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魔法文明論  作者: ゼリー
二章 純水と宝石と闘争の日々
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マリと水


 マリは自室に引きこもっていた。毛布をかぶり枕と大好きな人形を抱きしめて。

 そして目をはらしながら、

 ・・・考えていた。





 こないだの決闘以来、水が上手く出せなくなってしまった。


 多分、見限られたんだと、思う。


 自分が優秀だということに、

力に溺れて、きちんと向き合ってこなかった罰だ。



 …今一度、一つ一つ積み重ねなければならない。



 魔法とは何か

 水とは何か



 …水とは…常にそのままの状態ではいられない、

手ですくっても零れ落ちてしまうもの、

重力に逆らわず。

岩盤で遮られ、

いずれ深きところで一つに固まる、

そして力が無ければ消え失せてしまう儚きもの。


 彼の言ったことは正しい、

私は水そのものが強さだと思った、

でも周りの力に支えられてようやく本来の力を発揮できる、

上手く使えば何倍にもなるほどに。


 重力、圧力、何でもいい、

認めることから始めよう、

それで水を理解できるならば。


 …それがこの世の真理だから。



 うん。それと…自分の原点の再確認。

 水への理解と自分を理解して、それで合わせれば、正しい流れに戻るはず。

 そう、私の魔法の最初の記憶。



 …私の村は貧しかった。

 毎年のように川が氾濫する土地、

かろうじて安全な平たい高台に家が集まっていた。

 急峻な坂に囲まれて、川沿いの平らな場所に作物を植える、

そして流される。かろうじて育ったものを皆で分け合って食べる…。

様々な工夫を凝らしてはいたが、毎年のように皆で落胆していた。そんな村。


 水なんか…嫌いだった。


 ある時、旅の魔法使いがやってきた。

 彼女は言う。正しい流れじゃないねぇと、

言っていることはわからなかったが、何か良い案を提示してくれるのかなと思った。

 そして、危ないから今日は外を絶対に見てはならないよと村人全員に言い含め、

その時がやってきた。


 でも私はそんな言いつけを破り、屋根に上って外を見ていた。

 奥の山の方からまばゆい光が輝く。

 そこから何頭かの水の竜が私たちの村の横を過ぎ去っていった。


 …その魔法は美しく、自然の一部のようで、その水の映像が流れるように私の中に焼き付いた。


 その年から、氾濫は多少増水する程度に収まるようになり、

私たちの村は豊かになった。


 その水を、それからずっと、私は、目指している。


 うん。

 多分、

これで大丈夫。




 ベッドから起き上がり、地面に立ち上がる。

 木の床がわずかにキシッ、と鳴る。


 足を少し広げ、両手を下げて、目を閉じ、何度か呼吸を繰り返す。


 そこから手の平を外側に向け、少し脇をひらく。


 全身に血流、魔力が巡っていることを意識する。


 腹、胸、肩、腕、手、指、あと足先から脳天までの身体全体の魔力を認識。


 そしてそれをゆっくり、ゆっくりと指先に集めていく。


 その魔力で大気中の水分を自分に寄せていく。湿度、じんわりと自分の周りに重い空気が集まるのを感じられる


 それを集めて、集めて、凝縮して、指先から…一滴、二滴


 水がしたたり落ちていく。


 床に落ちたそれを宙に跳ね上げる。



 手のひらの上で水はヒトガタに形を変え、ぺこりとお辞儀をさせる。



 マリは笑う


「おかえり」

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