第13話「選ばれた場所」
重たい扉が、ゆっくりと開く。
ギィ――……
「……入れ」
背中を押され、サクヤは中へと足を踏み入れた。
その瞬間――
「……は?」
思わず声が漏れる。
そこに広がっていたのは、想像していた光景とはまるで違っていた。
子供。
老人。
そして――多くの人間。
疲れた表情をした者。
安心したように座り込んでいる者。
小さな子供を抱きしめる母親。
ここは、ただのアジトじゃない。
「……なんだよ、ここ」
呟く。
サクヤを拘束していた男に視線を向ける。
「お前ら……何者だ」
そのとき――
「それは、俺が答える」
別の声が割って入る。
振り向くと、一人の男が歩いてきていた。
仮面をつけている。
だが、その動きには妙な落ち着きがあった。
男はゆっくりと仮面に手をかけ――外す。
現れたのは、どこにでもいそうな穏やかな顔だった。
「ここはな」
男は周囲を軽く見渡し、言う。
「魔物から逃げてきた奴らの集まりなんだよ」
「……は?」
理解が追いつかない。
サクヤの目が揺れる。
男はそのまま、サクヤの前まで来ると――
ぽん、と軽く頭に手を置いた。
「怖かっただろ」
優しく撫でる。
「……っ」
反射的に、その手を振り払おうとする。
だが――できない。
なぜか、拒絶しきれなかった。
「でも安心しろ」
男は穏やかに笑う。
「ここにいる限り、お前は守られる」
「ふざけんな」
低く吐き捨てる。
「誘拐しておいて、何言ってんだよ」
睨みつける。
だが男は、表情を変えない。
「必要だったんだよ」
静かに言う。
「お前が」
その一言が、やけに重く響いた。
「……意味わかんねぇよ」
サクヤは目を逸らす。
状況が、理解できない。
ここは敵なのか。
それとも――
わからないまま、時間だけが流れていく。
一方、その頃――
病院。
重苦しい空気が、部屋を満たしていた。
「……申し訳ありません」
ルミナが、静かに言う。
その前には、医院長と――サクヤの両親。
「……逃げられたのか?」
医院長の声は低い。
「はい」
短く答える。
その瞬間。
「そんな……」
母親の膝が崩れ落ちる。
「サクヤ……っ」
涙が溢れる。
父親も、拳を握りしめていた。
言葉が出ない。
ただ、震えている。
「……どうしてだ!」
医院長が強く声を上げる。
「あなたの隊だろう!?なぜこんなことに――!」
責めるような視線。
だが、ルミナは逸らさない。
まっすぐに受け止める。
「……何者かに」
一拍置いて、言う。
「連れ去られました」
その言葉で、空気が凍りついた。
「……連れ去られた?」
医院長の顔が歪む。
「敵……ということか……?」
ルミナはゆっくりと頷く。
「現時点では、そう判断しています」
拳を握る。
「ですが――必ず見つけます」
静かな声。
だが、その奥には確かな決意があった。
「サクヤは……取り返す」
その言葉だけが、強く残った。




