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ラ・ステッラ・ドーロ2

「何で食事がカップラーメンなんだ?」


「それはわからん。とりあえず、食え」


「ああ、だけれど、なんだかこの組織には秘密がありそうだな」


 俺は二っと笑った。

 カップラーメンを渡された時にはわが目を疑ったが、こんな食事しか出せないということが何か意味を持っているはずだ。

 まあ、いいさ。俺はそのままカップラーメンを食べた。


「うーん……」


「どうかしたか?」


「俺にはこれじゃ腹いっぱいになった気がしないな」


「私はこれでも十分だ」


「父さんはもう年だから……あ、いたっ!?」


「まだ私は現役だ。勝手にロートルにするな」


「へいへい、わかってますよ」


「ふむ……どうやらまた人が来たようだぞ?」


「え?」


 俺たちのもとに三人の女性がやって来た。

 女性たちはレオタードのような服を着ていた。

 一人は長い金髪の女性、もう一人はツインテールの女性、最後にショートボブの女性。


「へえ……こいつらがアウレーリア様が言っていた男たちか」


「カタリーナ、あんた興奮してるの?」


「そんなわけないだろ。ぼくは興味心で言っているんだ」


「二人とも、話しが脱線してる」


「大丈夫だって、エーヴァ」


「おまえたちは何だ? 俺たちはパンダじゃないぞ?」


「……」


 相変わらず父さんはだんまりだ。かわいい女の子たちが来てもまったく不動だった。


「ちょっと質問があるんだが」


「何?」


「何で食事がカップラーメンなんですかねえ?」


「それは……」


 エーヴァが言いよどむ。

 これは何かあると俺は見た。


「別にいいじゃない。あたしたちだって同じものを食べているのよ」


「はあ?」


「なんだい、その顔は?」


「だって、カップラーメンだろ?」


「そう」


「栄養に偏りがあるし、不健康だろ?」


「あんたねー、これでも食事なんだから感謝しなさいよー」


「そもそも、おまえたちの名前は?」


「へー、あたしたちを名前で呼びたいんだー?」


「女、では困るだろ?」


「いい。私はエーヴァ。金髪のエーヴァ」


「あたしはダニエーラ。ツインのダニエーラ」


「ぼくはショートのカタリーナ」


「エーヴァにダニエーラ、カタリーナ、ね。覚えたぞ」


「それであんたの名前は?」


「俺はテンマ・イカズチ。こっちが俺の父さんで名はクウマ・イカズチだ」


「あんたパンツァー兵士なの?」


「ああ、そうだ。没収されたがな。ところで、この組織の食糧事情はどうなっているんだ?」


 俺は確信に斬り込んだ。この質問は彼女たちを困惑させた。


「それは……」


「ちょっと、ねえ……」


「あはははははは……」


「? まさか、誰も料理が作れないのか?」


「そ、そんなことあるわけないじゃない!」

 

 ダニエーラが強く否定する。だが、俺はこれが実態だと思った。

 確証はないが、彼女たちは何かを隠している。


「ほー、まさか本当に?」


「いや、今日はたまたま料理当番がしくじってね。君が思っていることとは違うよ」


「……さて、どうだか」


 俺はもしかして誰も料理は作れないのではないかと思った。

 だって、この女たちは不自然だろ?

 とはいえ、この少女たちはどうしてここに来たんだ?


