9 魔道具も使ってみました
よし、今日こそは猪に半殺されないようにするぞ!イメトレもしたし!
「あ、今日はやらないよ」
いきなり出鼻をくじかれた。
「え、なんでですか?」
「だいぶ魔力循環ができるようになってきたし、一度大事なことを教えとこうかと思ってね」
「なるほど?」
「外には行こうね」
邪魔が入らなそうな広く、岩に囲まれた場所に来た。
「まず、相手と相対した時、大事なことってわかるかな?」
「大事?・・・相手を観察するとかですかね」
「それもすごく大事なんだけど、一番は防御をすること」
「防御…」
「すぐに襲ってこないかもしれないけれど、一瞬で目の前に魔法を撃ってくるかもしれない。だから観察よりもまず防御。
それができれば考える時間が生まれる」
「確かに学会の選手もまずアイスシールド出してましたね!」
「ま~学会は見た目も大事だから防御だけじゃ正直面白みは無いんだけどね、でも守れることが前提だから。
そんでね、君だけにいえることなんだけど…」
なんだろう?
「元々魔力回路が無かったじゃない?実は体内は魔力循環の影響で他人が操作したり、魔力を割り込ませたりできないんだよ」
「えと、つまり…?」
「その天然の防御壁、簡単に言えば血液型みたいなものかな?同じものじゃないと体内のロックを外せない的な。
でも七太郎の場合はそれが無かったからね、例えばだけど」
そう言うとハラ師匠はどこからか風船みたいなものを取り出した。
「君だけには内部からこう」
パァン!と破裂した。
「破裂させたり内臓を魔法で抉り取ったりできる状態」
「ちょっとゾワッとしましたが、魔力循環できればそれが防げると?」
「大体その感覚で大丈夫。慣れてくれば自然とできるだろうけど、まだしばらくは気を付けて。特に魔法使いとは戦闘にならないようにね」
そんなことが恒常的に行われるのかな?ちょっとこの世界が心配だ。
「で、それが分かった上でここからが応用ね。体外でもその魔力を放出して操作する。するとね魔法の干渉を防げるの」
透明な膜(直接は見えないけれど)が腕と共に薄く光っている。
「おお!」
「ただ、体外に出ちゃうと相手の魔力操作もぶつかり合うから、魔力の内部により強い魔力を弾かせれば」
透明な膜の光が散逸される。
「このように防御癖を突破できる。これに関しては魔法以外には有効じゃない、ならば物理的な攻撃にはどうするかというと」
「わかった!アイスシールドみたいに魔力を変換させる!」
「そうそう。物質として発生させることで強さや範囲、特性などが現れる。これは各自得意な魔法で構築するのが一番良いね」
「なるほど。そこに有利不利があるんですね」
「うん、ちょっとやってみせようか。最初だから代表的な属性でね。まずは火」
炎が師匠の前に出現する。熱いぞ。
「これは防御としては物質があるわけじゃないから、熱いだとか、相手から見えにくくするだとか、あとは水などでも少量であれば蒸発させられるとかかな。どちらかというと火は攻撃の方が向いてるね」
「確かに防御という感じではないですね」
「じゃあ次は水、出せるかな?大気中の水を集めるイメージ。まだ難しいかな」
「ぬうう」
両手を前に出して魔法循環させ、大気から水分を集める。
周りの湿度が上がったような気がするけど、水は出現しない。
「お、でも魔力は動いてるね、じゃあこれは動かせる?」
師匠がコップに入った水を出した。すぐに色んなとこからものを出すなぁ。
水を魔力で…少し動かせた!がコップから零れ落ちる。
「そうそう、重力があるのね、だから難しい」
「どうすればいいんですか?水を浮かすには…風とか?」
「それは上級者にもなれば可能だけど、浮かすだけなら案外簡単。重力って地面に向かって働く力でしょ?だから、持ち上げるように力をかければいい」
逆向きに重力?とか透明なお玉で浮かすイメージとか、深く考えすぎてた。そっかそれでいいのか。
ちょっと水が浮かんだ。がぬるっと零れ落ちる。
「おお、浮かすまでは意外といけた」
「でも御覧の通り水は流体だから、案外操るのが難しいから要練習ね。じゃあ次は地かな」
師匠が少し念じると、地面から壁がせりあがってきた。
「地面のいいところは、他の属性と違って、もう防御壁として物質が完成しているところ」
「確かに、加工しなくても運用できそうですね」
「うんうん。ただ一つ欠点があってね」
「なんでしょう?いいように思えますが?」
「重いんだ。要は地面からこれだけの土の塊を持ち上げるわけでさ。これの移動にエネルギーを相当使う」
「魔力消費的な…?」
「それでもできないことは無いけど、エネルギー効率を重視するなら、筋力を消費して魔法で動かすのが一番いいね」
「・・・ああ、それでマラソン!」
「そんな感じ。だから土系統の魔法を使う人間は大体マッチョ…(笑)」
「なるほど…」
「アイスシールドの人みたいに、水や氷も量が増えればもちろん同じことだけどね、まぁ分解して移動して定位置で合体させれば燃費は少なくて済むかな、ってかなり説明多いよね、ごめんね」
「大丈夫です。そしたらあとは…風とかですかね?」
「風は…ちょっと難しいけど…聞く?」
「…一応」
「まず発生させてみよっか」
七太郎、イメージするがいまいちピンとこず。
空気中で両手を押し出したりする。違うな…。あっ、うちわのイメージかな!
