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魔法文明論  作者: ゼリー
二章 純水と宝石と闘争の日々
14/37

12 まんまと絡まれましたよ?


 教室にやってきた。

 しかし、よくある学園ものの転入生みたいに自己紹介でもするのかと思いきや意外とそうでもなく、淡々とそこに座ってという感じで授業が始まる。

 変に注目を集めるよりはいいかと思うことにする。


 でもなんか思っていたものとは違っていて、高校のクラスというよりは大学の講堂というような感じである、席も自由みたいだし。

 チラチラと周りを見るが、なんかやばそうな人が何人かいる…。

 宝石の指輪をじゃらじゃらつけている人や(魔道具かな?)、わずかな隙間から制服を身に着けているのはわかるものの、外套のフードを被って姿を肌がほとんど見えない人。あと別方向にやばいのが金髪縦ロールで制服にフリルを付け改変しているお嬢様風の人。あれはきっと悪役令嬢に違いない、絡まれないようにしないとだ。

 と言うか自分がよくわかってないだけで、あの格好が貴族の中ではトレンドなのだろうか?そもそも貴族がいるかもはっきりしないけど。

 まぁでも制服をちょこちょこ改造している人は案外多いように思う。さっき案内されている時に廊下ですれ違った人たちもやっぱりそういう人多かったし。だとしても縦ロール嬢は改編しすぎだと思うけれど!


 そうして授業が終わり、放課後になったところでその金髪縦ロールの人に声を掛けられた。

 頭の中を読み取られたか!?


「ちょっとそこのぼーっとした顔の貴方?」

「自分?」


何か気に障ることでもしただろうか?

座学を黙って受けていただけだと思っていたが…。

あ、もしかしたら途中鉛筆を床に落としてしまったのが気に障ったのかもしれない!

先ほど気を付けようと思ったばかりなのに!


「そうですわ、私はマリですの。ちょっと今から付き合ってもらえるかしら?」


 女の子に誘われた!見た目の奇抜さを除けば結構可愛いと思うし女の子らしいスタイルだし…。だがそう手放しでは喜べないピリピリした雰囲気を感じる。

 やはり悪役令嬢、いじめのイベントかな?というか喋り方もなんかTHE☆お嬢様っていう感じだ。

 ついていっていいのかな?というか曲がりなりにもクラスメイトなのだし、ここでの正しい所作もわからないので、ついていく以外の選択肢しかないのだけれど。


-----


 招かれた先は校舎裏の誰も来ないような草っぱらだった。

 これアレじゃん!番長と対決するようなイベントじゃん!


「ちょっとお聞きしたいのですけれど、貴方はなんですの?」


 そう言われビシッっと指をさされる。

 いや、なんですのと言われてもこっちがなんですのですよ?

 先端恐怖症の自分は、指先の延長からちょっと避けておく。


「あ、どうも七太郎ですよろし…」

「私たちは厳しい試験を潜り抜けてようやく魔法学院に入学できたというのに。こんな時期に編入しますだなんて、はいそうですかと黙って仲良くできるほど人が出来ていないですわ!」


 なるほど。どんな試験だったかはわからないけどポッと出のやつが来たら文句も言いたくなるかもなぁ。確かに一理はある。けれど…

 彼女はやる気満々なのか、上着を脱ぎ、Yシャツ(っぽいけどこっちの世界ではなんていうか分からない)になる。

 そして近くにあった水道から水を出し、自らの足元に浮かせる。


「せめて縁故だったり、裏口だったりしないだけの実力、私に見せてごらんなさい!」

「ちょ、ちょっとまって…」

「行きますわよ!『水球!』」


 こぶし大くらいの水の塊が3つほど足元の水から分離し、それがパチンコ玉のようにこちらに打ち出される。


「ええと、えと出でよ火!」


 手から小さい火が出現し、

…足元に落ちる


「あっっつうううう!!」

「妙な動きでかわしますわね!?」


 熱さで飛び跳ねたおかげで水球をよけたようだ。


「でもそれだけではまだ認めないですわ」


 一瞬相手の指が光り、

「わっ」

 額に何か…。水滴?痛くないし、攻撃じゃないよ、ね?

「『囲え、わたくしの水!』」


 胸のあたりから光が両肩。両腕に移動し、残りの水、全てが塊となって両手から飛ばされる。 

 慌てて顔を守るが両腕の防御をすり抜け、顔面にあたる。


 が、別に痛くない。


「がぼぼ?」


 えっ、水が、水が顔から離れない!


「おーほほほほほ、さあ、対処してごらんなさい」


 対処と言われても分からないんだけど!?えーとえーとヤバイ、早く!肺の中の酸素が無くなっていくのを感じながらその残り時間に焦りを生じる。


 その時ハラ師匠の言葉を思い出した。

 生き延びることを最優先に。手札をどう使うか考えろと。

 そして悪魔に魂を売り渡すほどの集中力を


 顔の周りから離れない水。自分の使える基本魔法。火水土風。駄目だ威力も弱いし出すことしかできない。それ以外の発想だ。考えろ。他、前に見た漫画で全部水(漫画では酒だったが)を飲むという方法も。いや、息が切れるまで持たない。

 じゃあ、水じゃなくて自分が息できればいいのだから…!

 イメージはできた、実際できるか!?いや、やるんだ!!


 七太郎は集中して全身から魔力を顔に集め、

 口の周りとすぐ近く、目で見える場所、その別の座標を、一つにつなげる!!



 ・・・



 はぁはぁはぁ…土壇場だったけど成功した…。

 ゲートやゲート地下を覗き見た時の師匠の動作、あと師匠のどこからかものを取り出す行為。

 場所と場所を繋いで穴をあける。見様見真似だけどうまくいって良かった。あっ、口の周りだけのちっちゃい穴だけど、すごい勢いで体の中の力(多分魔力だと思う)が減っていくのが分かる!?とりあえず全然魔法使えないって理解してもらわないと…。


 七太郎が金髪縦ロールのマリに声を掛けようと一歩踏み出すと

「がぼぼ!?」


 水が口に流れ込む!!水は着いてくるけど開けた空間がついてこない!

 やばい、また溺れ…、と思ったら顔の水がザバァッ、と地面に落ちる。

 ああ、勘違いか何かだと分かってくれたのかな。

「ごめん、魔法を解いてくれてありが・・・と?」


 彼女の方を見ると、水で濡れて下着が透けて見えて…。


 ・・・


「ごめん!見てないから!運動しやすそうな下着だなんて思ってないから!」


「・・・るしませんわ」


 目をそらしてはいるが、怒気をはらんでいるということだけは何故かわかる。


「裏口入学だけじゃ飽き足らず、女性に対してなんて卑劣なだまし討ちと行為!絶対許しませんわ!」

「ええ…」

「七太郎さん。あなたに決闘を申し込みます」

「決闘!?」




MMMMM



彼女視点



 『囲え、わたくしの水』を撃ってから反撃をしてくる様子が無い。

 相性が悪かったかしら…?


 魔法の世界というのは知らなければ対処できないものもあり、

 また知っていても、相性や熟練度で突破できないことなども良くある話だ。

 どれが理由かはわからないけど苦しんでいる様子を見て、

編入を理不尽に感じてしまったからといって、やり過ぎたかなとも思う。


 もがいている動きが止まり、一瞬光ったかと思うとそれも止んだ。

 やばっ死んだかしら。


 慌てて近付く。とかすかに動き…水を口から噴射した…。

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