表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界言ってみよう  作者: サラニネル
続きのようなおまけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/64

続 プルの鬱の悲(喜)劇

アマリはキッチンの方へ行き、鍋の蓋を開けながら言った。

「今日の料理は最高に美味しそうにできたんだから!」

すると今まで嗅いだ事がない濃厚なハーブと胡椒の香りが漂い出した。その匂いをツッコとボッケが嗅いだ途端だった。2人は目を見開いて跳ね起きるとすぐに食事を取り分け始めた。

「ドゥエンデとプルの分もね!」

アマリの言葉に2人は頷き、ピクシー専用の皿に入れた後ナイフで野菜やら肉やらを細かく刻み始めた。そしてアマリはクレープを食べやすくちぎると、すぐに準備が整った。


全員が席に着き視線が集まると、アマリは頷き笑顔で宣言した。

「夏休みに買った塩漬け肉とハーブミックスと胡椒少々の完璧ポトフと押し麦のクレープだよ!...いただきます!」

「「いただきます!」」「イタダ キマス」

ツッコとボッケとドゥエンデは目の色を変えてガッつきだした。

「...いただきます...」

プルは周りを確認してから、つぶやくとゆっくりと食べだした。それを見たアマリも安心して食べ始めた。


ツッコは一口スープを口に入れると、これまでのポトフとは違う臭みもなくハーブと時々ピリッとする胡椒の味に感動していた。何しろ塩漬けのアオイノシシから出る旨味と油、もうスープに浮かぶ油さえ神々しい。これはあれだ...もう完璧な料理になっている...香辛料とハーブを買って良かった...もっと早く買えば良かった...これなら後2杯はいけるなとさらに食べ進めた。

ボッケは口に入れた途端だった、今までとは違う味の濃さ、それでいてキノコと塩だけではできない、さらに上の脳が渇望する味の洪水に一瞬止まってしまう。なんだろうこの感覚は...手が勝手に動き出す。もう口の中は幸せで、後3杯は食べたいとさらにかっこみだした。


アマリは匂いを嗅ぎ一口飲んで確信した...ミックスハーブがなければアオイノシシの野生の臭みが残ったはず...しかも胡椒を入れたことで淡白な味だけのポトフが力強い華麗な味に化けたことを。そんな味付けに変えられるなんて、私は天才かもしれないと衝撃を受けていた。

その隣では顔を皿に突っ込みそうな勢いでドゥエンデが食べていて、口から下はもうビチャビチャになっていた。あと無意識のようだが、よほど美味しいのか背中の羽がブンブンと動いていた。

反対側の隣ではプルは大人しく少しずつ食べていた。その味付けが以前よりさらに美味しくなっていたことが嬉しくてうっとりしていた。しかし仲間じゃなかったらどうなるのかと思うと手が止まってしまう。ただ周りの慌ただしさを確認し安心したのか笑顔で少しずつ食べだした。ちなみに美味しい時はドゥエンデと同じようにブンブンしていた。


