ビーチ
俺はさんさんと輝くビーチにいた。
なぜかって? 組織のみんなでビーチに来ることになったのだ。
俺はアウレーリアの隣で、本を読んでいた。
「テンマくーん、楽しんでるー?」
アウレーリアが話しかけてくる。
アウレーリアはかなりきわどい赤い水着を着ていた。
ビーチパラソルが彼女に影を作っている。
「楽しませたいなら、いい加減にパンツァーを返してくれないか?」
「それはだーめ。だってテンマ君、逃げちゃうかもしれないでしょ?」
「父さんを置いて逃げると?」
「うーん、援軍を呼んでくるっていうことも考えられるからね」
「よく考えていることで」
「テンマ君はここに就職しなさい。一生、お姉さんが面倒を見てあげるから」
「それはある意味で堕落していないか? 俺は旅をしたいんだが?」
「ねえ、テンマ君?」
「何だ?」
アウレーリアがサングラスを通して俺を見る。
「テンマ君はどうしてそこまでしてくれるの?」
「それは放っておけないからだよ」
「なぜ?」
「なぜって、あまりにひどすぎるだろ? あまりに生活能力がなさすぎる」
「ははは、それには返す言葉もないわね」
「なんかな、見てられないんだよ」
「ふーん、テンマ君は優しいのね」
「さあな。俺は優しいか自覚がない」
「ふふふ、優しいわよ」
そうなんだろうか?
俺は自分に厳しい父のもとで育った。
だから、なんというかちゃんとしていないと気がかりなんだ。
それがレジスタンスに入った理由なのかもしれない。
アルカディア共和国という『秩序』を回復させる。
そのために俺は戦っている。
「テンマ君はレジスタンスに戻りたい?」
「今はそうは思わない。俺は自分を高めたいんだ。俺は剣士だ。だから、剣術の修業をしたい」
「じゃあ、これを上げる」
「これは……パンツァーリング?」
そうして手渡されたのは、緑のパンツァーリング。
エンデュミオンではないようだ。
「これは?」
「それはパンツァー『サーブロ』。剣士用パンツァーよ」
「どうして俺にこれを? 俺が逃げ出すとは思えないのか?」
「テンマ君には戦う力が必要だと思って」
「起動していいか?」
「もちろん」
俺はパンツァー『サーブロ』を起動させた。
白い鎧が俺を包み込む。
「ふふふ、似合っているわよ」
「それはどうも。で、武器は?」
「具現化してみて」
「ふむ……」
俺はこのパンツァーに登録された武器を具現化させた。
エーテルサーベルが二つ。
エーテルスピアが一つ。
エーテルナイフが二つ。
以上のようだ。
「これは近接戦闘用パンツァーか?」
「そうよ。テンマ君向けでしょ?」
「あー、テンマがパンツァーを着ているー!」
「テンマ、パンツァーを出すなら、言ってくれればいいのに」
「ふふっ、テンマ君もパンツァーに夢中か。男の子だね」
そこにダニエーラ、エーヴァ、カタリーナの三人がやって来た。
こいつらはいったい何をしに来たんだ?
「ねえ、テンマ君。君もパンツァー持ちならパンツァーで勝負しないかい?」
「おっ、いいのか、カタリーナ? 俺は結構やるぞ?」
「テンマと勝負、楽しみ」
「いいじゃない、コテンパンにしてやるわ!」
エーヴァとダニエーラもやる気のようだ。
俺も剣士としての矜持がある。
「いーじゃないか。じゃあ、負けた奴が昼飯を奢るのはどうだ?」
「ん、それはいい」
「いーじゃなないの!」
「いいね!」
こうして俺は三人娘とパンツァー戦をやることになった。
三人娘も自分のパンツァーを具現化させる。
それは女性用パンツァーだった。
名は聞いたところ、『オンディーナ(Ondina)』というらしい。
武装はエーテルサーベル、エーテルスピア、エーテルボウ、エーテルジャベリンだった。
それぞれカスタマイズされており、エーヴァはスピアを、ダニエーラはボウを、カタリーナはジャベリンを得意武装としているようだ。
俺たちは燦燦と輝くビーチで、パンツァー戦をやった。
ちなみに俺は全勝。
最下位はダニエーラだった。
「ふう……」
「テンマ君、お疲れ」
「ああ」
「さすがね」
「?」
「テンマ君も戦士としてなかなかやるって言ってるのよ」
「そうか? 俺はまだまだだと思うけどな」
「テンマ君は精進熱心ねえ」
「だって、今のままでいいって思ったら、成長は終わるだろ?」
「ふふふ、あの子たちを退けるなんてやるじゃない。あの子たちはラ・ステッラ・ドーロの士官なのよ?」
「そうらしいな。で、このパンツァーは持っていていいのか?」
「ええ、テンマ君にも戦う力は必要でしょう?」
「それはありがたいが……」
「それとも、ここを出て行きたくなった?」
「それはないな」
「ふーん、即答するのね?」
「まあな。あんたらを見ていると無性に放っておけなくなるんだよ」
「あら、それはうれしいわね」
「言っとくけど、ほめてないぞ?」
「きゃああああああ!?」
「何だ?」
「天馬君、あれ!」
「あれは!」
そこには海から大型のスライムがやって来た。
スライムは内部に女性兵士を取り込むと、何と服を溶かしてった。
そう、スライムは内部に取り込んで、獲物を溶かす。
それに痛覚がない。
スライムの弱点は内部にある核だ。
しかし、簡単に核に攻撃はできない。
核までの攻撃は粘液で防がれる。
このままでは取り込まれた女性兵士は溶かされるだろう。
俺はパンツァーを展開して、エーテルサーベルでスライムを斬る。
「テンマ!」
「テンマ君!」
「遅いわよ!」
「ああ、すまない。すぐに救出するぞ!」
「くらえ!」
スライムはカタリーナのエーテルジャベリンをまともに受けるが、粘液で衝撃を殺した。
やっぱり、スライムは危険な敵だ。
ダニエーラがエーテルボウで攻撃するが、矢は核まで届かない。
エーヴァが攻撃してもすぐに再生する。
「厄介な敵だな!」
俺はエーテルナイフをスライムに投げつけるが、当然核まで届かない。
困ったな。
このままでは取り込まれた人は……。
そこに強烈なジャベリンが投げつけられた。
ジャベリンは核を貫き、スライムの体を崩壊させる。
ジャベリンを放ったのはアウレーリアだった。
彼女はパンツァーの具現化をしていない。
部分具現化だ。
正直、すごい。
「取り込まれた子たちを治療しなさい」
「は!」
そこにダメダメなアウレーリアはいなかった。
そこにいたのは戦士としてのアウレーリアだった。
彼女はここまで強いのか。




