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ソラと異国と綺麗な魔法  作者: みんみん
第二章 ソラとマーレの綺麗な魔力
59/130

11.魔力制御装置の改造提案

「あの、いくつか思いついたんですけど……」


「うん! なになに?」


「まず、ひとつは、人口魔石が作れないかってこと」


「人口魔石!?」


「はい。俺の住んでる日本には、ダイヤモンドと言って最高級の高価な宝石があるんですけど、それを人工的に作ることができて、俺くらいの年でもお小遣いで買えちゃうようなお値段で売ってるんですよ。そういうの、今すぐにとは言わないけど、なんとか作る方向で頑張れないかなって」


 それを聞いてパストラーレが腕組みをして考え始めた。


「うーん。人口魔石か……考えたこともなかったな。作れるかな? あれをああして……いや、ダメだ。むしろあっちの方が……うーん、それでこうして……うーん……」


「いや、パストさん、今すぐできるなんて思ってないです。だから人口魔石はいつか実現できたら良いなって感じで、今すぐできるのはそっちじゃないです」


「他にも案があるのかい?」


「はい。このバングル、補助魔法陣を彫るために金属でできてますけど、その金属部分、全部木製に変えられませんかね?」


「木製……って、木?」


「はい。魔石を埋め込めるくらいの厚みがあって、補助魔法陣を彫る必要があるから金属が多くなって高価になるなら、木製なら良いんじゃないかなって。もし木が駄目でやっぱり金属じゃなくちゃ駄目だって言うなら、そこに必要な部分だけ金属を使って、あとは木にするとか、必要な部分だけ作ってそれを布でくるんで腕に結びつけちゃうとか。そうしたら材料費が減りますよね? どうでしょうか」


 実はこれ、もうすぐある体育祭で行われる、応援仮装団のアイデアなのだ。隣のクラスの女子がチアをすると言うので「ミニスカートに対抗するならこっちはロングスカートよ!」と言ってドレスを着ようということになったのだ。服にはスパンコールをたくさんつけてキラキラさせるらしいけど、ネックレスやイヤリングには日光にしっかり反射するように宝石をつけたいと誰かが言い出して、インターネットで安いキュービックジルコニアの装飾品をお揃いで買おうということになったらしい。商品購入サイトを見せてもらった時に「この程度の金額で買えるんだ」と驚いたのだ。


 それから腕輪もそう。

 本当はネックレスと同じように宝石のついたブレスレットにしたかったらしいけど、みんなそこまでお金をかけられないのが高校生だ。皆で通販サイトを調べに調べ、プラスチック製ならどうかとか、木製ならどうかとか、金属でも飾りの付いていないシンプルな物なら安いとか、皆で色々話し合った結果、太いリボンにしようということになったらしい。

 ふわふわのシフォンとかいう布を手首に巻いて、ひらひらさせながら踊るというのがクラスの中で決まったのだ。それを思い出して、金属製のバングルではなくて他の物で代用することを提案したのだ。


 俺が案を口にすると、皆が考え込んでいる中、マドリガーレだけが楽しそうに笑った。


「ねぇ、それならわざわざバングルにしなくても良いんじゃない? 布製でひらひらしてると作業する人は邪魔だろうから、いっそのことペンダントにしちゃえば良いのよ。補助魔法陣を刻んだ物、それが金属か木かは分からないけど、そこに魔石を嵌め込んで上部に穴を開け、それ単体で売れば良いのよ。そうしたら買った人が手持ちの紐をつけて首から下げれば良いだけでしょう?」


「ほんとだ! マーレ、あったまいいー!」


「いいえ、ソラが素敵な案を出してくれたからよ。あなたがいなかったらこんなこと、思いつかなかったもの」


 手を取り合って喜んでいると、大人達が苦笑していた。


「まったく、きみ達には驚かされる」


「先程の自然部の時と言い、今回と言い……発想が凄いな」


「では早速、試作品を作ってみますね。金属と木で、ペンダントトップをひとつずつ」


「それじゃあ、これで購入はだいぶ楽になったということだね。あとは、定期的に魔力調整魔術をかけるのにも何か案があったら良いんだけど……」


 チラッとこちらを見てくるレッジェロに、俺はたじっとなる。まずい。何も案がない。どうしよう、と腰が引けたけど、隣でマドリガーレが得意げに胸を張った。


「それについては、私に名案があります!」


「え、なに?」


「高等部の一般学生は、いつもお金がなくて大変だと言っています。魔力調整魔術を学校で教えて、彼らにアルバイトとして魔術を施させれば良いのでは無いでしょうか」


「バイトか! マーレ、凄い! 良い案だと思うよ! 日本ではバイトしながら高校行く生徒がいて、そういう人は自分で稼いで親から小遣いもらわないでやってるんだ。それに大学生になったらみんなバイトしてるって聞いた。地方から出てきてる学生は、バイトして生活費に当ててるって。良いんじゃない? 俺、賛成!」


