできるか?」
と言うと、腕に着けた宝石がキラッと光り、何もない空間からおにぎりを取り出した。
「それは空間収納ですか?」
「見たことあるか?」
「1、2回、師匠のところで。でもその魔道具は無かったと思いますが…」
それを聞き、先生は目を丸くした。服の影響で目しか出てないので、表情の変化に目が行ってしまう。
「まぁいい。これがあればごらんのとおり」
そう言うと今度はバナナを取り出し渡してくる。
「荷物を持つ必要が無く、モノが運べる。これはでかい、練習しておくといい。おそらくナナタローも宝石なくてできるようになると思う」
もらったバナナを食べつつ、
「わかりましたバブ先生」
「・・・バブ先生だと?」
あ、これ怒っているやつだ、雰囲気だけで分かっちゃう。
魔法弾をゲートで逃がす心の準備を…。
「・・・アオだ」
「えっ?」
「アオと呼べ、分かったな」
「は、はい」
「おーい!」
カガミが呼んでいる!行かないとだ!
「さっきのより強そうな魔獣がいるぞ!」
「固そうですわね」
大きさは1mちょっとか?岩のようなごつごつした肌をもったトカゲの風貌だ。
「岩蜥蜴だな」
そのまんまだった!ロックリザードとかそんなのかと思った!
「ではアレは三人で協力して倒せ」
「ヒントは?」
「無しだ。噛まれると致命傷になることもある。それは避けろ」
「分かりましたわ!土属性ならおそらく重いですわね、ならば!」
マリはマーキングを打ち出す。がその水をロックリザードはかわす。
「意外と素早いなぁ」
「当たらないですわね!わたくしの一番速い魔法ですのに…」
「次は俺だ!よっしゃあ筋肉強化ぁ!」
制服でよくわからないがおそらく筋肉を増強したのだろう。カガミが掴みかかる!
が、やはりそれをかわし…
「カガミ後ろ!」
カガミの背後から岩蜥蜴が嚙みつこうとする。
「『水球』!」
面制圧で水球を大量にマリが射出!
「あばばばばばばば」
・・・全部カガミに当たる。
そして岩蜥蜴はすでに範囲外だ。
「カガミ…さようなら」
「死んでねぇえ!あ~痛かったんだが?」
「噛まれて死ぬよりはるかにマシでしょう、それに筋力強化していたのも考慮済みでしてよ」
「しかしどうしようか、素早くない?魔獣ってあんなに強いの?」
「あのタイプは獣と同様、肉体強化に魔素を使っている。
魔獣には、他に固有の特殊な能力を持つもの、魔法を使うものなど幅広い。
特に固有の能力があるものは魔石、素材共に貴重な場合もある」
「褒美も大きいってことだな!」
「しかし、あれはどうしますの?私の最速のマーキングも避けられていますし」
「俺の攻撃も避けたぜ?」
う~んスピード勝負は分が悪いから…罠を仕掛ける?
二人を集め作戦会議をする。
その間こちらに被害が出ないように、且つ相手を逃さないように、アオちゃん先生が相手してくれていた。
・・・こちらが苦戦している岩蜥蜴に対し余裕しか感じられないんだけれど。ちょっと強すぎない?
「よっしゃ行くぜ!来いよ岩野郎!」
正面に立ち筋肉野郎が岩野郎に挑発する。アオちゃん先生からこちらに意識が向かう。そして飛び込んでくる。
「食らいなさいな『水球』」
辺り一面から水の塊が岩蜥蜴に襲い掛かる。
岩蜥蜴はそれを回避するように後ろに飛んだ。着地…ズボッ!?
「つっかまえた」
「ナイスですわ七太郎さんっ!そのまま!」
マリが集中に入る
「うわっ、すごい力だ!」
ゲートで足一本だけこちらに繋げて捕まえたは良いものの、暴れて振りほどこうとする。
ガシッ!!
「力なら任せろぉ!」
「ありがとうカガミ!」
「行きますわ『ウォーターカッター』!!」
高圧の水が岩蜥蜴の表皮を破り、体を切り裂く。
そして力が抜け、倒れる。
「やりましたわ!」
「三人の勝利だぜ!」
「マリ、また使えるようになったんだね」
「わたくしを誰だと思ってらっしゃるの?オホホホ」
「よく考えて戦った」
「先生」
「七太郎さん、よくあのシビアなタイミングでゲートを張れましたわね」
「最初地面を削ってバランスを崩そうと思ったけど、地面固いし、跳ねるから、方向を絞ってもらえればって」
「良い判断だったなぁ!・・・もしかしてこのコンビネーションならダンジョンボスもいけるんじゃね?」
「ちなみにこの岩蜥蜴ってどのくらい強いの?」
「カエルを1とすると2だ」
「ではダンジョンボスはどのくらいですの?」
「種類によってではあるが、70~500くらいか」
三人「・・・」
下振れで最低岩蜥蜴35体分くらい?うわっ死ぬじゃん!?
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表皮の岩が崩れ、魔石を落とす。
七太郎がそれを拾い上げ、
「しかし不思議だなぁ。これが魔獣の素ってことだよなぁ」
「ナナタロー、その観点は良い」
「普通じゃないかなぁ?」
「いえ、正直素材としてしか見てませんでしたもの」
「そうなんだ」
「つまりその魔石が魔獣の本体である。
そこから、魔法を使うのと同じように、
情報を取り入れ、外側に体を作り、生体を模す。
なので魔石になってはいるが生きていると言える」
「それって大丈夫なんですの?魔道具にするのでしょう?」
「むしろそこがポイントだ。情報を取り入れる部分で、
こちらが求める魔法を魔石に何度か流し、記憶させる。
それによって求める魔力回路に変質する」
「それってパソコンのCPUとかAIとかに近いような…?
で、魔道具はプログラミング的な…?」
「七太郎さん、ちょっと言っていることが全然わからないのですが…」
「あっごめん!」
そうだそうだ、こっちの世界はコンピュータどころか電気が無いんだった!
ドタドタドタ!
急に辺りが騒がしくなる。先の方から先生に生徒が一人背負われている。そのグループの他の生徒も走って付いてきている。
「どうした?」
「岩蜥蜴に生徒が噛まれて…!」
「見せろ。手か、指が二本ちぎれているな。これはちょっと無理か…」
そう言うと先生の手が光る。
「これで痛みは和らぐ。あとは任せた」
「はい!」
そのグループは再び走り去っていった。
「下手したら俺らもああなってたのかな?」
「かもしれませんわね…」
「その危機管理は大事だ。彼には運が悪かったとしか言いようがないが、諸君らには良い勉強になったと思う。
もしダンジョン探索をする場合は、事前の情報収集を怠らず、万が一のことを考えて動くようにすると良い。
ただ連携は素晴らしかった、なので臆病にもならず時に挑戦もしつつ育っていってほしい」
アオちゃん先生に育てと言われると妙にむず痒い気分になるなぁ。
「では、ダンジョン探索実習を終える。戻るぞ」




