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ソラと異国と綺麗な魔法  作者: みんみん
間章2 王子と王女と婚約話
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1.突然の呼び出し

本日、人物紹介とプロローグ、第1話、の合計3つを更新しています。

このページから開かれた方は、ひとつ戻ってプロローグからお読みください。


この第1話から2年半前の過去(冬)に飛びます。

 パストラーレとレッジェロの魔術対決を終えた、その日の午後。

 私は、パストラーレと共に自室の居間でくつろいでいた。


 ソファで彼に寄り添い、もたれかかって座りゆったりしていると、扉をノックする音がした。


「アリィ、ちょっと良いかしら?」


 廊下へ続く扉は少し開いていたが、母アンティフォナは礼儀として中を覗かずに声をかけてくれたようだ。


「ええ、良いわ、お母さま。どうぞ入っていらして」


 返事をすると母が扉から少々慌てたように入ってきた。

 曇った表情は、何か良くない知らせでもあったかのようだ。


「アリィ、それにパスト。たった今、王宮から連絡が来たの。私達夫婦と、パストとアリィの四人で、準備ができ次第王宮に来るようにという内容で。第一王女殿下からの召喚よ。お父さまは心配要らないとおっしゃるけど……」


 魔法副長官である母は、父を支えて魔法庁を取り仕切る副長官業をこなしている。いつも穏やかに微笑みつつ物事を滞りなく進め、生半可なことでは取り乱すことのない人なのだが、その母の目が少しだけ不安を表している。


「とにかくふたりとも、急いで支度をしてちょうだい。パストの家にはもう魔伝話(までんわ)で知らせたから、帰ったらすぐに王宮へ行く服装を整えてもらえるはずよ。多分、アリィの支度が一番遅いだろうから、パストは支度ができたらもう一度ここへ来てちょうだい。うちから四人揃って王宮へ向かいましょう」


 母にそう促され、私達は全員、それぞれ王宮へ向かう装いをする準備を始めたのだった。




** ** **




 四人で王宮を訪れると、客間のひとつに案内された。

 この部屋を待合室として利用し待機して、私達が到着したことが第一王女に伝えられると、今度は王女の支度が整ったら謁見室へと再び案内されるのだろう。


 そう思って開けてもらった扉をくぐると、そこには予想外の者がいた。


「レッジェロさん……」


 パストラーレが瞬時に嫌な顔をする。先ほど別れたばかりの彼がなぜここに、と思っていると、両親がレッジェロと挨拶を交わし始めた。両親の「どうしてここに?」という質問に「第一王女殿下からお召しがありました」と答えるレッジェロ。

 私達と同様、フラワーパークから帰宅してしばらくすると、なぜだか理由は分からないけれども王宮に呼ばれた、とのこと。


 落ち着かない気持ちで待ち続けていると。


 扉が開いて、案内人が丁寧に頭を下げる。


「第一王子カデンツァ様、第一王女ブリランテ様がお越しになられました」


 驚いて目を見開くが、両親がサッと立ち上がり扉前まで素早く移動したのを見て、残り三人の若者も慌ててそれに(なら)った。そして両親同様、(こうべ)を垂れ、胸の前で腕を交差し、片膝をつく跪礼(きれい)をする。


 案内人が脇へよけ、私達と共に並んで跪礼をすると、スタスタと尊い生まれの兄妹が入室してきた。そしてなんの躊躇(ちゅうちょ)もなく奥のソファにふたりして座り、あろうことか王族言葉も使わず気楽な様子で、私達に「こっちへ来て座ってよ」と第一王子が言った。


 両親が躊躇(ためら)いなく顔を上げ、笑顔の母が「みんな、座りましょう」と言うので、年少組三人はこっそり視線を交わした後、おずおずと両親に続いて先ほどまで座っていたソファへと向かう。何事もない様子の両親に比べ、私たちは絶賛戸惑い中だ。


