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魔法文明論  作者: ゼリー
二章 純水と宝石と闘争の日々
16/37

14 まだ初心者でしたね

 魔法初心者の朝は早い。


 まだほの暗い時間、朝日が昇る前に起きる。

 ・・・ああ、そうだもうハラ師匠の家じゃないんだった。

 ほんの二日程度しかたっていないが、懐かしく感じる。

 飾り気のない部屋、何を考えているか分からない時もあるけど、いつでも穏やかな少女。


 ・・・いやもうホームシックか!?

 元の世界から来た時もそんなことなかったのに。ってそれはそれどころじゃなかったからなんだけど。

 ああ、いかんいかん準備しないと、時間が無くなる、着替えよう。



-----



 ハッ、ハッ、


 そうそう昨日もだったけど師匠の回復がないから、授業のことを考えると少し抑え気味にして体力を使い過ぎない方がいいな。

 んーまだいまいちピンとこないけど、回復系の魔法を練習しといたほうがいいかも。あの体力回復は便利だし。

 乳酸を散らすとかいうよね?体内の分子を分解するイメージかな。まぁ後で考えよう。



-----



 ふぅ、四時間か。ちょっと物足りないけどこの辺にしておこう。最後ラストスパート掛けたくなったけど授業で寝てしまっては本末転倒だし。さぁごはんごはん。


 ザッ


「ごきげんよう七太郎さん。こんな早くからランニングですの?貴方体力づくりよりも魔力の使い方のトレーニングをした方が良いのではないかしら?」

「おはようマリさん、いやこれは日課で師匠からやった方が良いって…」

「そう・・・何でも良いですけれど決闘に恥じない戦いをしてくださいまし」


 そう言ってクルっと優雅に身を翻し、髪をなびかせて去っていった。


 文句を言いに来たのかアドバイスをしに来たのかわからないな…。

 でも最初の頃のギスギス感はなくなった気がするなぁ。



-----



「今日は魔法実習を行う。火、水、土、使えるものは風系統も使い、離れた的に当てるように」


 お、これは異世界テンプレの入学試験とかでやるやつだな!ちょっとワクワクする。


 例の赤ちゃん先生が見本を見せる。

 一瞬手が光ったかと思うと、即座に射出、しかもマリさんの水球よりもスピードが格段に速かった。50mくらい先の的のど真ん中だし…。

 しかも、きちんと火、水、土、極め付きは手のひらサイズの小さい風の渦を作り、分かるように木の葉を舞わせて射出。

 あれ、初心者の自分でもすごい難しいだろうってことくらいわかるぞ…。

 そういえば師匠も小さい竜巻出してたな。風って言うとやっぱり竜巻とかになるのかな?


「オーホホホ、わたくしには練習にもなりませんことよ!」


 マリさんが水球を出し(こないだみたいに水道から水溜めてなかったよ!)すぐさま射出。

 きちんと的に命中した。しかし満足いかなそうな顔で、


「やはりまだまだ先は長いですわね」


 先生との差を感じているようだ。確かに光り方を見ても練り上げてから出す流れ、球の速度の両方とも即座にとはいかなかった。

 しかし、火や土なども出して的に当てていた。水ほどスムーズではなかったにせよ。


 他の人も加わる。

 ちゃんと出せるが的に当たらない者、そもそも一種類の属性しか出せない者、手前の10mくらいの的は何とか当たる者。様々である。

 そう考えるとやっぱり主席と言うだけあってマリさんはすごいんだな…。


 よしっ、自分も頑張ろう!

 全身の魔力を感じ、腹から胸を通って肩、腕、手と移動、そこから…火!


 ボッ

 火が出た!…そして下に落ちる。


 サッ、なんとか足に落ちるのは防いだ!

 ん~、なんでだ?ちょっと他の属性をやってみようか。

 水!

 ふよふよと一瞬動いたけど、ポタポタしたたり落ち、形を保てなかった。

 土はどうだ!

