第3話 ルミナ・ノクス
ルミナ・ノクス。
そう名乗る、少年とも少女ともつかない存在が、そこにいた。
白を基調とした髪に、わずかに混じる黒。
どこかサクヤと似ているのに、決定的に何かが違う。
その瞳は、あまりにも静かだった。
ルミナは、血に濡れて倒れるサクヤの前にゆっくりと歩み寄る。
そして、興味もなさそうに言った。
「……それ、死ぬよ?」
あまりにも軽い声音だった。
まるで、今日の天気でも告げるかのように。
「サクヤ……!サクヤ、しっかりして!」
リンの声が震える。
必死にサクヤの体を支え、血で濡れることも気にせず抱き寄せた。
「くそっ……!おい、目開けろよサクヤ!」
レンも声を荒げる。
いつもは余裕のあるその顔が、今は焦りで歪んでいた。
「お願い……!死なないで……!」
リンの声が、教室に響く。
その言葉に、サクヤの意識がわずかに引き戻される。
(……リン……レン……)
声を出そうとする。
けれど、うまく言葉にならない。
体が、動かない。
「お、お願いします……!助けてください……!」
リンはルミナへと向き直り、床に手をついて頭を下げた。
レンも唇を噛みしめながら、何も言えずその様子を見ている。
数秒の沈黙。
ルミナは小さく息を吐いた。
「……仕方ないな」
そう呟くと、ポケットから何かを取り出し、どこかへと連絡を入れる。
「一人、重傷。場所は――」
淡々とした口調。
感情の揺れは一切ない。
サクヤの視界は、徐々にぼやけていく。
リンの泣きそうな顔。
レンの必死な表情。
それすら、遠ざかっていく。
「サクヤ!聞こえてるか!?おい!」
「お願い……目を開けて……!」
声だけが、かすかに届く。
(……ああ……)
ぼんやりと、思う。
(まだ……終わりたく、ない……)
最後に視界に映ったのは――
自分を見下ろす、ルミナの無機質な瞳だった。
「……運がいいね、君」
その言葉を最後に。
サクヤの意識は、完全に闇へと沈んだ。




