↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/6

第2話 勝利、栄光、挫折

 いつの時代かは分からないけれど、ある山にお婆さんとお爺さんと男の子が住んでいました。

 5歳児にしてあらゆる厳しい筋力トレーニングを乗り越えた桃介は、お婆さんとお爺さんに連れられて、隣の山で開催される、新人限定ボディービル大会に参加することになりました。

 その当日、桃介は会場に集まった数々のトレーニー達の体の仕上がりを見て、思わず絶句してしまいました。


「婆上、ぼくのこの貧相な体では、あの人達に勝てるイメージが浮かびません」

「当たり前じゃ。私がお前にトレーニングを始めさせたのは3歳の頃から。たしかにお前は日々めげることなく続けてきた。しかしじゃ。他のトレーニー達を見よ。あの者達はお前の何倍もトレーニングを重ねてきた、新人とはいえ既に猛者なのじゃ」


 そんな2人のやりとりを見ながら、お爺さんは思いました。

 言ってることは正しいんだけど、3歳から筋トレってどうなのよ。おかしいでしょ。

 しかしお爺さんは思うだけでした。


「これは桃姫(ももひめ)様! こんな所で伝説のチャンピオンのお姿を拝見出来るとは! 我々トレーニー一同感激であります!」


 お婆さんの姿に気付いた野良トレーニーが声をかけてきました。

 それに便乗し、多くのトレーニーが「俺も俺も!」と声を上げます。

 ちなみに、桃姫とはお婆さんの名前ではなく、伝説の桃太郎に嫁いだ女性ということと、ボディービルダーの生ける伝説というのが合わさって桃姫なのでした。

 姫という字が似つかわしくない筋骨隆々な姿ですが、この会場にそんなことを思う人は誰もいませんでした。

 崇められるお婆さんを見て、桃介とお爺さんはなんだか誇らしくなりました。


 そして開催される新人限定ボディービル大会。

 数々のトレーニーが鍛え上げた筋肉を音楽に合わせて披露していきます。

 観客席から「肩がマスクメロン!」「背中が冷蔵庫!」など声が飛びます。

 桃介もお婆さんに指導されたポーズをとりつつ、鍛え上げた筋肉を審査員や観客に見せつけます。

 自然と気持ちが高揚し、さらに筋肉がパンプアップしました。

 そして──


「新人限定ボディービル大会! ジュニア部門優勝は桃介選手ー!」


 アナウンスと共に、桃介は金メダルとトロフィーを受け取りました。

 副賞はプロテイン1年分。

 ちなみに、ジュニア部門の出場者は桃介だけでした。

 そりゃそうだ。


 桃介がメダルとトロフィーを持ってお婆さんとお爺さんの元に向かうと、そこには可愛らしいお嬢さんがいました。

 お爺さんが言うには、この山の里の村長の娘さんとのこと。

 年齢は桃介と同じ5歳でありながら、どうやら有名人であるお爺さんとお婆さんに挨拶をしにきたようです。

 さすが御令嬢、そこら辺しっかりしてます。

 桃介ははじめて同い年のお嬢さんとの交流にドギマギし、胸の高鳴りを覚えました。

 胸がパンプアップしている訳ではありません。


「は、はじめまして!」


 桃介が緊張の面持ちで挨拶をすると、御令嬢も挨拶を返します。

 そして、


「あなた、お顔は可愛らしいのに、お体鍛えすぎではないかしら。私はちょっと仲良く出来ませんわ」


 ズガーン! と桃介に衝撃が走りました。

 初めて出会い、あまりの可愛さにドギマギしていたところ、挨拶をしただけで拒否られるというあまりにも早い展開。

 さすがのお婆さんも、そしてお爺さんも呆然としてしまいます。


「あなた、ムキムキになるよりも、走るのが早い方がカッコイイのよ」


 御令嬢はそう告げると、お婆さんとお爺さんに「失礼致しますわ」と一礼して去っていきました。

 ほんと失礼ですね。

 お婆さんとお爺さんは何もフォローが出来ず、とりあえず2人して桃介の鍛えられた肩に、ポン、と手を載せるのでした。

 勝利、栄光、挫折を一気に味わった桃介。

 そんな彼の明日はどうなる!?

筋肉は裏切らない。恋愛は知らん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。