17 はじめてのともだちができたようです
休みを挟んで次の日もマリは登校してこなかった。
初日みたいに絡まれるのも困るけれど、
いなかったらいないでなんだか視界がにぎやかじゃなくてさみしいような気がする。
たまにカップラーメンとかハンバーガーとかジャンクなものが食べたくなるような感じだろうか。
頭をわしゃわしゃとかく。
仕方ない。こうなったのは自分の責任もあるし、ちょっと声かけに行こう。
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ここか、緊張しながらノックする。
「…はい?」
ドアを開けマリが顔を出した。
!!縦ロールじゃない!?
えっ!?部屋間違えた!?
「あら七太郎さん、どうしましたの?」
と彼女はそこまで言って、自分が寝巻姿だと気付いたようで。
「七太郎さん!男性がいきなり女性の部屋を訪ねるのはどうかと思いますわよ!!」
「ご、ごごごめん…!」
壊れた人形のように頭を下げまくる。
「まったく、しょうがないですわね」
あきれたかのように言う。決闘のこと怒ってないかな。
「…大丈夫?」
「大丈夫ですわ。ああ、そういえば休んでしまいましたわね。明日からきちんと授業に出ますので安心してらして」
「良かった」
「貴方に心配させたのは申し訳ありませんでしたわね」
「い、いや、こっちもなんか変なこと言っちゃって…」
「いえ、あの時、あなたの言ったことは正しかった。…おそらくあのまま、天狗のままで時を重ねていたら、いざという時に取り返しのつかないことになっていたかもしれません。だとすれば感謝しかないですわ」
「そっか」
ホッと胸をなでおろす。
ふと部屋の中が目に入る。ベッドの脇にぬいぐるみがいくつもある。
「あっ、ぬいぐるみ」
「ちょちょっ!何レディの部屋を覗き見してるんですの!」
「わっ、ご、ごめん」
マリは顔が赤くなっている。令嬢だってぬいぐるみ好きでもいいと思うんだけどな。
「でも女の子だしぬいぐるみ好きでもいいと思うな。それにその髪型も可愛いと思う」
「なっ…急に何を言ってらっしゃるんですか!これは貴方が突然訪ねてきたから準備する暇がなかっただけで。もう入りますわよ!」
マリは部屋の中に入る。
「あ、うん…なんかごめん」
ドアを閉めた、と思ったら、顔を少し出して。
「…また明日」
バタンッ
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次の日、日課のランニングが終わったタイミングで声を掛けられる。
「七太郎さん、ごきげんよう」
いつもの完璧なマリさんである。
「ああ、おはようマリさん」
「マリでいいですわよ」
「おはよう、マリ。こっちも呼び捨てで…」
「わたくしはわたくしがそう呼びたいから呼ぶのですわ。お気になさらず」
こういう強引な感じは貴族っぽいね。
「せっかくだから一緒に登校しましょう」
「えっ、もしかして待ってたの?」
同級生と登校イベント!?幼馴染では無かったはずだけど!?
「ちちちちがいますわ!たまたまですわよたまたま」
そういうことにしておこう。全然ここ通学路じゃないもんね。
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「ウォーターカッター(笑)さんちぃーっす」
「ごきげんよう、カサイさん」
マリは同級生に対し、美しく丁寧にお辞儀をする。
「なんかバカにされてない?」
「そうですわね」
「そうですわねって、嫌じゃない?」
「いいえ?彼らはただ見ていただけですわ。そんな彼らの言葉はわたくしには響かない。
馬鹿にしていいのは目の前で戦って勝った七太郎さん貴方だけですわよ」
「いや…勝ってないんだけどなぁ」
「いいえ。こちらが無理を言ってお願いした上に温情までかけられて…どのような罵詈雑言でも受けますわ。お好きに」
そう言うとマリは申し訳ありませんでしたと両の手をおなかの上で揃え、頭を下げたままこちらの言葉を待った。
最初見た時は悪役令嬢か?とも思ったけど、知れば知るほど真っすぐな性格してるよなぁ。
「えっと、じゃあ魔法がまだうまく使えないから、練習に付き合ってくれるかな」
マリはその言葉にきょとんとした顔をした後、
「も、もちろんですわ!そんなことで良ければいくらでも!」
おおぅ、思い付きで云ったのにこの食いつきよう…。
「んと、もしかしてマリ…友達いない…?」
「そそ、そんなことありませんことよ!」
「だって他の人と話しているの見たこと無いし」
「・・・」
「決闘が決まってからもなんか絡んできてたし」
「・・・」
「面倒見もなんかいいしね」
「しゅ、主席だから距離を置かれているのかと…」
そこじゃないような気が…。
「ウォーターカッターさん(笑)水出して水!」
「ごきげんようサワさん」
再び美しく丁寧なお辞儀。
でも相手はそれが気に食わなかったらしく、
「あーっ、そこの男だってね、大した攻撃もせずに口だけで勝ったんでしょう?あ、負けたんだっけ、キャハ」
パシンッ!!
周りの全員がこちらを注目する。
「な、なによ!叩いたわね!」
「わたくしを馬鹿にするならいくらでもなさい!でも七太郎さんを馬鹿にすることだけは許しませんことよ!」
「…底辺同士お似合いだわ」
真剣なマリの表情が砕け、
「あら、でも残念ですわ、わたくしこう見えても主席ですの。もしご興味があれば決闘を申し込んでくれても良くってよ?」
「…覚えてなさい!この金髪縦ロールが!」
行ってしまった。
「あいつ…」
「いいんですわよ。どうせ口だけですもの。人を馬鹿にするのだけは一級品ですわね」
やっぱり全然友達いないんだな…。
「そしたら、自分が君のここでの初めての友人てことになるのかな」
「え…」
一瞬フリーズした後、マリの顔がボッと赤くなる。
そっぽ向きながら。
「そういうことにしてもいいですわよ」
さっきの言葉、そのままブーメランで刺さってるよ。口だけ素直じゃない。