うちわであおぐ感じで風を送る。できた!だとすればもっと強くするには…扇風機だ!回転のイメージ!
師匠の髪がなびいている。
「良い感じだね。でもちょっと聞いて、確かにこれは涼しいんだけどさ、攻撃、防御としてはどうかな」
「防御はもっと強くできれば魔法によっては逸らしたりできるかな?でも攻撃か…」
「そうなんだよね、強い風を送れても相手を押し戻す程度で、なかなか難しいんだよ。だからもう少し魔法に慣れてからがいいかな。一例だけ示しておくと」
師匠の指先から始まり、竜巻が一直線に走り出す。
小さいけれど威力は十分で、進路上の木の葉っぱが全部とれていた。人間にやったらアレ禿げるな…。
「これを巨大化させれば戦闘でも十分使えるよ。風だから方向を制御するの難しいけどね」
禿げさせる技じゃなかった!
「ざっとこういう感じ。慌てなくても良いけどまずは防御壁を構築してみなって話しね。
あと学会ならまだしも、戦争や魔獣なんかが絡むとそもそも一対一じゃないから、とにかく生き延びることを最優先に。手持ちの札をどうやったら使ったらいいのか考えていったらいいよ」
「勝つより負けない(死なない)ことが大事と…」
「じゃあ、今日の授業はおしまい!そしたらちょっと頼みごとをしようかな」
「なんですか?」
「んとね…」
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「ちょっと強すぎかな」
何をしているのかというと、料理をしています。
正確には料理のための魔道具を扱う。というのが正しいかな?
魔道具のコンロの火を調節しているんだけれど、これがまた難しい。
元の世界のコンロならつまみで強弱をつけられるのだが、この世界は魔力で火をつけ、魔力で調節する。
地味に繊細な操作が求められる。
しかもハラ師匠の食のこだわりか、すっごい細かい。
0、1弱くとか、単位も良くわからないし、単位が分かったとしてもまだそんな操作できない。
まぁ多分魔力操作の訓練も兼ねているのだろうと思う。
結果、それなりに食べられるものはできたと思うけど、ところどころ焦げたり、生焼けの部分もあったり申し訳なかった。
「最近のコンロの魔道具では手動で調節できるものもあるけどね、でもこれに慣れちゃってるし、もっと繊細に強弱付けられるし」
ということだそうだ。
そんな繊細なものを魔力赤ちゃんに操作させるのは正直難易度が高いのでは?と思ったりもする。いかんいかん訓練だ。
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食事後、せめてもと思って食器を片付けようとする。
「大丈夫だよ、私がやるよ」
「でも、今日は申し訳なかったから・・・」
「気にしない気にしない。作ってくれてありがとうね」
神様か…!
と思ったらすぐに戻ってきた。
「やっちゃった。どうしようか」
「何がです?」
「材料を出して温め忘れたものがあった」
「別にいいんじゃないですか?」
「なるべく早めに食べた方が良いし、あと栄養的にも」
栄養も気にしていたの?すごいな…
「こんな時に電子レンジがあればよかったんですけどね」
「電子レンジ?」
「あー、えーと分子振動?そういうので内部から温める機械で」
「分子振動は分かるよ?やっぱり電気?」
「電気ですね」
「電気すごいなぁ。でも分子振動ならできるよ」
「師匠凄いな」
「熱を発生させるくらいのイメージしかなかったよ?なるほどね、食品を温めるのに使うのかぁ、考えたこともなかった」
「普通の炒め物とかともまたちょっと毛色が違うんですけどね。でもまぁあれば役に立ちますけどねぇ」
「まぁとりあえずちょっと試しにやってみるよ」
「はい」
「わかったー」
師匠は台所に行く。
・・・ボンッ!!!!
「!!?」
慌てて台所へ
「師匠!?」
「なんか爆発したんだけど…?」
「た、卵…!?卵かぁ…」