 地面からボコッと土を動かし、そのまま飛ばす。2,3m先で落ちた。しかもなんだか右腕の筋肉が痛い。

 風!

 扇風機のイメージで正解!風が出る…風が出ている…?

 うん、風は風だな…。


 う~んもはやどこから取っかかればいいのかわからない。


「…七太郎さん」

「あ、マリさん」

「貴方、そんなことで決闘は大丈夫なのかしら?」


 文句を言いに来たというより、子供の心配しているような感じの表情だ。

 まぁそうだよなぁ…。でもできないものはできないし…。


「もう少し性質を考えなさいな、火は現象であって物ではないんですのよ?だったら飛ばせる形にすればいいですし。水は物質ではあるけれど液体ですので考え方は近いですわよ」


 なるほど…、あっそういえば師匠も言っていた!

 火は現象だからって。そして火炎瓶投げた方がコスパがいいとも…。火炎瓶…火炎瓶か、何かいい発想が出てきそうだけれど…。


 ちょっとただこの授業をこなすんじゃなくて発想を考えた方がよさそうだ。鍛えるためにはこの練習も必要だけどね、一日では間に合わないし。


「マリさん。ありがとう。ちょっと考えの方向性を変えてみる」


 その言葉はちょっと予想外だったようで、


「い、いいえ、どういたしましてですわ?」




-----


 授業が終わって、他の人の魔法を見ててもやっぱり自分はまだまだだなぁ。

 まぁ魔法使えるようになって数日だし、ずっと小さい頃から接していた人たちはやっぱり違うんだろうな。

 っていうか、その中でもこの学校ってトップクラスってことでしょ?

 ・・・大丈夫かな?


 とにかく、練習あるのみだ!寮に戻っても実際問題やること無いしな~。頑張るぞー、おー。


-----



 ふぅ…。

 学内のトイレで用を足し、洗面台で手を洗う。

 …練習をしてみてはいるものの、このままではどうこうできる気がしない。

 いかんいかん、後ろ向きなのはダメだ。一番うまくないのにやる気まで出なくてどうする!

 顔を洗い、気合を入れ直す。鏡を見て自分はできると言い聞かせる!


 ん・・・?鏡?そういえばハラ師匠の家には鏡は無かったからこの世界にあるのかな?って思ったけれどあるんだなぁ…。

 その時フッ、と何かが下りてきた。そうか、あれをうまく使えれば…。

 よし早速試そう!と練習場に駆けていこうとしたが、

「ああっ、水出しっぱなしだった!」


 水道を止める。溜まった水が渦を巻き、排水されていく…。

 それを見てピンときた。・・・なるほど、これを使えば窒息対策が。これも要練習だ!


 カツン、カツン


 トイレの外で人が歩く音がする。


 もう誰もいないと思っていたので、びっくりした。

 というかよく分かってないけれど、勝手に残って練習しててよかったのかな?

 おそるおそる、外を覗く、が誰もいなかった。ちょっとだけほっとした。


「練習練習!」


 再び訓練場に向かった。

 


-----



 あーっ夕食の時間過ぎてた!

 ちょっと集中しすぎた!げ、授業終わってからいつの間にか五時間も経ってる!


 食堂へ、働いてるおばちゃんに声を掛ける。


「すみません、もう終わっちゃいましたか!?」

「ああ、きみがナナタロー君?さっき女の子が来てね、一人夕食に遅れてくるからとっといてあげてほしいって言ってたわよ!」

「えっ、だれだろう…」

「すごい派手な子」


 一発で分かった!


「いつもきれいな姿勢でご飯食べてるのよ、感心しちゃう。あなたの彼女かしら」

「い、いやそういうんじゃ…」


 というかご飯盛りすぎだけど!?


「いいわね~青春って」


 止まって止まって!師匠といい、なんでこの世界の人はご飯めっちゃ盛るの!?


「はいどうぞ、ああ、私は帰るから食器は適当に洗っといてね」

「は、はい!」


 ・・・富士山盛り再び。

 明日走れるかな?




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