第6話 沈黙の意味
サクヤは、しばらく沈黙したまま、自分の失った右腕のあった場所を見つめていた。
やがて、ぽつりと呟く。
「……俺は、なんでなれないんだ?」
その声は小さく、けれど確かにルミナへ向けられていた。
ルミナは少しだけ目を細め、あっさりと答える。
「単純だよ」
間を置かず、続けた。
「なってたら、そもそも腕なんて失ってない」
その言葉は、容赦なく現実を突きつける。
サクヤの肩が、わずかに震えた。
ルミナは気にする様子もなく、さらに言葉を重ねる。
「あとさ、一応“後天的に適合する”パターンもあるけど——」
ちらりとサクヤの腕に視線を落とす。
「その状態じゃ、まあ無理だね」
軽い口調。だが、その一言は決定的だった。
サクヤは何も言えず、ただ下を向く。
シーツに落ちる視線が、揺れる。
部屋の空気が、重く沈んだ。
「……いいじゃない!」
不意に、明るい声がそれを裂いた。
母親だった。
「無理してそんな危ない力なんて持たなくても……生きてるだけで十分よ!」
父親も、強く頷く。
「そうだ。お前はお前のままでいい」
その言葉は優しいはずなのに——
サクヤの胸には、なぜか引っかかる。
(……違う)
言葉にできない違和感が、心の奥でくすぶる。
ふと、サクヤは顔を上げた。
レンとリンの方を見る。
二人はそこにいた。
確かに、すぐそばに。
けれど——
何も言わない。
慰めるでもなく、否定するでもなく、ただ黙って立っている。
「……レン?」
呼びかけても、反応がわずかに遅れる。
「……あ、ああ……」
どこか歯切れの悪い返事。
リンも同じだった。
視線が、わずかに逸れる。
その沈黙は、さっきまでの両親の言葉よりも、ずっと重かった。
サクヤの胸に、別のざわつきが広がる。
(……なんで、何も言わないんだ?)
違和感が、確信に変わりかける。
ルミナはその様子を、少し離れた場所から面白そうに眺めていた。
口元に、かすかな笑みを浮かべながら。




