修行
俺は父さんと母艦ラ・リベラッツィオーネを出た。
アスカやシャオユエが見送ってくれた。
俺たちはパンツァーを展開して、地上に降り立つ。
父さんのパンツァーも専用機だ。
名はパンツァー『クリシュナ』。近接戦闘に特化したパンツァーだ。
「さて、みんな行っちゃったな」
急に寂しさが湧きあがってくる。
母艦にいたときは多くの人に囲まれていた。
そこには笑顔があった。
今ここにいるのは俺たちだけだ。俺たちは木々の間にいた。
「修業とはこういうものだ。孤独との戦いでもある。では、歩くぞ?」
俺たちはパンツァーの展開を解く。
物質が粒子化し、機械の鎧を解体する。
俺はただひたすら、父さんの後を追っていく。
俺はこの旅の最終目的地を知らない。知っているのは父さんだ。
父さんの背中はたくましかった。
俺は父さんを信頼している。クウマ・イカズチは武芸の達人だ。
あらゆる武芸に通じているという。
実際に俺も見たことがあるわけではない。どこまで本当かわからない。
父さんはあまり、多弁ではない。しゃべる時は大事な時だ。
そんな時、遠くから煙が見えた。
「なあ、父さん! あの煙!」
俺の勘が不吉な出来事だと告げている。
「うむ! 十中八九、野盗だろう! パンツァーを展開しろ!」
「ああ!」
俺たちはパンツァーを物質化させる。
機械の鎧はエーテル粒子の物質化だ。
機械に見えるが、実態は甲冑と行った方が正しい。
パンツァー=甲冑だからだ。
俺たちは野盗の襲撃から守るため、急いで向かった。
パンツァーは飛行し、煙のもとへと行く。
村は大混乱だった。
野盗が襲撃してきたのだ。
帝国はこんなへんぴなところにある村まで治安部隊を送らない。
帝国が政権を担ってからこんな事件ばかりだ。
いったい帝国は何をしているんだ!
帝国が甘い汁を吸うたびに、無関係な人々が被害を被る。
帝国には統治能力があるのだろうか?
辺境は野盗の天国と化していた。
野盗は政府が腑抜けなだけやりたい放題だ。
「はーっはっはっはっはっはっは! こりゃいいぜえ! もっともっと逃げやがれ!」
野盗のボスが部下たちをあおる。
こいつらは略奪か、殺人か、とにかく悪事を働くことしか頭にない。
俺たちの旅もこうした野盗を狩るのが目的だったりする。
帝国ではこの手の野盗は雑草のようなもので、いくらでも湧いて出てくる。
やれやれ、ここは間引かないといけないな。
俺はエーテルライフルを具現化すると、休止して狙いを定めた。
エーテルビームが野盗たちを襲う。
「!? なんだあ!?」
ボスがこちらに気づく。
父さんはパンツァーをまとって先行した。
父さんのパンツァー『クリシュナ』には射撃武器は弓以外ない。
そもそも、クリシュナは近接戦闘に特化している。
俺は父さんが野盗たちに近づくまで射撃で援護する。
「てめえら! パンツァー持ちか! やってくれるじゃねえか!」
ボスはごつい顔にあごひげをはやした男。
うーん、どこか三下っぽい。基本的にやられやくというか。
「これ以上、村に危害を加えることは我々が許さん」
父さんが大太刀を具現化させる。
片刃の近接戦闘用武器だ。
俺は父さんの隣に降り立った。
「けっ! なんでてめえらの許可を得なくちゃいけないんだよ! ふざけるな! おい、てめえら! 銃で撃て!」
野盗が銃撃してくる。
しかし、パンツァーは常時、バリアシールドを展開している。
通常の銃弾は効果がない。
彼らはそんなことも知らないのか?
