表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲートが開いた日、絶望した俺はすべてに復讐する  作者: まちゃ粉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第14話「異形の右腕」

その頃――サクヤは、アジトの最奥へと連れてこられていた。

 重い扉が軋む音を立てて開く。

 中にいたのは、一人の女だった。

 レンよりも一回りどころか、明らかに大きい。

 筋肉で膨れ上がった腕、堂々とした体躯。

 そして何より――存在そのものが圧迫してくる。

 女は椅子に腰掛け、巨大な肉塊にかぶりついていた。

 骨を噛み砕く音が、部屋に響く。

「……誰だ」

 サクヤが低く問う。

 女はちらりと視線を向けると、興味なさそうに肉を噛み続けた。

 ――次の瞬間。

 ゴッ、と鈍い音。

 肉の骨が、一直線にサクヤへと投げつけられた。

 サクヤはそれを、片手で受け止める。

「まずはお前が名乗れ」

 低く、重い声。

 サクヤは一瞬だけ黙り――

「……サクヤだ」

 短く答える。

 女は骨を放り捨て、口元を拭った。

「そうか」

 ゆっくりと立ち上がる。

 床が軋む。

「じゃあ次はこっちだな」

 ニヤリと笑う。

「ヴァルカだ」

 それだけで十分だった。

 この女が、このアジトの頂点だと分かる。

 ヴァルカはサクヤの前で立ち止まり、見下ろす。

「へぇ……妙な感じがするな」

 値踏みする視線。

 サクヤは睨み返す。

 数秒の沈黙。

「いい目だ」

 満足げに笑い、背を向ける。

「ついてこい」

 案内された先には、小さな作業台。

 そこに置かれていた布包みを、ヴァルカは乱暴に投げた。

「ほら」

 サクヤは受け取る。

 重い。

 布がほどける。

 ――中にあったのは、“腕”。

 黒く、歪で、生きているように脈打つそれ。

 内側から滲む、禍々しい光。

「……なんだ、それ」

「義手だ」

「義手……?」

「ただのじゃねぇ」

 ヴァルカが一歩近づく。

「魔物で作った義手だ」

 空気が変わる。

 サクヤの視線が、腕に吸い寄せられる。

「……こんなの、つけられるわけ――」

「つけられるさ」

 言葉を遮る。

 そして――

「丁度お前、右手ないしな」

 一瞬、空気が止まる。

 サクヤの目がわずかに細まる。

 事実を、淡々と突きつける言い方だった。

「……」

 否定できない。

 ヴァルカは気にする様子もなく続ける。

「まあ普通は無理だがな」

 肩をすくめる。

「今まで誰一人、これに“適合したやつはいない”」

 静寂。

「全員、壊れた」

「腕に食われたやつ、身体ごと潰れたやつ……まあ色々だ」

 軽い口調なのが逆に重い。

「欠陥品だよ」

 だが――

「お前は違う」

 断言。

 迷いはない。

「感じてるだろ」

 サクヤの視線が、義手に落ちる。

 脈打つ黒。

 まるで――呼ばれている。

「それ、お前を拒絶してねぇ」

 指先が、わずかに動く。

 触れていないのに、繋がっている感覚。

「……もし使えたら、どうなる」

 サクヤが問う。

 ヴァルカは笑う。

「さあな」

 わざとらしく間を置いて――

「少なくとも、“今のお前”じゃ届かねぇ場所には行ける」

 拳が、わずかに握られる。

 無力。

 届かなかったもの。

 守れなかったもの。

「……」

 沈黙。

 そして――

 サクヤは布を完全に剥ぎ取った。

 異形の右腕が、露わになる。

「いいねぇ」

 ヴァルカが笑う。

「その顔、気に入った」

 サクヤは何も言わない。

 ただ、その腕を見つめる。

 ――選ぶのは、自分だ。

 異形の力か。

 それとも、このままか。

 運命は、右腕に宿る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