賑やかな食事も終わり全員で片付けると、休憩と共に雑談が始まった。

「それじゃあ午後からは、いつも通りだけどプルは大丈夫か?...行けるか?」

ツッコは普段なら満腹でゲップしたり、だらけてるだけのプルが大人しくお手玉に座っているので元気があるように見えなかった。

「ご飯おかわりしなかったけど?...珍しいね?」

ボッケは普段なら残りを取り合っていたプルがしなかったことが不思議だった。

「あんまり元気ないなら、無理しちゃダメだよ...ここで休んでてもいいよ」

アマリも予想以上に大人しくなってしまい心配な表情になる。

「ゲンキ ナシヨリノ ナシカ?」

ドゥエンデはプルの顔を覗き込み頭を傾げていた。

「...ワタイ大丈夫、役に立てるよう頑張る」

プルはそう言うと、ぎこちない笑顔で立ち上がった。


「...よし!そんじゃあ、今日は肩慣らしだ!気楽に採集に行くか!」

ツッコはうなずくと笑顔で立ち上がった。

「...まあいつも、お気楽だけどね!」

それに続きボッケが笑いながら立ち上がった。

「...も〜珍しくシリアスっぽかったのにい」

「...トニカク オキラク」

アマリも続いて立ち上がりドゥエンデも飛び上がると、採集へ向かうのだった。


「...と今日は採集してるだけのはずだったのになあ」

さっきまでのことを回想しながらツッコは木に張り付いていた。

何しろ、あれから採集していると午前中に石をぶつけて逃げ切ったはずのアオイノシシに見つかってしまったのだった。

少し離れた別々の木にはボッケとアマリが張り付いていた。

「どうするの、攻撃するの?...プルは応援できる?」

アマリが聞くと肩の上で休憩していたプルが真剣な顔でうなずいて答えた。

「...ワタイ応援頑張る!」

「よし!じゃあ攻撃始めるぞ!...このしつこいストーカー豚野郎にな!」

ツッコがそう言った時、実は近くの木の中でプルを凝視していたカンフォラがくしゃみをしていた。

「ツッコが石当てたんじゃなかったっけ?」

「う、うるせえ、午前中どころか、また来やがって!始めるぞ!」

ボッケが冷たい目で見るとツッコは誤魔化すように大声で叫び、それに答え全員がスキルを発動させた。


急に大声で喋り出したツッコ達にアオイノシシは頭を上下に振って威嚇を始めた。

「アオイノシシのおかげで青い顔だね!」

「おめえも落ちて青くなりたいようだな」

ボッケのボケにツッコがキレていた。

「ドゥエンデ、エコーお願いね!」「ヨー ヨー」

アマリはそう言って木のお面を付けると、ドゥエンデが答え、その周りから2ビートが流れ出す。

「チェケッ(Check it)! 全員、顔が、アオイイノ! 当たる、逃げる、なぜかいる! ワード(Word)!」

アマリが元気よく叫び、ドゥエンデが同じように繰り返した。


ボッケのボケが終わる時だった。アオイノシシが後ろに滑り背中を強打した。そして起き上がろうとした時にさらに滑ると後頭部が地面に叩きつけられた。すぐに頭を振って起き上がった途端に、結構な勢いで約25cmの石が頭に落ちるとその場で多少ぐらついていた。しかし少し間をおいて再度石が頭に当たるとガクンと膝が崩れたが、少しすると、よろよろと立ち上がろうとしていた。


そんな様子を見ながら、さらに続ける。

「アオイノシシかアホイノシシかどっちだろね?」

「まあ俺たちの状況見るとどっちもアホだろ!」

ボッケが下を向いてバカにしていたが、ツッコは泣けてきそうだった。

「イェア(Yeah)! ア、オ、イ、イ、ノ 早いの、強いの、食べたいの! ダン(Done)!」

アマリとドゥエンデは木の上でもノリノリだったが、プルはなぜか緊張気味だった。


アオイノシシがやっと起き上がると、その半径50cmぐらいの範囲の地面が足ごと6cmの厚さで凍りついた。驚いて動こうとしても足が凍りついていたのでバランスを崩しこけそうになっていると全身が3cmの厚さで凍りついた。そのまま少し固まっていると後頭部のあたりに、また約25cmの石が結構な勢いで頭に落ちると、その部分ごと氷が壊れて倒れ込んだ。


そしてプルに全員の視線が集まって最後の仕上げが始まるはずだった。

プルが普段より元気がない感じで声を出した。

「...ア、アマリ、が、がんばれー!」

だからなのか、しばらくしてもボーナススキルは発動しなかった。


プルはなぜか考えなくていいことが頭にドンドン溢れてきた...応援しないと...なぜ...役に立たないと...また1人になってしまう...カンフォラにも捨てられた...なぜ...失敗したからだ...ここで失敗したらどうなる...また1人は嫌だ...そんな考えが頭の中に渦巻いていた。

