第19話「見つけた痕跡」
ルミナは、森の中を軽やかに進んでいた。
足取りは、妙に弾んでいる。
スキップするように。
楽しそうに。
「はは……っ」
笑いが漏れる。
抑えきれない、といった様子で。
そのまま無線機を取り出した。
「リン、レン」
声は軽い。
「ちょっと来てよ。いいもの見つけた」
それだけ告げて、通信を切る。
待ちきれない、と言わんばかりに。
しばらくして。
リンとレンが合流する。
「……何だよ、急に呼び出して」
レンが眉をひそめる。
リンもどこか不安げに周囲を見ていた。
「こっち」
ルミナは振り返りもせず、先へ進む。
そして――立ち止まる。
「ほら」
視線の先。
そこにあったのは。
原形を留めないほどに潰された、魔物の死骸だった。
骨格は歪み、肉は押し潰され。
何で殺されたのかも分からない。
「……っ」
リンが小さく息を呑む。
明らかに怯えていた。
「なんだよ……これ……」
レンは目を見開いたまま、言葉を失う。
見たことがない。
こんな殺し方。
静まり返る空気の中で。
――ルミナだけが、笑っていた。
「ねえ」
頬が、ほんのり赤い。
興奮しているように。
「これさ」
くすくすと笑いながら。
「絶対サクヤだよ」
断言する。
迷いもなく。
「……は?」
レンが顔を上げる。
信じられないものを見るように。
「なに言ってんだよ、お前……」
声が、わずかに震えていた。
リンも何も言えず、ただルミナを見る。
四年。
あれから、四年経っている。
もう終わった話のはずだった。
「……あいつは」
レンが、絞り出すように言う。
「もう死んだことになっただろ……?」
その言葉に。
ルミナは、笑みを深くした。
嬉しそうに。
本当に嬉しそうに。
「だから何?」
軽く返す。
「死んでないから、こうして見つけたんじゃん」
当たり前のように。
何の疑いもなく。
その目は――完全に確信していた。




