プルの鬱の悲(喜)劇
あれから2週間が経ち、やっとプルが牢屋から出される日となった。
ほぼ毎日差し入れしたことで、プルはだんだん元気になってきていた。
「...ワタイ、これからはもっと役にたつよう頑張りたい」
そう答えたプルに以前のような元気はなく、痛々しい感じで頭を下げるので全員がかける言葉がなかなか見つからなかった。
「と、とりあえずカンフォラさんのとこ行って報告だな」
ツッコはプルに笑顔を向けようとしたが、ぎこちなかった。
「ワ、ワタイ...カンフォラにまだ会いたくない。...だから、これからはツッコ達のとこで寝させて欲しい...」
プルは自信なさそうに言うと下を向き目線を逸らした。
「ま、まあ...俺達はいいけどよ、カンフォラさん、すげえ心配してたんだぞ」
「そうだよ!いつも心配して悲しそうにしてたよ!」
ツッコもアマリも心配そうにプルを見ていた。
「...でも来なかった」
プルが何を言ったか誰にも聞こえなかったのでツッコは聞き直した。
「な、なんだって?」
「...今はまだ会いたくない。行くならワタイは結界の家にいる」
プルは下を向いて両手をにぎりしめ、ドゥエンデも珍しく無言で眺めていた。プルの決意は固そうなのでアマリとドゥエンデと一緒に結界の家で留守番することになった。
胃が痛そうな顔のツッコとボッケだけでカンフォラの所へ向かった。そして大樹の近くまで来ると出迎えるように所々に新しく花が植えられていた。その中心でカンフォラが満面の笑みで立っているのを見たツッコ達は息を飲み込むと、プルを置いてきた事を後悔し始めた。
「プル〜お帰りなさい!...プル?...プルどこですか?...プル〜!...」
カンフォラは青い顔のツッコ達がゆっくりと近づいて来るとプルを探し始めた。そしていないとわかった途端ツッコめがけて飛んできて、まくし立てた。
「ツッコさん?ツッコさん?プルは!プルは!プルはどうしたんですかあああ!」
「プ、プルが、その、あ、会いたくないというもので、大変申し訳ありません」
ツッコはそう言って流れるように土下座した。
「ま、まだ会いたくないらしく、ぼ、僕達の家にいます。大変申し訳ありません」
ボッケもそう言うと同じように土下座した。
その途端カンフォラは頭を両手で押さえ声にならない悲鳴をあげた。その上フリーズしてその形のままポテっと落ちてしまった。
しばらくしてツッコ達が顔を上げると、カンフォラはあぐらをかき魂が抜けたような表情で虚空を見ていた。
「カ、カンフォラさん大丈夫ですか?」
「カンフォラさん、カンフォラさん?」
ツッコ達がその後も色々呼びかけても答えは返ってこなかった。
「どうするツッコ、止まっちゃったよ?カンフォラさん」
ボッケはカンフォラの目の前で手を振っている。
「...こんな時は...プルが戻りたくなるぐらいに元気にするしかねえかな?...」
ツッコは顎に手をかけ考えをつぶやいた。
「...その話ぃいいい、信じていいんですぅよねえええ」
いつの間にかカンフォラの光のなくなった目が2人を見据え、普段より数倍低い声の残響が怖すぎて魂が削られていった。
「「はいぃいいいいいい、全力で元気にしまあああす」」
ツッコ達は全力で頭を下げた。
「毎日報告に来なさいぃいいいいい」
カンフォラの声の響きなのか自分達の体の震えかもう区別がつかなかった。
「「わかりましたぁあああああ」」
ツッコ達は、もはや頭を地面に叩きつけていた。
「さっさと行って元気にしてきなさい!」
少し元気が戻ったカンフォラの声に全力で頷くと逃げるように走り出す涙目の2人だった。
大樹が見えなくなるところまで全速力で走った2人は、疲れ果てその場に倒れ込んだ。そして安全な開けた場所に移動すると、お互いを背に座り込み休憩を始めた。
「本当に怖すぎだよ、頭の痛みも感じなかったよ。...ちょっと痛いな」
ボッケはおでこをさすっていた。
「俺はもう回復したよ、ボッケも治るまで着けとけ。...しかし俺たち土下座ばっかしてるな!」
ツッコがボッケに回復のペンダントを渡すと笑いだしボッケもつられて笑いだした。
「でも、なんで会いたくないなんて言ったんだろね」
ボッケは腕を組んで考えている。
「そりゃあ、お前...怖くなっちまったんじゃねえか?」
ツッコはさっきのカンフォラを思い出し身震いした。
「でも怖いとは言ってなかったよ、確か...まだ会いたくないって言ってたじゃん」
ボッケは頭を傾げていた。
「そうか?...そうだな、なんかあるんかな?」
ツッコも同じように傾げた。
「...なんかあるんじゃないの?」
ボッケはそう言って頭を掻いた。
「なんかってなんだよ!!」
ツッコはその辺にある石を思い切りぶん投げると豚のような鳴き声が響いた。そして嫌そうな顔を向け合うと一目散に逃げ出す2人だった。
その後、疲れ果てて結界の家に戻ると、昼食の準備が終わったところだった。
ツッコは帰ってきて鎧を脱ぎ埃を払うと椅子に座り込み突っ伏して言った。
「ほ、本当に碌でもねえ日だぁ...すまねえが、み、水くれえぇ...」
「もうツッコ運無さすぎだよぉ...ぼ、僕も水ちょうだいぃ...」
ボッケも同様に突っ伏した。
アマリが2人に水を差し出し、それをガブ飲みすることでやっと一息ついた。
「おめえはまだましだろ、俺の方ばっか来やがってあのブタ野郎ぉ...って疲れた」
ツッコは猫背で口を開け息を切らしている。
「もう今日は休もうよぉ...僕達の元気がないよぉ」
ボッケは両腕に顔を埋め寝そうな感じだった。
「そうだな...プルも元気ねえしぃ...休むかぁ」
ツッコも同様の格好で同意すると2人とも、もう寝る体制に入っていた。
「お兄ちゃん達、何言ってんの!夏休みでお金減ってるんだからね!...もお!お昼作ったから元気出してよ!」
アマリは鍋を打ち鳴らして起こすと、ドゥエンデが周りで楽しそうに繰り返し歌い出しプルも少し笑っていた。
「カネヘッタ! ハラヘッタ!」




