ラ・ステッラ・ドーロ3
俺はアウレーリアの世話係になった。
アウレーリアもそうなんだが、どうやらこの艦のクルーはみな、生活能力が壊滅的らしい。
そこでこの俺に白羽の矢が立ったわけだ。
俺はまず、アウレーリアの部屋を掃除した。
アウレーリアの部屋はもはや、ものが散乱していた。
服すらハンガーにかかっていなかった。
ましてや、アイロンがけなど夢である。
今までどうやってごまかしていたんだ?
俺は正直疑問に思わざるを得ない。
アウレーリアの部屋には彼女の黒い下着もあった。
俺はとにかく、ものが片付いていないと気が済まないので、彼女の部屋を徹底的に掃除した。
まずはものの分類だ。
それに掃除機で部屋全体をくまなく掃除する。
それから、服をアイロンがけをする。
「す、すごいのね、テンマ君……どうやってこんなにできるの?」
アウレーリアは呆然としているようだったが、俺の家事スキルはこんなものではない。
彼女は俺が掃除している間、ずっと突っ立っていた。
「このぐらい楽ショーだよ! ほら、ここは俺が掃除しておくからあんたは事務でもやってろ」
「わ、わかったわ……全部、テンマ君に任せるわね……ところで……」
アウレーリアが急にもじもじする。
? 何かあるのか?
「何だ?」
「おなかが減ったんだけど……」
「……まさか、またカップラーメンか?」
「しょ、しょうがないじゃない! 誰も料理なんてできないし……」
「……はあ」
俺はあきれた。
本当に生活無能力者の集まりらしいな、この組織は。
「わかったよ。俺が何かを作る。キッチンはどこだ?」
「外に出て右にあるわ。誰も使っていないけど、モノだけはそろっているはずよ」
「じゃあ、とりあえず行ってみるか」
俺はキッチンに足を踏み入れた。
そこはほこりもなかった。どれだけ使っていないんだよ。
俺は冷蔵庫の中身を見る。
とりあえず、卵はあった。ケチャップも賞味期限は切れていない。
米もあるようだ。
これなら、あれが作れるな!
俺はエプロンを拝借して、調理にかかる。
まずはご飯を炊く。炊飯器は常備されていた。
無駄なところで最新式だ。
それから、湯を沸かしてみそ汁を作る。
そう言えば俺は和食を作ろうとしていたが、アウレーリアは名前からイタリア系だ。パスタとのほうが良かったか?
まあ、いいか。俺はイタリアンは作れないし。
できないことはないと思う。
そのためにはレシピが必要だ。
今は作業に集中しよう。
俺はフライパンで玉ねぎとソーセージを炒める。
それからご飯を入れてケチャップをかける。
これだけ料理を作るのは久しぶりだな!
なんだか燃えてきた。
最後にボールに入れた卵を注いで、オムライスのできあがりだ。
ケチャップでハートマークを入れるのも忘れない。
「ねー、テンマ君、できたー? って、すごくいい匂い! 何これ!?」
「おー、ちょうどできたぞー。オムライスだ」
「オムライス!? 何年ぶりかしら!?」
は?
そこまで珍しいものじゃないと思うんだがなあ……。
まあ、生活能力がないようじゃ、仕方がないのか?
それにしても、アウレーリアのしゃべり方が変わっているような……。
こちらの方が素なのかな?
おそらく、普段は凛々しい司令官を務めざるを得ないからだろう。
今は油断しているのかな?
「部屋に運ぶぞ? ほら、入れよ」
「もー、テンマ君大好き! ありがとー!」
「あ、ああ」
感謝されるのは悪くないな。
とはいえ、俺は複雑だった。
このくらいなら今時の男でもできるだろ?
この船のクルーがおかしいんだよ。
「わー! ハートマークがついてるー! おいしそー! いっただきまーす!」
「ああ、召し上がってくれ」
「ふむむ……ん!? んーーーーーーー!? おいしい!」
アウレーリアがオーバーなリアクションをする。
そんなにおいしかったか?
アスカの方が料理はうまいんだよなあ……。
「こんな料理は本当に久しぶりよ! ありがとー、テンマくーん!」
「ゆっくり食べろよ」
アウレーリアはおいしそうに、オムライスとみそ汁を食べた。
ちなみにみそ汁の具材は玉ねぎとわかめだ。
ただ、アウレーリアの食べ方を見るとすごく洗練されているのが分かる。
どうやら、アウレーリアは生まれ育ちはいいらしい。
なら、料理も作ったことがないのもうなずける。
「はー、ごちそうさまー!」
「はい、お粗末様でした」
「テンマ君のおかげで、こんなおいしいものが食べられたわ!」
「この船は専属のシェフを雇った方がいいんじゃないか?」
「そうなんだけど、みんなけっこう身分がある子が多いのよ。だから、なかなかうまくいかなくてね」
「まあ、俺も作った人間として、おいしくいただけたんなら本望だよ」
「これはテンマ君を放置するわけにはいかないわね。ねえ、この船で働いてみない? お給料ははずむわよ?」
「え? いいのか?」
「テンマ君なら信頼できるわ! ふふふ、オムライス、本当においしかったあ。これはほかの人に自慢したいわね」
「もしかして、ほかのクルーは全員、カップラーメンを食べているのか?」
「それしか作れないんだもの。そうだ、テンマ君!」
「何だ?」
「本格的に調理してみない?」
「?」
「つまり、この船の調理師になりなさい!」
「はい?」
とはいっても俺にも修行の旅があるし……どうしたものか。
まあ、旅は何が起こるかわからないから楽しいんだが。
「いいだろう。しばらくは俺がみんなの胃袋をまかなうよ。今夜から楽しみにしていてくれ」
「今夜は何?」
「米はこの艦にもあるようだし、カレーライスにするつもりだ」
「材料は買ってこさせるわ! 今夜からお願いねー!」
「ああ、それはいいんだが」
「? どうかした?」
「この組織は何なんだ?」
「私たちのこと?」
「ああ」
「そんなに知りたい? まあいいわ。私たちは治安維持組織よ」
「治安維持?」
「そう。帝国が辺境の地案には興味を示さないから、私たちのような自警団が必要なのよ。それに私たちも帝国と戦っているわ」
「そうなのか? 女性だからってなめられないか?」
「帝国の軍人に女性蔑視者は多いわね。これでも私もパンツァー持ちなのよ」
「え? あんたもそうなのか? 以外だな。てっきり司令官かと」
「それも兼任しているの。テンマ君もパンツァー持ちなのよね?」
「ああ、そうだ。この船はどこに向かっているんだ?」
「この船は私たちの拠点に戻る予定よ。しばらく、ゆっくりするつもり。テンマ君は観光でもしたいかしら?」
「まあ、興味はあるな」
「なら、三人娘に案内させるわね」
「エーヴァ、ダニエーラ、カタリーナか?」
「あら、もう覚えたの?」
「まあ、な」
「まったく、テンマ君は女殺しねえ……」
「誰が女殺しだ。まあいい、俺はアイロンがけをする。しばらく作業に集中させてくれ」
「お願いしまーす」
こうして俺とアウレーリアたちの共同生活が始まった。