 マドリガーレと一緒に手を取り合って喜んでいると、レッジェロが笑って収めた。


「まあ、これは人命にかかわる魔術になるかも知れないし、学校で教えて学生にさせるのができるかどうかは、上で検討されるだろうね。でも良い案だとは思うよ。高等部で新たな課題として組み込めるかどうかとか、学生が実際にアルバイトとして魔術を施す時に教授が付き添えば安心なのだろうかとか、きちんと作動するかどうかのチェック体制をどうするのかとか、そういうのを上に上げて検討してもらうよ」


「はい、ありがとうございます!」


 そうして俺達はラルゴの工房を出た。

 扉を出てまたすぐにマドリガーレがふらついたので、行きと同じように手を繋いで北棟まで戻った。途中で彼女が「ソラ、良かったわね」と笑ってくれたので、俺も笑顔を返した。


 うん、本当に良かった。

 たった一度見ただけだけど、魔力暴走者は悲しい。

 本人にそんなことをするつもりがなくても、罪を犯してしまうというのがつらい。

 魔力が暴走してしまう人が減れば良い。


 今すぐには無理かも知れないけど、少しずつ魔力調整バングルが変わっていったら、一般人も気軽に利用できるようになるだろう。そうしたら自然の中での悪い魔素を思いがけずに浴びても、助かる可能性が上がるかも知れない。


 そうなってくれたら良いな、と思った。

 そう思って、マドリガーレの手をギュッと握ったのだった。




** ** **




 北棟に戻ってくると、今度はそこの案内をしてもらった。四階は昨日と今日、俺が借りている魔術遮断室がたくさんある部屋が並んでいる。この階は小さい部屋ばかりで、五階が中くらいの、六階が大きな魔術遮断室があるらしい。

 七階と八階は会議室だということで、別に見にも行かずに話を聞いただけだった。


 実際に様子を見に行ったのは一階から三階の総務部だけだ。

 魔法庁にはよっつの部署があって、魔力研究部、治安部、魔道具開発部、自然部、だと聞いていたから、総務部があって驚いた。けれども総務がなければ困るのは確かだ、と納得した。


 ここには一ヶ月前に俺も測定した魔力測定室もあるとのこと。魔法庁に勤める者達が測定するのに使用されるのだ。その他、学生のうちは各学校に測定室があるので、そこで測定する。そして学校卒業後には、各自職に合わせて五年に一度、誕生月になると所属している各部局に測定に行くらしい。


 驚いたことに、各学校や各部局で行われる測定結果は全て、ここ総務部で管理しているとのこと。なんか大変なんだな、とぼんやり思った。


 聞いてみたら総務部は第五家が担っているらしい。レッジェロが前に「第五家以外の三家が次々と自分達の治めたい部局をあれこれ先に取っていってしまった結果、残ったものも引き受けなければならなくなってしまった」と言っていたので、第二家だけでなく第五家も総務を押し付けられたのかも知れない。


「えーと、第五家の皆さんは、魔法庁では総務部なんですよね。では、何局を統括しているんですか?」


「第五家は福祉局だね。主な事業は公共施設の運営と学校運営だね。医療院で治療を終えた人がまだ不安だった場合に通う施設もあるし、まあ、一般人が悩む諸々の厄介事は福祉局に駆け込めばなんとかなるって感じかな」


 なるほど、と思いながら、これは確かに他の三家に遅れを取って残り物を押し付けられたのだなと感じた。第二家はレッジェロを見ても、それから俺に無理やり「おじさん」「おばさん」と呼ばせた局長達を思い出しても、現状に不満を持っているような感じは見受けられないけれど……第五家の人達はどうなのだろうか。

 そう言えば、アンティフォナ叔母が第五家出身だった。帰ったら聞いてみよう。


 そう思いながら魔法庁を出て、転移装置に乗って商人街へと移動した。

 昨日の食堂『はしゃぐ小栗鼠(こりす)亭』に行くためだ。


「よう、邪魔するよー」


 レッジェロが明るい声を上げて『はしゃぐ小栗鼠亭』へと入っていった。

前回に引き続き、魔法庁巡りです。

物語がソラの一人称なので書かれていませんが、実はマーレはうっきうきで、内心キャーキャーとはしゃぎまくりです。

幼い頃から憧れていた魔法庁の見学なので。

次話は城下町でのお話です。


次回更新は7月11日(水)です。

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