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第六話 与えられた発見

人は、未知を見つける。


そう信じている。


だが――


“見つけさせられている”としたら?

 静寂が、重くのしかかっていた。


 誰も、すぐには言葉を発せなかった。


 さっきまで“証拠”だったものが、今は揺らいでいる。


 トシノリは、円盤から手を離したまま動けずにいた。


 「……生成されてるって」


 ようやく、声が出る。


 「じゃあ、今までの研究ってなんだったんだよ」


 誰も答えない。


 答えられない。


 ルルが、静かに言った。


 「無意味じゃない」


 一瞬、全員の視線が集まる。


 「え?」


 トシノリが振り向く。


 ルルは、ゆっくりと続けた。


 「むしろ――」


 一拍。


 「“必要だった”のよ」


 空気が、さらに重くなる。


 「必要って……誰にとってだよ」


 その問いに、ルルはすぐには答えなかった。


 代わりに、円盤へと視線を向ける。


 静かに。




 何も語らず。


 だが、その存在自体が何かを示している。


 「ねえ」


 ルルが言う。


 「もしこれが、本当に宇宙船だったとしたら」


 誰も口を挟まない。


 「どうして、動かないと思う?」


 トシノリが答える。


 「……壊れてる、とか?」


 ルルは首を振る。


 「違う」


 「じゃあ……」


 言葉が続かない。


 ルルは、静かに言った。


 「動く必要がないのよ」


 沈黙。


 その意味を、全員が考える。


 そして。


 ゆっくりと、嫌な予感が広がる。


 「……なあ」


 トシノリが呟く。


 「もしかしてさ」


 一拍。


 「これ、“来た”んじゃないのか?」


 ルルは、ゆっくりと頷いた。


 「ええ」


 そして。


 はっきりと、言った。


 「最初から、ここにあった」


 空気が、止まる。


 研究員の一人が、思わず声を上げる。


 「そんな馬鹿な……!」


 だが。


 否定できる材料は、もう残っていない。


 「じゃあ……」


 トシノリの声が、かすれる。


 「俺たちは何を見たんだよ」


 あの夜。




 落ちてきた光。




 衝撃。


 あれは、確かに“落ちた”はずだった。


 ルルは、その記憶をなぞるように言う。


 「“見せられた”のよ」


 「は?」


 「落ちたように」


 一拍。


 「観測されるように」


 トシノリの思考が止まる。


 「……じゃあ」


 ゆっくりと、言葉を絞り出す。


 「最初から……ここに来るように?」


 ルルは、静かに頷いた。


 「ええ」


 その瞬間。


 すべてが繋がる。


 偶然じゃない。




 発見でもない。


 “導線”。


 「……ふざけるなよ」


 トシノリの拳が、わずかに震える。


 「俺たち、誘導されてたってことか?」


 ルルは、否定しない。


 その沈黙が、答えだった。


 研究員の一人が、呟く。


 「……では」


 声が、震えている。


 「これまでのすべての発見は……」


 誰も続きを言えない。


 だが、ルルは言った。


 「ええ」


 一拍。


 「“与えられていた”」


 その言葉が、空間に落ちる。


 重く。




 逃げ場なく。


 トシノリは、円盤を見る。


 静かだ。


 だが今は、はっきりと分かる。


 これは――


 “答え”じゃない。


 “問い”だ。


 「なあ……ルル」


 小さく言う。


 「じゃあさ」


 一拍。


 「俺たちは、何をさせられてるんだ?」


 ルルは、ゆっくりと視線を上げた。


 その目は、静かだった。


 だが、その奥には確信があった。


 「簡単よ」


 トシノリを見る。


 まっすぐに。


 そして――


 「試されてるの」


 沈黙。


 誰も動けない。


 その言葉の意味を、理解したくなくて。


 だが。


 理解してしまう。


 「……誰にだよ」


 トシノリの声は、かすれていた。


 ルルは、少しだけ空を見上げてから答えた。


 「“観測しているもの”に」


 その瞬間。


 天井の光が、わずかに揺れた。


 まるで――


 “気づいた”かのように。

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