ラ・ステッラ・ドーロ4
俺は専門の調理師ではない。
ただ、訓練の一環で、料理を履修している。
それゆえに、俺は料理することができた。
俺は調理室で固まっていた。
これだけの設備があったにもかかわらず、まったく料理された気配がないのだ。
俺はこれにはあきれてしまった。
「やれやれ、本当に料理ができないんだな」
俺はため息をつく。
ただ、これが現実だ。
料理のための、食材はすでに俺の手元にある。
後はカレーを作ればいいだけだ。
ご飯は炊飯器だけでは足りない。
専用の炊飯マシーンを利用する。
俺は厨房服に着替えると、そのままカレーの具材を切り始めた。
やれやれだ。
ラ・ステッラ・ドーロのメンバーは五百人だそうだ。
それを俺一人でまかなうのだから大変だ。
だが、やりがいはある。
俺は腕をめくって、野菜を切っていく。
俺は大鍋に具材を入れると、それを炒めた。
鍋に水を入れてそれをにだたせる。
俺は一般的な味が好きだったのでカレールウを用意した。
高級感はないが庶民的な味にはなる。
「よーし、これで準備はOKだ!」
「ねえねえ、すごくいい匂いがするわよ?」
「ん、これは匂う」
「テンマ君が作っているようだね。見てみないかい?」
「? どうした?」
「「「うひゃああああああああ!?」」」
三人娘は悲鳴を上げた。
こいつら、匂いにつられたな?
「よー、どーしたよ? そんなところにいないで見てもいいぞ?」
「こ、これ、テンマが作ったの?」
「ああ、そうだ」
「テンマ、すごいわ!」
「うん、これはぼくも驚いたよ!」
「別にこれくらいできて当たり前だろ?」
「う、そう言われると……」
「あたしらには無理ね」
「あー、そーか。おまえたちは結構上流の家庭出身だったな。それじゃあ無理はないか。小さいころから料理なんてしたことなかったんだろ?」
「ん、それには返す言葉もない」
「うー。そーなのよねー!」
「ぼくも同じだよ」
「ちょっとくらいなら味を見てもいいぞ?」
「ええ!? いいの?」
「じゃあ、さっさとあたしに味を見せなさい!」
「じゃあ、ぼくも遠慮なく」
三人はスプーンでカレーの味見をした。
そして目を見開く。
「んんんんん!? おいしい!」
「この辛さ! サイコーね!」
「うん! おいしいよ!」
「はっはっはっはっは! どうだ? 俺を見直したか?」
「テンマがここまでやるとは思わなかった」
「あんたにもできることがあるのねー!」
「正直、見直したよ!」
「じゃあ、クルーを呼んできてくれるか?」
「うん! 呼んでくる!」
三人娘はさっそうと出て行った。
やれやれ、いい奴らだが、まるで明暗が出てくるようにぱあっとなるな。
俺は厨房から食器に移し替えて、いつでも食べられるようにする。
俺たちはクルーを食堂に集めると、食事にかかった。
クルーからの評判はよく、俺は一日で評判を確立させてしまった。
これで父さんにも温かいいい食事が行くはずだ。
俺たちは食事を終えた後、風呂掃除をしていた。
公衆浴場は使われておらず、放置されていた。
俺はそれを掃除して、使えるようにしていた。
今まで彼女たちはどうしていたのだろうか?
聞いたところ、各自の部屋にあるシャワー室を使っていたようだ。
公衆浴場は放置されていたらしい。
「テンマ、私たちも手伝う」
「あたしらにもさせなさいよ」
「ぼくも助けるよ」
「お? いいのか? じゃあこの部屋全体をデッキブラシで磨いてくれ」
「これで磨けばいいのね?」
「そうだが……」
俺はなぜか悪い予感がした。
そして予感は的中した。
ダニエーラはデッキブラシに洗剤をつけずに擦り始めた。
「あ、うん、この、ゆうことを聞きなさいよ!」
ダニエーラが勝手に怒る。
「おいおい、ダニエーラ、それには洗剤をつけるんだよ!」
「え? そうなの?」
「はあ……」
さすが生活無能力者……レジスタンスでも洗剤をつけずに掃除したような奴はいないぞ。
「エーヴァも、カタリーナも驚くな。これからおまえたちにじっくり指導してやるからな!」
「ん……気を付ける」
「あははははは……」
俺たちは隅々まで、浴場を清掃した。
俺は主に浴槽を掃除する。
よし、四人で作業できるからかなり、負担が減ったな。
正直、俺一人ではなかなかきつかった。
彼女たちはもともと運動能力があるから、体力には問題ない。
俺は最後に、浴場の全体を水で流し、浴場をきれいにした。
よし、これで浴場が使えるぞ。
俺は自分でも入る気が満々だった。
そもそも自分で入りたかったから、ここまできれいに掃除したのだ。
「よーし、これで掃除はいいだろう。お湯を張るぞ!」
「ん……疲れた」
「ああんもう、つかれたわー」
「結構きついんだね」
「後は三十分ほどで入れるようになる。クルーへの呼びかけはおまえたちに任せる」
「ん、任せて」
「もちろん!」
「任せてよ!」
彼女たちはパンツァー兵の中でも士官クラスだ。
その影響力は大きい。そんなあいつらが声をかけてくれたなら、公衆浴場を利用したいというクルーも出てくるはずだ。
俺は最後に使えばいいか。
こうして、浴場はクルーに伝染し、多くの人が利用してくれた。
俺は最後に、一人で入らせてもらおう。
そして、夜が深まったころ……。
「ふんふんふーん……」
俺は一人で風呂に入っていた。
これだけの設備を一人で堪能するなど贅沢の極みだった。
おそらくこれらの設備がこの艦にあったのは、クルーたちが上流階級出身者で占められていたからだろう。
とはいえ、自分たちで使うことはできなかったようだが……。
「父さんも呼んでやりたかったな。まあ、いいか」
「テンマ、入ってる?」
「テンマー?」
「テンマ君?」
「はあ?」
俺は素っ頓狂な声を出した。
いったい何が起きた?
俺の前には水着を着た三人娘がいた。
どうした、どうしてこいつらがここにいる?
俺は混乱した。
「えへへへへ、テンマの背中を流してあげる」
「感謝しなさいよー」
「今度はぼくたちが奉仕する番だよ」
奉仕? え? いいの?
「おいおい、おまえら……」
「テンマはつかれているように見えた。私たちはできることをする」
さて、どうする? ここで甘えてもいいだろう。
別に浮気をしているわけじゃないし……。
「じゃあ、頼むわ」
「ん、任せて!」
「あたしもやるわよー!」
「覚悟してね!」
こうして俺は背中を流してもらったのだった。
ドキドキしたのは言うまでもない。




