↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/28

ラ・ステッラ・ドーロ

 俺と父さんは女性パンツァー兵に囲まれた。

 どうやら俺たちは野盗の一味と誤解されているようだ。

 さて、どうしたものかね。

 

「なあ、父さん……」


「何だ?」


「彼女たちは話してわかってくれるかな?」


「まあ、無理だろうな」


「ま、そうだよね。どうする?」


 俺たちは反攻すればこの窮地を抜け出すことができるのは確かだ。

 しかし、未知のパンツァーを前にして、興味がわいているのも確かだった。

 

「いったい、何を話している? おとなしくしろ。武装解除すれば危害は加えない」


「まいったね、こりゃ」


「ここはおとなしくつかまるしかあるまい」


「それが一番だな」


 俺は大きくため息をつくと、パンツァーの具現化を解除した。

 機体が粒子に包まれて消える。


「こちらは武装は解除した。手荒な真似はしないでくれ」


「いいだろう。おまえたちは捕虜として扱う。我々はラ・ステッラ・ドーロだ。おまえたちを拘束する」


 女性兵士が俺と父さんを拘束する。

 やれやれ、事情をわかってはくれないものかね。

 それにしてもラ・ステッラ・ドーロか。

 いったいどんな組織なんだ?


「それでは野盗の一味を拘束した。母艦アンジェラ(Angela)に帰還する」


 女性兵士は俺たちを、空中に浮かぶ母艦に連れて行った。



 母艦アンジェラではラ・ステッラ・ドーロの女主人アウレーリア・コルネーリ(Aurelia Corneli)が指揮を執っていた。

 彼女のもとに報告が届く。


「現場の部隊から報告です。パンツァーを装備した二名を拘束した模様です。この二名は男です」


「ふーん……野盗にしてはなかなかリッチじゃない。その二名は捕虜とする。その二名は収容するように」


「はっ!」


 アウレーリアは艦長席に腰を下ろす。

 彼女は豪奢な長い金髪に、燃えるような赤いイブニングドレスを着ていた。

 彼女の服は隠すためではなく、見せるためにある。

 大きな胸や、魅惑的なヒップのラインなどが目に毒なくらい強調されていた。

 もちろん、スリットからはなまめかしい脚線美が……。

 

「野盗の襲撃に間に合ったのは良いことね。この村はこれで安心だわ。それにしても、野盗がパンツァーを持っているなんて物騒ね。軍隊から落ちぶれたのかしら? これが何を意味するかは分からないけど……」


 アウレーリアは思案する。

 彼女は女主人だ。

 このアウレーリアこそがラ・ステッラ・ドーロ――『黄金の星』の女ボスであった。

 このアウレーリアはニュンフィア(Nymphia)の領主でもあった。

 

「それじゃあ、本拠地に帰還する! 進路を北に取れ!」

 

「了解、進路、北に取ります!」

 

 アウレーリアが指令を命じる。

 母艦は方向を変えて、移動していった。

 村では生き残った人々が祈りを捧げていた。

 別に強制しているわけではない。

 アウレーリアの支配領域では彼女が犯罪者から守ってくれるのだ。

 それゆえアウレーリアはこう呼ばれる。

 La Nostra Donna――私たちの婦人と。



 俺と父さんは牢屋に入れられた。

 ここはあまり使われないのか、ほかに人はいなかった。

 俺と父さんはいっしょに入れられた。

 

「ちぇー! こんなところで何をすればいいんだよ……パンツァーは没収されたし……」


 パンツァーは非展開時はリングとなっている。

 そのリングを取れば、パンツァー兵は無力化できる。

 とはいえ、これからどうしたものか。


「父さん、どうする? こんなところにいたって何もすることはないぞ?」


「暇なら筋トレでもしたらどうだ?」


「そんなことここでやる気になるかい。むさくるしい」


「なら、黙って考え事でもしていろ。じきに食事でも届けられるだろう。じたばたするな。おまえは子供か?」


「いや、こんなところに閉じ込められると何もやることが無くて……それにしても……」


「何だ? 気になることでもあるのか?」


「ああ」


「言ってみろ」


「この母艦で男を見かけなかった。女ばかりだ」


「確かに」


「どういうことなんだろうな?」


「私もわからん」


「そりゃそうだけど……」


 俺と父さんを拘束したのも女性だった。

 パンツァーを装備すれば女性でも戦闘能力を発揮できる。

 つまり、パンツァー兵に男女差別はない。

 ただ、女性のみで構成されるという組織は一風変わっていた。

 この組織はアマゾン族か?

 

「ふーん、おまえたちが捕虜か?」


「誰だ、あんた?」


「……」


 そこに赤いドレスの女性が現れる。

 いや、しかし、これは……どこを見ればいいんだ?

 あまりにその女性はなまめかしかった。

 目のやり場に困る。この手の人はむしろ自分の体を見せつけているのだろう。

 

「? なんだ?」


「いや、あんたが首領か?」


「そうだ。私はこの組織ラ・ステッラ・ドーロの女主人だ。名をアウレーリア・コルネーリという。おまえたちを直接尋問しに来た。こちらの質問に答えてもらう」


「何だよ?」


「ふふっ、反抗的だな。それもまたいいが。おまえたちは野盗の一味か?」


「違うね。俺たちは野盗を退治していたのであって村人を襲っていたわけじゃない」


「では、あの場で戦っていたのは村を守るためか?」


「そうだ」


「さて、どこまで信用できるものか……」


「信用するか、しないかはあんたの自由だ。俺たちは野盗じゃない」


「では、おまえたちは何者だ?」


「俺たちはレジスタンスだ」


「なぜ、レジスタンスがこんなところにいた? おまえたちがレジスタンスなら戦う敵は帝国だろう?」


「俺たちは武者修行の旅に出ていたところだ。村に居合わせたのは偶然だ」


「よかろう。おまえたちの言葉を信じよう」


 この女性はわかってくれたようだ。ただ、どこまでわかってくれたか……。

 

「で、俺たちはいつまでここに入れられるんだ?」


「見ただろうが、この船の兵士は女性だけだ。男は隔離される規則になっている」


「マジか」


「これは本当のことだぞ?」


 その時、俺のおなかがぐ~っと鳴った。

 俺は赤面した。


「ぷっ、ははははははは!」


 アウレーリアが純真な顔で笑う。

 この人こんな顔もできるんだな。


「笑うなよ! 腹が減って悪いか!」


 俺は羞恥心に身もだえた。ぐぬぬぬ、恥ずかしい。


「ははは、すまない。それではすぐに食事を用意させよう。しばらくはここにとどまってほしい。受け入れ準備ができたら牢から出そう。それではまた会おう」


 そう言うと女ボスは去っていった。

 アウレーリアの言葉通り、食事が届けられた。

 だが、それはなんと、カップラーメンだった。

 なぜ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。