そしてプルは焦った顔で更に応援を続けた。

「...ア、ア、アマリィがんばれぇぇ!」


プルは周りを見ると全員の視線が自分に集まっていた。それはただ心配してるだけだったのだが、プルにとっては落胆や失望の視線のように思えて耐えられなかった。その瞬間に嫌なことがさらにフラッシュバックで甦り、このままではまた見捨てられ1人孤独になってしまうと思うと叫びだしていた。

「ゥヴア゛アアア!...ワ、ワタイだって役にたてるんだ!...邪魔!...邪魔!...邪...」

プルはアマリのそばから飛び立つとアオイノシシの近くに飛んでいきながら小型の風の魔弾をアオイノシシに連発してぶつけ出した。


「ま、待ってプ!」

ボッケが驚きながら言いそうになると、ツッコが叫んだ。

「ちょ、ちょと待て!スキル切れ!」

それを聞き全員がスキルを切った。

「プル待って危ないから!」

アマリが叫び木の下に降りた。それに続きツッコもボッケも下に降りると、立ち上がったアオイノシシがプルを追いかけて行くところだった。


「邪魔!...邪魔!...邪魔!...邪魔!なんで!なんで!倒れない!」

アオイノシシは残っていた全身の氷もプルの風の魔弾で剥がれたことで、動けるようになりプルめがけて走っていった。プルは飛びながら何度撃ったかわからない、もう情けなくて涙が出てきていた。そして怖くなり逃げようと後ろを向いた時だった、音に驚いた鳥とぶつかりプルだけ落ちてしまった。その時ツッコ達3人も懸命に追いかけたがプルが逃げたところまで行くのに間に合わなかった。


「...役に立たなかったな...」

プルは目の前に迫るアオイノシシを見てつぶやき、最後にカンフォラに謝りたかったなあと思いながら目をつむった。


カンフォラはもう我慢できなかった。

最初来た時は、なんて情けないバカが来たんだろうと思った。しかし長く一緒に暮らすうちに明るくなりバカと思いつつも目が離せなくなっていった。もはや自分の子供と言っていいのかもしれない...そんな子供が悩み答えを出していた...。

プルの前に飛び出すとアオイノシシの動きがカンフォラの小さな手で簡単に止まった。それだけではなかった、カンフォラの怒りで凄まじいプレッシャーと共に森の木が蠢き出す。


「私のクプルに何をする!...埋まれ!」


プルが気付き見上げるとカンフォラの背中があり、何かが込み上げてきた。

その時だった、どこからともなく地中から根っこが現れてアオイノシシが引きずり込まれていき鳴き声がだんだん小さくなっていった。


カンフォラは振り向くとなぜか泣いていたプルの無事を確認すると、ほっとしていた。その途端にプルが泣きながらカンフォラに抱きついて言った。

「ワタイ、ワタイ!カンフォラに守られてるんだ!...ざまあみろ!バカ猪、ばーか!ばーか!」

今度はカンフォラも号泣しだしもう何を言ってるかよくわかってないようだ。

「...元気になっでよがっだああ〜も゛うお酒も飲んでいいですう!」


ツッコ達は壮絶な光景を見た青い顔から一転、プル達の笑顔に胸を撫で下ろしていた。しばらく経ちプルが振り向くと吹っ切れた笑顔で言った。

「ワタイ今日はもうカンフォラと帰る」

そのままツッコ達が呆気に取られ頷く中カンフォラとプルは仲良く帰っていった。


見送りが済んで放心状態から解放されたツッコ達は周りを確認し問題がないことがわかると座り込んだ。しばらくして息を吐いたツッコはアオイノシシが埋まった辺りを見て苦笑いで言った。

「俺達の報酬も埋まっちまったな」

さらにアマリが返すと、全員が笑顔になった。

「でもプルとカンフォラの溝も完全に埋まったよ!」

人気10Ptしかないので、1章とおまけで完結にします。また人気出たら続き書くか考えます。すいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