「で、おまえたちが来た理由は?」


「ああ、そう! あたしたちはあんたを解放しに来たのよ」


「解放?」


「そう。テンマはここから出れる」


「父さんは?」


「まだ、受け入れの準備ができていないから、しばらくあのおじさんはここ」


「だってさ。どうする、父さん?」


「おまえは先に出ろ。私はここでも構わん」


「だ、そうだぜ?」


「じゃあ、ここから出す」


「下がって。ちょちょいっと」


 鍵が開けられて、牢の扉があく。

 父さんは黙ったままだ。

 この人が本気を出したら、こんなチャンスで脱出しないなんてことはないんだけどな。

 父さんは本気でここにいるつもりらしい。

 俺は一足先に娑婆にでるか。


「いいけど、暴れないでよね? 暴れたらまた牢屋に戻るから」


「わかってる」


「それじゃあ、テンマを主のもとに連れていく」


「君はぼくたちについてきてくれればいいよ」


「ああ。で、俺はどこに行くんだ?」


「アウレーリア様があんたを呼んでいるのよ」


「あの女ボスか」


 あの女がどんな目的を持っていようと、俺には関係ない。

 しばらくはこの組織のことでも探っておくか。

 俺は母艦『アンジェラ』の中を歩きながら、アウレーリアの部屋に連れてこられた。

 身の自由は保障されているとはいえ、あの女と話すと緊張するな。

 アウレーリアはかなりの武闘家だ。それは歩き方やたたずまいで分かる。

 俺も剣士だ。武道をたしなんでいるかは理解しているつもりだ。

 この三人も、一見いい加減だが、かなりの戦士だ。

 父さんなら三人とも倒せるのだろうが、俺にはちょっときついね。


「アウレーリア様、入ります」


「ああ、入っていいぞ?」


 俺はアウレーリアの私室に案内された。

 中は必要なものしか置かれていなかった。

 作業用机に、じゅうたん、ライト、本棚などだ。

 ここは彼女の仕事部屋なのだろう。


「そこの君は空いているイスに座ってくれ」


「ああ」


 俺はイスに座る。


「それでは私たちは失礼します」


「「失礼します」」


 三人娘が去っていった。


「さて、私はアウレーリア。あなたは?」


「俺はテンマだ」


「そう、テンマ君。君には私の世話係になってもらう」


「世話係? ……なぜ?」


「それはあ……私にも有能な助手は必要だからな。試しにあのコーヒーマシンでコーヒーを入れてくれ」


「俺がやるのか? まあいいけど」


 俺はマシンを確認する。

 必要な資材はそろっているな。

 俺はコーヒーの豆をセットしてそれを粉末状にする。

 それからそれをコーヒーマシンにセットして、水をマシンに入れる。

 後は時間をかけるだけだ。

 俺はコーヒーの抽出まで待った。

 マシンからコーヒーが出てくる。

 俺は背後を振り返った。

 アウレーリアはもう事務に戻っていた。

 俺は抽出されたコーヒーをカップに注ぐ。


「ほら、できたぞ?」


「ありがとう、そこに置いておいてくれ」


「……」


 俺は指示通りにカップを机の上に置く。

 コーヒーは湯気を出していた。


「おい、今飲まないと劣化するぞ?」


「ああ、すまない。もう少しなんだ」


 アウレーリアは事務をかたずけると、コーヒーを飲んだ。


「!? これは……おいしい……なんで?」


「そりゃあ、一流のコーヒーマシンでいれたらうまいだろ?」


「私がやってもうまくいかなかったのに!」


「あんた操作できなかったのか!」


「そもそも、コーヒーがおいしいことが革命的だ。部下に入れさせたら、爆発した」


「は?」


「やはり君には私が見込んだ通りの才能があるようだな」


「はい?」


 いったい、この女は何を言っているんだ?

 俺の才能? 

 アウレーリアはにこりとほほえんだ。

 くっ、美人の笑顔は危険だ。魅入られるな!


「私は君を世話係に任命する!」


「だから、なんでだよ?」


「それは……実のところ私たちは家事ができないんだ」


「は?」


「そこで固まるのかい……」


「だって、え? 女だろ? 家事の一つできないのか?」


 俺は混乱した。確かに時代は男女平等に向かっている。

 女が家事を専門とするのは時代遅れかもしれない。

 でも、俺でもできるんだぞ?


「それはあ……恥ずかしながら……」


「俺が解放されたのは……まさか……」


「そうだ。君を解放したのは、君に家事をやってほしいからなんだ!」


 アウレーリアが身を乗り出してくる。

 あ、おっぱいが揺れた。

 まずいまずい。アスカにこんなことを見られたら、しばらく口をきいてくれないぞ。

 

「つまり、俺に家事をやれと?」


「嫌かい?」


「わかった。俺の実力を見せてやる!」


 こうして俺はこの艦の家事を担当することになった。




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