 両親がさっさと腰を下ろすと、そのまま父は「カデンツァ殿下……私どもはブリランテ殿下からのお呼びと伺って参ったのですが。またカデンツァ殿下お得意の悪戯(いたずら)でしょうか?」と聞いた。気安い口調と表情にギョッとする若者組。それを聞いてカデンツァ王子は軽快に笑った。


「まあ、固いことは言わないでくれよ、アルマンド。ブリランテが面白そうなことをしているから、ちょっと見学させてもらおうと思っただけだよ」


 すると父は「困ったお人ですね」と笑った。

 レッジェロが「ずいぶんお親しいご様子ですね?」と質問する。私もとても知りたいし、横でパストラーレもじっと注目している。


 カデンツァ王子が「まぁ、子供の頃、よく遊んでもらったからな」と笑った。

 それを聞いて母は「王子殿下、我々は遊びに参っていたのではありませんよ。王子殿下が魔法のお勉強時間を抜け出して勝手に遊びに行ってしまったので、教師としてのお役目を果たすために追いかけて探していただけです。かくれんぼや鬼ごっこをしていた訳ではありませんわ」とコロコロと笑う。


 「逃げ出したのは昔の話ではないか」と軽く笑うカデンツァ王子に、ブリランテ王女が「兄上は今でも元老院会議を投げ出して欠席するがな」と突っ込む。

 それに対し王子は「あんなクソ(じじい)共の、愚痴だか悪口だか悪巧(わるだく)みだか、とにかくそんなことしか話さない会議に出席したって仕方ないだろう」と笑った。


 王族は基本的に幼い頃から家庭教師に魔法全般を習う。学校へ通うことはない。

 魔法庁から選ばれた者――魔力研究部から選出される場合が多い――がひとりかふたり、専属となって教師役となるのだが、カデンツァは第一王子で王太子となる可能性が高かったため、年少の頃は魔力研究部長官と、魔法長官のアルマンド、そしてその妻で魔法副長官であるアンティフォナが三人で交代しながら教師役を務めたのであった。応用編に入った五年ほど前からは他に専属が選ばれたのだが。


 学校で学友と共に学べば十五年間かけて基礎から応用までかかるところを、個別に特別授業をするので、大抵王族は十五歳から十六歳程度で、魔法を含め、歴史やその他全てのカリキュラムを修得してしまう。すると本来ならば二十歳で成人となるのだが、王族に限っては修得した時点で準成人とみなされ、成人王族と共に元老院会議への出席が義務付けられるのだ。


 カデンツァ王子は現在十七歳。

 半年ほど前、夏の終わりに全てのカリキュラムを終え、準成人としてひと月に一度の元老院会議に初めて出席した時、あまりに内容の無い話し合いに驚愕した。「この組織が国の重要案件を決定しているのか」と。


 カデンツァ王子は笑う。


「元老院会議を欠席したって構わないはずだよ、代わりの者を出しているのだからね。忠実かつ有能な(しもべ)が、全てを報告してくれるのだから」


 そう言って少しおどけた後。「それはまあ、とりあえず置いておいて、ブリランテの方の話を進めようよ。早く聞きたいんだ」と言った。

 その言葉にブリランテ王女が微笑んでうなずき、こちらを向いてほんの少し首を傾げた。


「今日、そなたらの三人の婚約に関する勝負の勝敗が決すると聞いた。もう勝負はついたのであろう? その結果を教えてたもれ」


 驚愕に瞬きすら忘れた。

 王女がなぜその件を知っているのかという疑問も確かにあるが、それよりもその件に関して王女が関心を持っているということ自体が、不思議であり、不安であった。何か不敬になることでもあったであろうか。