まあ、野盗だしな。知らなくてもそういうものか。
「無駄だ。恨みはないが、このような狼藉許しがたい。弱者を襲うとは卑劣な限りだ。行くぞ!」
父さんが駆けた。
父さんは目にも見えないスピードで、機動し、野盗を斬り捨てる。
野盗たちは大混乱だ。
野盗たちは銃で、撃つがまったくパンツァーに通じない。
パンツァーのバリアシールドを破るためには、ビーム兵器の方が有効だ。
実体弾は物理的に無効化される。
パンツァー『クリシュナ』の性能は十分引き出されている。
しかし、近接戦闘だけでは野盗の数を減らすのは難しい。
そこで父さんは大太刀を粒子化し、逆に弓を物質化した。
弓からエーテルビームが矢として発射される。
父さんの狙いは正確無比で、野盗の急所を確実に射抜く。
さてと、俺も戦いに参加するか。
俺はエーテルライフルで野盗を狙い撃つ。
俺のエーテルライフルは射程が長い。
野盗たちは俺の狙いに恐れを抱き、逃げ惑う。
逃げるような相手を狙うのは気が引ける。
俺には弱い者をいたぶる趣味はない。
とはいえ、こいつらは説得できるようなやからじゃない。
ここで逃がせば、必ずどこかで襲撃を企てるであろう。
「何だ!? てめえらはいったい何なんだ!?」
ボスが混乱する。
混乱するのも無理はない。
彼らの攻撃はまったく効かないからだ。
俺たちはまず、手下から倒していった。
俺は白兵戦も、射撃もできるので問題ない。
どちらかと言えば、俺も白兵戦が好みだ。俺も剣に生きる男だからね。
父さんは一人で手下を次々と撃ち倒していく。
さすがと言おうか。
正直俺がいなくってもいいような気がするが、それでは修行にならない。
俺も積極的に戦いに参加する。
戦いは激動的だ。ゆえにすべての戦いは激動的である必要がある。
俺はエーテルライフルで、野盗たちの体を撃つ。
父さんは野盗の頭をリンゴのように射抜けるけれど、俺の射撃の腕ではこれが限界だ。
「さて、かたづいたな」
「こっちはOKだよ」
「て、てめえら! よくも俺の手下を! 許せねえ!」
「で? 許せないならどうなんだ?」
「はーっはっはっはっはっはっは! 俺もパンツァー持ちなのさ! 出ろ! パンツァー『グリズリー』!」
灰色の重工的なパンツァーが展開される。
武器はエーテルの爪だ。
「どうだ! これで五分だ! 手下の復讐を果たしてやる!」
「テンマ」
「何だい?」
「おまえがこいつの相手をしてやれ」
「俺がやるの?」
「ああ、私はここから見ておく。それに今回の修業はおまえを鍛えるためのものだ」
「じゃあ、俺が戦うさ」
俺はボスの前に立った。
「? てめえ、怖くねえのか?」
「まったく」
「すかしやがって……ぶっ殺す!」
俺はエーテルソードを具現化した。
この剣は刃の部分がエーテル粒子で構成されている。
「おらあ! 死にやがれ! クレッセントショット!」
ボスから三日月型のエネルギー弾が発射される。
俺はそれをタイミングを見計らってエーテルソードで斬る。
「おおおおりゃあああああ! クレッセントクロー!」
大出力の爪が俺に振り下ろされる。
だが、そんな攻撃は受けない。
攻撃は大ぶりだし、そもそも受けてやる必要があるか?
俺はスライドしてそれをよけた。
「くそがああああ! かわしてんじゃねえ!」
無理言うな。
そんな攻撃をわざわざ受けてやるほど俺はのろくない。
「こいつをくらいやがれ!」
ボスは大きくジャンプした。
そのまま爪を俺に突きつけようとする。
もちろん、当たらないが。
「なめやがって! ぶっ殺す!」
ボスは一直線に突っ込んできた。
まあ、ここらで決めてもいいだろう。
「これが俺の技! エーテルスラッシュ!」
エーテルの斬撃が繰り出される。
ボスは斬撃に斬られた。
「ぐっはあ……こんな……こんなバカな……」
ボスはまだ息があるようだ。
さすがに重装甲タイプのパンツァーには一撃で撃破とはいかなかったらしい。
だが、それも終わりだ。
俺はエーテルソードを振るって、ボスの首を斬った。
ボスのパンツァー『グリズリー』は爆発した。
「ま、こんなもんか」
「テンマ」
「何だ?」
「何かが来る」
「え?」
そこにやって来たのはパンツァー兵だった。
それも、女性だ。
彼女たちがまとっているパンツァーは見たことがない。
これはいったい?
「戦闘を停止してください。抵抗はしないように」
女性パンツァー兵は次々と降下してきた。
空を見ると母艦が見える。
あれはいったい? とはいえ、友好的とはいいがたいムードがあった。




