第12話「捕らわれた“鍵”」
第12話「捕らわれた“鍵”」
夜の街を、影が駆け抜ける。
煙幕がまだ薄く残る中――黒い装束の集団は、迷いなく進んでいた。
「っ……離せ!!」
サクヤが暴れる。
腕を振りほどこうとするが、びくともしない。
拘束している男は、動じない。
「落ち着け」
低い声。
だが――どこか優しかった。
「暴れても無駄だ」
「ふざけんな!!離せって言ってんだろ!!」
さらに力を込める。
だが、押さえつける力はそれ以上だった。
そのとき。
「……逃げたいんだろ?」
ぽつりと、男が言った。
「……っ?」
サクヤの動きが止まる。
「……なんで、それを……」
思わず漏れる声。
男はわずかに視線を逸らし、
「まぁ……もう少しだ」
それだけを言った。
意味が分からない。
だが、その言葉には妙な確信があった。
(なんなんだよ、こいつら……)
胸の奥がざわつく。
理解できないまま、ただ運ばれていく。
「到着だ」
男が短く告げる。
視界の先に現れたのは――
巨大な施設。
廃墟のように見えるが、どこか不気味に整っている。
「ここが……」
思わず呟く。
返事はない。
そのまま、サクヤは中へと連れ込まれていった。
一方、その頃――
「……もう一度言え」
低い声。
ルミナだった。
目の前には、部下が立っている。
「……申し訳ありません。追跡は……不可能です」
一瞬の沈黙。
空気が張り詰める。
「……不可能?」
ゆっくりと顔を上げる。
「煙幕と、遮断装置の影響で……完全に痕跡を断たれました」
説明は冷静だが、状況は最悪だった。
「だから逃したって?」
低く、抑えた声。
部下が息を呑む。
「……申し訳ありません」
その瞬間――
「クソがッ!!!」
ルミナの怒声が響いた。
地面を強く踏みつける。
「ふざけんな……!」
拳を握りしめる。
「俺の前で連れてかれて、何もできねぇとか……!」
感情が露わになる。
普段の軽さは、完全に消えていた。
その横で――
「……サクヤ……」
リンが小さく呟く。
顔は青ざめ、声が震えている。
「どうしよう……」
レンは拳を握りしめたまま、低く言った。
「……絶対助ける」
短く、強い決意。
視線はルミナへ向く。
ルミナはしばらく黙っていた。
そして――
「……やることは一つだ」
ゆっくりと顔を上げる。
その目には、もう迷いはない。
「見つける」
一言。
「どんな手使ってでもな」
空気が変わる。
完全に“追う側”の目だった。
「全員、動くぞ」
隊に向けて言い放つ。
「相手が何だろうが関係ない」
低く、確実に。
「サクヤは――取り返す」
夜が、さらに深く沈む。
そして――
物語は、新たな局面へ進んでいく。