 更に、王女は生誕祭の時と雰囲気が違い過ぎる。降りかかってくるように感じた威圧感が、今はない。

 微笑み続けるブリランテ王女に視線すら戻せずうろたえていると、レッジェロが代表して答えてくれた。


「結果はぼくの惨敗です。先週の水魔法対決の結果はご存知でしょうか? パストラーレは年間ランキング一位を取るほどの素晴らしい記録を出したのです。そして今日の土魔法対決では、数値としての結果は全てぼくが上でありながら、パストラーレの土魔法は見る者を圧倒いたしました。創意工夫と婚約者であるアリア嬢への愛が溢れ、心を打たれたぼくは完敗したと宣言せざるを得なかったのです。よって、今回の勝負はぼくが惨敗です」


 晴れ晴れとした笑顔でレッジェロが語る。

 内心「負けたことをそんなに嬉しそうに話すのもおかしいけれど、これまで親しくもしていなかった、王子、王女の前でそんなに気安く話す神経もおかしい」と思ったことは内緒だ。

 レッジェロの話にブリランテ王女が相槌を打つ。


「なるほど。それは残念であるな」


「お気遣いありがとうございます。けれども元々ぼくが婚約者同士の間に割り込もうとしていただけですから。勝負は見えていましたし、自身を納得させるためだけに対決をお願いしただけなのです」


「そうか。ではレッジェロ、アリアに心残りはないのか?」


「はい、ございません」


「ならばレッジェロ、そなた、現在フリーであるな?」


「はい、残念ながらその通りでございます」


「では」


 そこで言葉を一度区切ると、ブリランテ王女は兄王子の方を振り返り、軽くうなずき合ってからこちらへと向き直し、レッジェロの顔を正面から見つめてこう言った。


「レッジェロ。(われ)と、婚約してたもれ」


 部屋の空気が一瞬で止まった。


「婚約……ですか? ブリランテ王女が? レッジェロと?」


 一番に我に返った父がそう問う。

 それに続いて母が父の隣で目を見開きコクコクとうなずくが、年少組はまだ誰も身動きが取れなかった。

 あまりに突然のこと過ぎて、脳内処理が追いつかないのだ。


「そうじゃ、アルマンド魔法長官。もちろん、吾はまだ十五歳じゃから実際に結婚するのは成人してからになる。結婚適齢期であるレッジェロにはあと五年待ってもらわねばならぬから……それが申し訳なく思っておるが」


「男は三十歳くらいまで結婚しないことも、まぁ少々例がありますので、それほど問題では無いとは思いますが……それよりも、ブリランテ王女は外国へ嫁がれるご予定ではなかったのですか? どの国を選ぶかの選定作業はあと三年ほどしてからと聞いておりますが、その前に国内で婚約を決めてしまっても良いのか……お父上である国王陛下はご存知なのでしょうか。あるいは元老院は」


 父の言葉にブリランテ王女は、先ほどまでの柔和な笑顔を収め、一気に気配を変えた。背筋を伸ばし、まるで生誕祭の時のような、威厳のある(たたず)まい。


「兄には相談したが、父王にはまだ話しておらぬ。吾の一存で決めたことじゃ。ここで、どうしてそう決めたのか理由を話し、吾の決意や将来の夢をそなたらに理解してもらい、協力を願いたいのじゃ。婚約者となるレッジェロだけでなく、両親の説得係として魔法長官と副長官にの」

★王家おさらい(2年半前時点)★

・第一王子…17歳。10歳までの5年間、アルとフォーナから魔法訓練を受けていた。そのためふたりに対して気安い。半年前に高等部で学ぶ過程を終え、準成人となった。(成人は20歳)

・第一王女…15歳。兄王子と仲が良い。将来の夢があり、レッジェロに婚約を申し込む。決意したことを話し、魔法長官と副長官に協力して欲しいと願っている。


今回の過去話は少し背景が複雑です…。

後書きでまとめをし、できるだけ読んでくださる方の負担にならないようにしたいと思っています。

よく分からなかったら感想欄で質問してください。


次回更新は8月13日(月)です。

皆様、良い週末をお過ごしください。

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